説明
現代の日本。 平凡な高校生、速水翔(はやみ かける)は代わり映えの無い退屈な日々を過ごしていた。 そんなある日、翔は見知らぬアプリが自分のスマホにインストールされているのを見付ける。 "サイキック・アウェイクン"と名付けられたそのスマホを面白半分に実行した翔は、アプリの力で強大な念動力を手に入れる。 その日から彼の運命は様変わりする。 謎の美少女「ハートのエース」との出会い。翔を付け狙う仮面の男。そして、”サイキック・アウェイクン"を広めた何者かの思惑。 やがて物語は地球規模の戦いにまで発展していく。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 作者よりコメント 色んな元ネタから設定やら名前やらを流用してごちゃ混ぜにしてAIに書いてもらった小説です。 軽い気持ちで読んでください。 (第一部後日譚終幕後追記) 第一部後日譚が終幕を迎えました。 次回は少し間をおいてから更新したいと思います。 (第一部開始後追記) 第一部の執筆を開始しました。また、さりげなくサブタグも修正しています。 時系列的には第一部後日譚の前に当たる物語です。 ここからは数話まとめて公開し、ある程度間をおいてから更新するスタイルで進めていきます。 いろいろと手探りですが、どうぞよろしくお願いします。(2026/9/4追記) 第一部第七十二章~第七十四章を追加しました。
エピソード1
チョークの粉が舞う気怠い午後。西日にあぶられた教室の空気は、埃と生徒たちの発する微かな熱気でよどんでいた。教師の抑揚のない声が、まるで単調な念仏のように速水翔(はやみ かける)の意識を撫でては通り過ぎていく。ノートの端に意味のない落書きを繰り返す。窓の外を流れる雲のほうが、黒板に書かれた数式よりもずっと雄弁に未来を語っているように思えた。
退屈だ。
腹の底に、ヘドロのように溜まった感情はそれだけだった。昨日と同じ今日。きっと明日も同じだろう。変化のない日々の繰り返し。まるでベルトコンベアに乗せられた製品のように、決まった工程を経て、同じ場所へ運ばれていくだけの人生。
「なあ、聞いたか? 一組の高嶺さん、サッカー部のキャプテンに告られたらしいぜ」
「マジで!? で、どうなったの?」
「OKしたって話。美男美女でお似合いだよなあ」
後ろの席から聞こえてきた囁き声が、翔の鼓膜を不躾に震わせた。高嶺。その名前を聞いただけで、心臓が小さく跳ねる。密かに想いを寄せていた女子生徒。明るくて、誰にでも優しくて、それでいて手の届かない場所にいる、太陽のような女の子。
サッカー部のキャプテン。頭の中に、日に焼けた爽やかな笑顔の男が浮かぶ。県大会でも名の知れたストライカー。身長が高く、いつもクラスの中心にいる人気者。自分とは、住む世界が違う。
沸々と、黒い感情が胸の内で渦を巻く。コンプレックス。嫉妬。無力感。自分だって、何か一つでも特別な才能があったなら。有り余るほどの金を持つ家に生まれていれば。そうすれば、あの太陽の隣に立つのは、自分だったかもしれないのに。
そんなあり得ない仮定は、チャイムの音と共に虚しく霧散した。がやがやと騒がしくなる教室を背に、翔は誰と話すでもなく、のろのろとカバンに教科書を詰め込む。誰も翔のことなど気にも留めない。その他大勢。風景の一部。それが速水翔という存在の、学校における立ち位置だった。
夕暮れの住宅街を、影法師だけを引き連れてトボトボと歩く。西日がアスファルトに長い影を落としていた。今日一日、自分は世界にとって、何か意味のある存在だっただろうか。答えは、考えるまでもなく否だった。
***
その夜、自室のベッドに寝転がり、翔は鬱屈した感情を散らすようにスマートフォンの画面を漫然と滑らせていた。SNSのタイムラインには、友人たちの楽しげな日常が溢れている。どれもこれも、自分とは無関係な世界の出来事だ。指先で弾くたびに溜息が一つ増える。
その時、ふとホーム画面に見慣れないアイコンが追加されていることに気が付いた。黒地に、脳を模したような紫色の幾何学模様。その下には『サイキック・アウェイクン』と表示されている。超能力覚醒、とでも訳すのか。
「……なんだこれ」
インストールした覚えはない。怪しげな広告をタップしてしまったのかもしれない。ウィルスか? そう思ったが、アンインストールする前に、ほんの少しの好奇心が鎌首をもたげた。退屈な夜をやり過ごすための、ちょっとした暇潰しにはなるかもしれない。
翔は、どこか自嘲的な気分でそのアイコンをタップした。
アプリを起動すると、チープな電子音と共にタイトルロゴが浮かび上がる。すぐに画面が切り替わり、『あなたの秘められた可能性を診断します』というメッセージの下に、いくつかの質問が並んでいた。
