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白石梨莉華の彩り豊か❓な日常

白石梨莉華の彩り豊か❓な日常

更新日時: 2026-10-22 22:32:29
By: chokobox
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言語:  日本語4+
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説明

※内容を刷新中!


白石梨莉華は19歳の女の子。ルックス、スタイルが彼女の日常をより彩り豊かにしてゆきます。ただ、彼女はちょっぴり天然で、独特な趣味嗜好や思考を持った女の子でありました。そんな彼女のちょっとエッチ⁉️な日常を豊かに掘り下げてゆきます。


エピソード1

第一話 その肩、すこし冷えますよ


Tシャツ一枚で十分だった島の朝と、この都会の朝は、ぜんぜん温度の質が違う。


白石梨莉華は、そう思いながらホームのベンチに座った。座ると、ヒヤリという冷気が太ももの裏から這い上がってくる。コンクリートの冷たさではなく、コンクリートが遠くから空気を冷やして、その冷えた空気がじかに肌に触る感触。島の朝はもっと湿っていた。むん、とした熱気がもう夜明けから立ちこめて、目を開けた瞬間から汗ばむくらいだった。


ここは都会だ。ビルとビルの隙間を川のように空気が流れている。冬と呼ぶにはあたたかいけれど、彼女の感覚では「寒い。異常に寒い」。


けれど、梨莉華の思考は一秒も迷わなかった。


「……暑いなあ」


ひとりごとを漏らし、セーターの襟ぐりを両手で引っ張ってパタパタと仰いだ。


周囲の乗客がちら、とこちらを見る。それに気づかず、梨莉華はそのまま電車の到着案内を見上げる。あと五分。五分あれば、眠気を蒸発させられる。


肩が、すう、と冷える。今日のセーターは肩を大きく出したデザインのものだ。鎖骨が全部出て、肩先から二の腕にかけて、なにもかもが開いている。


梨莉華はセーターというものを、基本的に「首と胸が出ていればセーター」だと思っている。七分袖の、ヘソだしの、襟ぐりがざっくり開いた。それらをぜんぶセーターと呼ぶ。島の気候で培われた服装思考は、南国仕様のまま、この春、東京に引っ越してきた。


夢は、自分の喫茶店を持つこと。


そのためには貯金が必要で、そのためにはまずこの電車に乗って、四か月目の喫茶店で今日も一生懸命働かなければならない。梨莉華はこぶしをぎゅっとして、自分の小さな決意を胸の前で握りしめた。こぶしを握るたび、大きな胸がセーターの薄い布の下で、重力に従ってゆっくり揺れる。彼女はそれをまったく意識していない。


ホームに、電車が滑り込んできた。


先頭車両のヘッドライトが朝の光の中に白く浮いて、ブレーキの音がキー、と耳障りに響く。ドアが開くと、吐き出すように人が出ていく。梨莉華は、ドアのそばに立って、降りる人が終わるのを待った。島の駅にはドアなんてなかったから、この「降りる人を待つ」という都会の習慣だけは、最初はびっくりした。みんな、そんなに急いでどこへ行くんだろう。


降りる人が途絶えた。


梨莉華は、ぽす、と車内に踏み込んだ。とたんに、空気が変わった。冷房の効いた車内の匂い。人の匂い。整髪料と柔軟剤と、目を覚ましたばかりの体温が混ざり合う。


発車のチャイムが鳴り、ドアが閉まる。


緩やかな加速。つり革が、うわ、と一斉に揺れて、梨莉華はバランスをとるように、手すりへ手を伸ばした。手すりは冷たい。停電みたいに冷えている。指先がその金属を握ったとき、背中のほうがちくり、とした。


視線。


梨莉華は、それを「視線」だと自覚しなかった。なんとなく、背中がむずむずするな、という程度だった。


前方の吊り広告は、エステのチラシだった。「本格痩身コース 初回体験三〇〇〇円」という文字の下に、下着姿の女性が微笑んでいる。梨莉華はそれを見て、「へえ、この人、きれいだなあ」と思う。自分にべつに興味はない。


