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血管を繋ぐ者たち

血管を繋ぐ者たち

更新日時: 2026-09-09 03:11:23
言語:  日本語4+
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エピソード数
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説明

都市の血管を今日も支える。


エピソード1

深夜二時、関東地方を襲った記録的な雷雨は、都市の血管を寸断した。電力会社の緊急指令室には、無数の赤いランプが点滅し、警告音が鳴り続けていた。巨大なディスプレイには、首都圏の送電網が蜘蛛の巣のように表示され、そのうちの三本の主要幹線が真っ黒に染まっていた。

「中央線、北東ルート、臨海ルートが同時にダウン。原因は落雷による絶縁体破損と推定。復旧までに最低十二時間はかかります」

指令室長の声には焦りが滲んでいた。彼の背後には、社長室からの直通電話が鳴り止まない。株式市場が開くまでにあと六時間。その時までに復旧の見通しが立たなければ、会社の株価は暴落し、取引先からの信用は地に落ちる。

その指令を受けて、現場へと向かうチームの一人が甘谷美百合だった。二十七歳、入社五年目の送電線保守技師。深夜の緊急招集に応じ、作業服に身を包んだ彼女の目には、睡眠不足の影がくっきりと浮かんでいたが、その瞳は鋭く冴えていた。

「美百合、行くぞ」

同僚の大野健一がヘルメットを手渡す。四十代のベテランで、美百合の指導係でもある。二人の他に、新人の高橋翼、ベテランの佐藤誠の四人が第一班として現場へ向かうことになった。

外は豪雨が降りしきる中、特殊装備を積んだ作業車が雷鳴を突き破って走る。車内は緊張に包まれていた。

「今回の被害範囲は過去最大級だ」佐藤が地図を広げながら言う。「特に臨海ルートの第七鉄塔は海岸沿いの崖上に立っている。落雷直撃で絶縁体が粉々になった可能性が高い」

美百合は窓の外を見つめた。普段は無数の光で輝く街並みが、漆黒の闇に沈んでいた。信号機は消え、ビルの窓は暗く、道路には車のヘッドライトだけが細い光の帯を作っている。この光景を見るたびに、彼女はある言葉を思い出す。

電気は都市という巨大な生き物の血管だ

大学時代の教授が言っていた言葉だ。無意識に消費するが、なくなれば現代社会は一秒も持たない。今、その言葉の重みが、闇に沈む街並みを通して骨の髄まで伝わってくる。

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