説明
マラソン大会での一幕
エピソード1
## 第一章 再会
工場の騒音は、まるで巨大な機械が呼吸するかのようだった。金属が擦れ合う音、モーターの唸り、ベルトコンベアの規則的なリズム――それらが混ざり合い、一日中絶えることなく響き渡っていた。直江浩二はその喧騒の中に身を置き、流れ作業の一環としてエンジン部品の検査を続けていた。手袋をはめた指先で微妙な傷や歪みがないか確認し、合格品は右へ、不良品は左へと分けていく。単調だが、集中力を必要とする作業だった。
午後三時過ぎ、休憩時間が近づいていた。直江は時計をちらりと見て、少し肩を回した。その時、現場監督の声が拡声器を通して響いた。
「新人の臨時パートが今日から加わります。ラインの補強として配置しますので、よろしくお願いします」
直江は特に気にも留めず、再び検査作業に集中しようとした。臨時パートの出入りはこの工場では珍しいことではなかった。繁忙期には学生や主婦、定年後の人々がよくやってきた。
しかし、その臨時パートが自分の担当するラインに配置され、近づいてくる姿を見たとき、直江の手が一瞬止まった。
痩せた背筋、少し猫背気味の姿勢、そして屈託のない――あまりにも記憶に焼き付いたその笑顔。
「よっ、直江!久しぶりだな!」
声も忘れていなかった。中学時代、あのマラソンの時に何度も耳にした、少し甲高い、どこかからかわしいような声。
徳田康夫。
十数年ぶりに再会するとは思ってもみなかった同級生が、薄汚れた作業服を着て、自分に向かって手を振っていた。
「徳田…?」
「おう、覚えててくれたか!嬉しいなあ!」
徳田は自然に近づき、作業台の向こう側に立った。顔には当時とほとんど変わらない笑みが浮かんでいた。少し皺は増え、目元に疲れの影はあるものの、あの「何も考えていないように見える」表情はそのままだ。
直江は無意識に手袋の中の指を握りしめた。中学三年生の冬、あの市のマラソン大会の光景が、鮮明によみがえってきた。
最新エピソード
工場での一日が終わり、直江は更衣室で作業服を脱いでいた。隣では徳田が、来月から配属される新しい部署の話をしていた。
一年後、徳田は正社員試験に合格した。
工場で働きながら夜間の専門学校にも通い、資格を取得していたのだ。
数か月後、徳田は臨時パートから契約社員に昇格した。真面目に働く姿が評価されたのだ。直江が上司に推薦したことも大きかった。
それから数週間が経った。
徳田は臨時パートとして、直江の担当するラインで働き続けた。最初は慣れない作業に苦労していた







