巫女装束とチェーンソー 【令和八年二月十三日は金曜日だった。そして俺は――あいつに会った】
Synopsis
令和八年二月十三日金曜日午前零時過ぎ。 東雲陽斗(しののめ はると)は、ホッケーマスクを被り、チェーンソーを持った巫女に追いかけ回される。
それは彼の恐怖で奇妙な「長い一日」の始まりであった。
関東近郊の都市・晶湖市(しょうこし)。 湖とネオンに彩られた街の裏側には、人知れず、異形が蠢いている。
ごく普通の高校生だった陽斗は、 その非日常へと引きずり込まれていく。
言葉を発さず、ただ圧倒的な暴力で全てを断ち切る巫女。 そして、逃げきれない少年。
その先に待つのは―― 穢れの面か、呪詛の軍勢か、それとももっと強大な何かか。
これは、恐怖と奇妙が交錯する、 “チェーンソー巫女”との最悪の出会いから始まる物語。
Chapter1

令和八年二月十三日、金曜日。午前零時二十分。
俺、東雲陽斗(しののめはると)は、深夜の雑木林の中を、文字通り鼓膜が破れんばかりの絶叫を上げながら逃げ回っていた。
「うわああああああああっ!? なんで!? なんでなんでなんで!?」
背後から迫り来るのは、深夜の静寂を無惨に引き裂く、凶悪極まりない爆音。
――ヴゥゥゥゥゥン!! ヴロロロロロロロロロロロッ!!
ただのエンジン音ではない。それは間違いなく、分厚い鉄や木材を粉砕するための暴力的な回転音、すなわちチェーンソーの駆動音である。
ギャリギャリギャリギャリッ!!という鼓膜を削るような破壊音が響くたび、背後にある雑木林の木々が次々と切断され、ドスゥン! メキメキッ! と音を立ててなぎ倒されていく。
「おかしいだろ! 日本の治安どうなってんだよ!!」
俺は息を切らし、枯れ枝に足を取られそうになりながらも、必死に足を動かし続けた。今年は暖冬だったとはいえ、二月中旬の深夜である。気温はとうに一桁を割り込んでいるはずなのに、全身からは嫌な汗が吹き出し、吐き出す息は濃い白煙のように暗闇へ溶けていく。
右へ、左へ。少しでも直線距離を避けようと何度も方向転換を繰り返すが、背後の狂ったようなチェーンソーの回転音と、木が薙ぎ倒される破壊音は、まったく距離が開く気配がない。むしろ、障害物など存在しないかのように、一直線に俺の背中へと迫ってきている。
もう走れない。肺が焼けるように痛いし、足の筋肉は悲鳴を上げている。
そう思い始めた矢先、視界の端にひときわ太い大木が飛び込んできた。俺は迷わずその大木の裏側にダイブするように身を隠し、枯れ葉の上にうずくまった。
ゼェ、ゼェ、と喉から漏れそうになる苦しい息を両手で必死に押さえ込み、全身を丸めて息を潜める。
ヴゥゥゥゥゥン……という重低音が、俺の隠れている大木のすぐ横を通り過ぎ、少しずつ遠ざかっていくのがわかった。
「……っ、たす、かった……?」
どうやら、暗闇と入り組んだ木々のおかげで、うまく撒くことができたらしい。俺は冷たい土の上にへたり込み、ガタガタと震える膝を抱え込んだ。
安心した途端、極度の恐怖で麻痺していた思考が、ゆっくりと正常な回転を取り戻し始める。
そもそも、なぜ俺はこんな深夜の山の中で、チェーンソーを持った殺人鬼(?)に追いかけ回されているのか。
事の始まりは、ほんの三十分ほど前のことだった。
*
時間を少し遡る。令和八年二月十二日、木曜日の二十三時五十分。
俺は愛車の原付バイクにまたがり、深夜の冷たい風を切り裂きながら自宅への帰路についていた。
今日は暖冬の影響で昼間はポカポカと暖かい一日だったが、さすがに日付が変わろうとするこの時間帯は容赦なく冷え込む。
俺は自分の服装が、ダークカラーの分厚いダウンジャケットに、その下にはフード付きのパーカーとニット、さらに首元にはマフラーをぐるぐると巻き、手には防寒用のグローブという、完全防備の冬山仕様であることに心底安堵していた。ジーンズの下にもこっそりヒートテックを履き込んでいる。我ながら完璧な布陣だ。どこからどう見ても、その辺にいる普通の学生の防寒スタイルである。
ただ一つ誤算だったのは、俺の被っているヘルメットがフルフェイスではなく、顔の半分が露出するハーフタイプのジェットヘルメットだったことだ。
「いっつ……顔面痛っ……!」
原付のスピードを上げるたびに、氷の刃のような冷たい風が容赦なく顔面に叩きつけられ、冷たいを通り越して普通に痛い。
それに加えて、明後日にはバレンタインデーという、非モテ男子にとっては一年で最も肩身の狭いイベントが控えていることも、俺の心をいっそう冷たくさせていた。当然ながら、俺にチョコをくれるような彼女など存在しない。