でも、周りの人は梨莉華に、興味があった。


右のつり革につかまる会社員の男性は、彼女の肩から鎖骨へ、鎖骨から胸の谷間へ、視線を這わせ、そして慌てて窓の外に向けた。窓には、その会社員の顔が映っている。彼のネクタイは真っ直ぐに締められているのに、首だけが少し赤い。


左の席に座っていたスーツの女性は、梨莉華の全身を見てから、自分のスカートのすそを直した。丈、くるぶしまで。あれからひと回りもふた回りも布が多い。


梨莉華は、なにも気づいていない。


「……つぎ、日暮里でございます」


アナウンスが聞こえて、梨莉華は顔を上げた。あと三駅で降りる。ちょうどいい。彼女は、手すりにつかまったまま、首をひねって車内の様子を見た。満員とまではいかないけれど、立っている人がけっこういる。


梨莉華は、しばらくして、あることに気づいた。


自分が立っている真横の席で、大学生くらいの男の子が、ずっとおなかのあたりを触りながら、なにかもごもごと言っている。


「……あの、すみません」


梨莉華は、首をかしげた。


「なんですか?」


男の子は、う、と言葉を飲み込んだ。顔が、おかしいくらい赤い。きゅうり色のトレーナーを着ているのに、頭はトマトみたいに真っ赤。梨莉華は、その色のちぐはぐさがおかしくて、くすっと笑った。


「わ、笑わないでください」


「ごめんなさい。なんとなく」


「……その、あの。寒くないですか?」


「寒いです」


梨莉華は、とくに迷わず言った。男の子は目を見開いた。


「じゃあ、なんで……その、ネックウォーマー……というか、なんでそんな服を」


「へ? これセーターですよ」


「セーター?」


「はい。肩出しセーター。冬も夏も、これがないと生きていけないんです。島育ちなんで、もう。暑がりなんですよ。異常なくらいです。自分でも、変だとは思うんですけど、ここにじーっと布があると、どうしても」


梨莉華は、自分の胸のすぐ下あたりを両手で指した。


「むれちゃうというか、死んじゃうというか」


男の子は、言葉を失った。口をぱくぱくさせている。


「そうだ」


梨莉華はうれしそうに、スカートめいたショートパンツのポケットから、缶入りのミルクキャンディを取り出した。


「キャンディどうぞ。島のじいちゃんが送ってくれたんですけど、甘くて食べると元気になるやつです」


「いや、知らない人からもらうのはちょっと……」


「私も知らない人ですけど、おなかがすいてるのかなって思って。なんか、ずっと触ってたから」


男の子は、がく、と音がするんじゃないかと思うくらい項垂れた。


「あの……それ、自分のじゃないですから。痴漢と間違えてほしくないというか、予防線というか」


「チカン? チカンってなに? 島では聞いたことなかったです」


男の子は、もはやなにも言えなかった。梨莉華は、自分の財布の中身を想像しながら、あと何日分のキャンディがあるか数えていた。横の男の子は、きゅうり色のトレーナーの中で、小さな体温を帯びて黙っている。


電車がカーブに差し掛かって、からだ全体が右に傾く。梨莉華は、手すりを握っていた左手を離して、今度は吊り革に持ち替えようとした。その拍子に、とく、と、男の子の肩が梨莉華の胸に当たった。接触の瞬間、男の子は背中をびくりと大きく震わせて、電車の揺れじゃない、明らかに彼の意思で、隣の席との距離を取った。


梨莉華は、ぽかん、と考えた。


(この人、なんで急に背中をピンっとしてるんだろう)


電車は、次の駅で止まる。ドアが開いて、また人が流れ込む。梨莉華は、一歩後ろに下がり、新しく乗ってきた人たちのために道を開ける。すると、後ろの席に座っていた、七〇代くらいの女性が、梨莉華の袖をつまんで、こう言った。


「あんた、寒そうだねえ」


梨莉華は振り返って、にこっと笑った。


まだまだ最寄りの駅までは。

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