『問1:もし壁の向こう側を見ることができたら、何をしたいですか?』
『問2:もし物体を触れずに動かせたら、何をしたいですか?』
ばかばかしい。翔は鼻で笑いながら、適当に選択肢をタップしていく。覗き、いたずら、自己顕示。どれも下らない欲望を煽るだけのものだ。投げやりな気持ちで最後の質問に答えると、画面が眩しく明滅し、奇妙な分析が始まった。ゲージが左右に揺れ、様々なアイコンが高速で流れ、やがて壮大なファンファーレと共に、査定結果が表示された。
『――あなたの素質を査定しました――』
『適性能力:念動力(サイコキネシス)』
『ポテンシャルランク:A』
『総合評価:文句なしの超一流です。あなたは選ばれし者。その力で、世界をあなたの意のままに塗り替えることができるでしょう』
「……はっ。随分と持ち上げてくれるじゃねえか」
思わず声が漏れた。Aクラス。超一流。選ばれし者。陳腐な言葉の羅列だが、日中の劣等感に苛まれていた心には、妙に心地よく響いた。そうだ、自分は本当は特別な存在なのだ。誰も気づかないだけで。
まあ、悪い気はしない。
遊びはこれで終わりだ。画面の下には、『覚醒を実行しますか?』という最終確認のボタンが点滅している。どうせ何かが起こるわけじゃない。ただのジョークアプリだ。翔は軽い気持ちで、その輝くボタンに親指を伸ばし、強く押し込んだ。
***
階下では、母親が台所で皿を洗う音が聞こえる。居間からは、弟がテレビゲームに興じる電子音が断続的に響いていた。ありふれた、いつもの夜の風景。
その、平和な静寂を切り裂いた。
「――ッああああああああああああああああああッ!!」
二階から響き渡ったのは、喉が張り裂けんばかりの翔の絶叫だった。それは恐怖とも驚愕ともつかない、人間のものとは思えない凄まじい叫び。
「翔!?」「兄貴!?」
台所から母親が、居間から弟が、何事かと血相を変えて階段を駆け上がってくる。バンッ、と乱暴にドアが開け放たれた。
「どうしたの、翔! 何があったの!?」
母親と弟が目にしたのは、ベッドの下、部屋の隅で尻餅をつき、呆然と虚空を見つめる翔の姿だった。彼の周囲には、本やゲームソフト、埃をかぶった段ボール箱などが、まるで爆発でも起きたかのように乱雑に散らばっている。
「……え?」
翔は、殺到した二人の顔を、焦点の合わない目で見上げた。口がわななく。言葉が出てこない。
「……いや、なんでも、ない」
「なんでもなくないでしょ! この散らかり様は! あなた、すごい叫び声だったのよ!?」
母親が半狂乱で問い詰める。翔はしどろもどろに、何でもないと繰り返すだけだった。
「……寝惚けたのかよ、兄貴。変な夢でも見たんじゃねえの」
呆れたように言う弟と、母親が顔を見合わせる。心配から、次第に訝しむような表情へと変わっていく。まともに取り合ってはもらえない。その空気を察して、翔は口の端を引きつらせながら、曖昧に笑った。
「……はは、そうかも。なんか、うん。ごめん」
その異常なまでの反応に、母親たちはなおも首を傾げていたが、やがて溜息をついて部屋を出ていった。扉が閉まり、再び静寂が訪れる。
翔は、引きつった笑みを浮かべたまま、ゆっくりと自分の掌を見つめた。震えが止まらない。散らばったガラクタの中心で、ただ一人、呆然と座り込んでいた。
***
その晩、翔は興奮して一睡もできなかった。
布団の中で目を閉じても、先程の光景が瞼の裏に焼き付いて離れない。あのアプリは、"本物"だったのだ。
最終確認ボタンを押した直後、全身を駆け巡った痺れるような感覚。脳が焼き切れるかのような熱。そして、自分でも理解できない衝動のままに、ベッド下の空間を睨みつけた瞬間――そこに押し込んであった全てのガラクタが、見えない力に弾き飛ばされるように、一斉に部屋中に飛散した。
念動力。サイコキネシス。
Aクラスの素質を持つ、文句なしの超一流。
アプリに書かれていた言葉が、脳内で何度も何度も反響する。もはやそれはチープな煽り文句ではなかった。紛れもない事実。自分だけに与えられた、真実の評価。
退屈だった日々。平凡で無力な自分。それら全てが、過去のものになろうとしていた。
翔は暗闇の中で、口角が吊り上がるのを止められなかった。高嶺も、サッカー部のキャプテンも、もうどうでもいい。彼らは、これから自分が手に入れる世界の、ほんのちっぽけな住人でしかないのだ。
明日から訪れるであろう、非日常に満ちた日々。想像するだけで、体の奥底からワクワクが止まらなかった。
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