「……まあ、今年は土曜日だからな。学校でカップルどものイチャイチャを見せつけられずに済むだけマシか……」
寒風の中で独りごちて、少しだけ安堵の息を吐く。
*
俺が通う晶湖東学園(しょうこひがしがくえん)は、この晶湖市(しょうこし)の東側、駅前の再開発エリアにある。そこから少し離れた場所にある大型ショッピングセンター「晶湖レイクサイドモール」での深夜バイトを終え、ようやく帰宅するところだった。
晶湖市は関東圏にある中規模都市で、都心から電車で小一時間ほどの距離にある。
晶湖市の東側には、この市の象徴である晶湖が広がる。
駅前周辺は高層マンションや商業施設が立ち並び、夜遅くまでネオンが輝いているが、少し西へ向かえば昭和から続く古い住宅街が広がり、さらに西の市境には山林や古い神社仏閣が点在する地区が広がっている。新旧が入り混じった、なんともアンバランスな街だ。

*
赤信号で停車し、ダウンの袖をまくって腕時計を確認すると、ちょうど日付が十三日に変わったところだった。
「よし、あと十五分で家だ。帰ったら即行で風呂入って寝よう」
信号が青に変わり、再び原付を走らせる。しかし、しばらく直進していると、前方に赤々と光る誘導灯と「工事中・通り抜け出来ません」の無情な看板が立ち塞がっていた。
「うわ、マジか。ここ通行止め?」
原付を停めると、誘導棒を持った警備員のおじさんがすまなそうに駆け寄ってきた。
「ごめんね兄ちゃん、今夜は水道管の工事でここ通れないんだわ」
「あ、いえいえ。深夜なのに寒い中お疲れ様です」
俺が素直に頭を下げると、おじさんは白い息を吐きながらニコッと笑った。
「兄ちゃんもこんな時間までバイトかい? 偉いねえ、気をつけて帰りなよ」
「ありがとうございます。頑張ってくださいね」
心温まる深夜の交流を終え、俺は仕方なく迂回ルートをとることにした。
ここから自宅のある中央の住宅街へ抜けるには、市を南北に分断する神折川(かみおりがわ)を渡り、西側の「山林・旧社エリア」の縁をぐるりと回っていくしかない。
*
神折川にかかる古い橋を渡り、山林エリアに差し掛かると、周囲の景色は一変した。
街灯の数は極端に減り、道路の両側には鬱蒼とした雑木林と、無人の古い祠や神社の鳥居が不気味なシルエットを描いている。
今日の月まだ登っていないのか、それとも、もう沈んだのか、空には月明かりすらない。完全な暗闇と、原付のエンジン音だけが響く異様な静けさに、俺は無意識に肩をすくめた。
「なんか……急に雰囲気ヤバくないか……?」
寒さとは別の、背筋を這い上がるような得体の知れない不安に震え始めた、その時だった。
ふと、今まで容赦なく顔に叩きつけられていた冷たくて痛い風が、ピタリと止んだ。
いや、風が止んだのではない。まるで、目に見えない巨大な壁の内側に入り込んでしまったかのように、周囲の空気が一瞬にして「凪いだ」のだ。
「え……?」
違和感に首を傾げた次の瞬間。
暗闇の雑木林の中から、道路の中央へと、黒い人影がふらりと飛び出してきた。
「っ危なッ!?」
俺は慌てて両手のブレーキを全力で握りしめた。
キキィィィィッ!! という鋭いスキール音と共に、原付のタイヤがロックして滑る。バランスを崩した車体は横転し、俺の体はアスファルトの上へと無惨に投げ出された。
「ぐわっ……!」
ドンッ、と肩から地面に落ちたが、奇跡的に柔道で習った受け身が間に合い、分厚いダウンジャケットがクッションになってくれたおかげで、服が擦れただけでほぼ無傷だった。
「いっつ……何なんだよ急に……!」
少しの苛立ちを覚えながらも、俺はすぐに飛び出してきた相手のことを思い出した。万が一、車体がぶつかって怪我でもさせていたら大ごとだ。
「す、すいません! 大丈夫ですか!?」
俺は慌てて立ち上がり、点滅を繰り返す古い街灯の下に立ち尽くしている人影へと駆け寄った。
だが、その相手の姿をはっきりと視界に捉えた瞬間――俺の全身の血液は一瞬にして凍りついた。
チカッ、チカッ、と明滅するオレンジ色の光に照らし出されていたのは、一人の少女だった。
いや、少女というには、あまりにも異様すぎる出立ちだった。
年齢は17歳くらいだろうか。腰まで届くであろう美しい烏の濡羽色のストレートヘア。着ているのは、雪のように純白の白衣と、血のように鮮やかな朱色の緋袴。それはどこからどう見ても、正統派の「巫女装束」である。
しかも、160センチほどの小柄な身長には到底不釣り合いなほどの、暴力的なまでの巨乳が白衣を大きく押し上げており、腰回りはきゅっとくびれて、安産型のお尻が袴のシルエットを艶かしく形作っている。普通なら見惚れてしまうような抜群のプロポーションだ。
だが、俺の視線は彼女の顔面に釘付けになり、そこから動かすことができなかった。
彼女の顔には――無骨で不気味な、黄ばんだ『ホッケーマスク』が、顔全体を覆い隠すように装着されていたのだ。
「……は?」
純和風の巫女装束に、十三日の金曜日に出てくる殺人鬼の代名詞たるホッケーマスク。
脳の処理能力を完全に超えたバグのような光景に、俺は口を半開きにしたまま完全にフリーズした。
ホッケーマスクの奥にあるであろう瞳の焦点は定かではないが、彼女は前屈みの異様な姿勢で、じっとこちらを見据えている。
「あ、あの……巫女、さん……? なんで、ホッケーマスク……?」

俺の震える問いかけに、彼女は一切答えない。
その代わり、彼女がだらりと下げていた右手から、カチャッ、という金属音が響いた。
見れば、彼女の右手には、彼女の小柄な体躯とほぼ同じくらいの長さがある、巨大なエンジン式チェーンソーが握られていた。
「いやいやいやいや!? なんでチェーンソー!? 絶対関わっちゃダメなやつだろこれ!!」
俺が後ずさりした瞬間、巫女はチェーンソーのスターターロープを勢いよく引っ張った。
――ギュルルルッ、ヴゥゥゥゥゥン!!
深夜の住宅街の端っこで、絶対に鳴ってはいけない凶悪な始動音が轟いた。
「ひっ……!」
ホッケーマスクの巫女は、一言も発することなく、チェーンソーを大上段に構え――一切の躊躇なく、俺の脳天めがけて振り下ろしてきた。
「うわああああああああっ!?」

俺は悲鳴を上げながら、無我夢中で横へ飛び退いた。
ギャリィィィィッ!! という凄まじい音と共に、俺がさっきまで立っていた場所のアスファルトが、チェーンソーの刃によって豆腐のようにえぐり取られ、火花と破片が散る。
「殺す気か!? いや殺す気だろ!! 俺なにかした!?」
パニックに陥りながらも、俺は倒れたままの原付を引き起こし、エンジンをかけて逃げようとした。
だが、巫女は無言のまま、異常なスピードで間合いを詰めると、横薙ぎにチェーンソーを振るった。
「あ」
ギャリギャリギャリギャリッ!!
俺の愛車である原付は、まるでダンボール箱でも切るかのように、綺麗に真っ二つに切断され、ガシャァァン! と無惨な音を立てて崩れ落ちた。
「俺のローンがああああああっ!?」
いや、ローンを気にしている場合ではない。次は俺が真っ二つにされる。
俺は原付をその場に放り捨て、絶叫しながら雑木林の中へと逃げ込んだのだ。
*
――そして現在。
俺は雑木林の大木の裏で、ガタガタと震えながら身を潜めている。
「どうしよう……原付、真っ二つにされちゃったよ……明日からどうやってバイト行けばいいんだ……」
いや、だから明日の心配をしている場合ではない。今生き残れるかどうかの瀬戸際なのだ。
チェーンソーの音は遠ざかった。このまま朝まで隠れ続けて、明るくなったら警察に駆け込もう。そう決意した、その時だった。
――ギャリギャリギャリギャリギャリッ!!!
「えっ」
突然、背後から爆音が響いたかと思うと、俺が背中を預けていた直径1メートルはあろうかという大木が、文字通り『真っ二つ』に切断され、左右にメリメリと倒れていった。
木屑が雪のように舞い散る中、俺の後ろに立っていたのは――
ホッケーマスクを被り、巨大なチェーンソーをだらりと下げた、巨乳の巫女だった。
「ヒッ……!!」
ダダダダダダダダ……と、チェーンソーのアイドル状態の低いエンジン音だけが、不気味に響く。
巫女は無言のまま、軽くスロットルをあおった。
ヴロォォォンッ!!
その暴力的な音に、俺は完全に腰を抜かし、地面にへたり込んだまま一歩も動けなくなってしまった。
「あ、あ、あ……」
喉がひゅーひゅーと鳴り、まともな言葉が出ない。
巫女が一歩、また一歩と距離を詰めてくる。
「ちょ、ちょっと待って距離近い! 怖い怖い怖い!! ごめんなさい! 俺が何をしたか分からないけど、許してください! まだ死にたくないんです!!」
俺は地面に手をつき、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら必死に命乞いをした。そして、恐る恐る顔を上げる俺。
しかし、ホッケーマスクの巫女はピクリとも反応しない。ただ無機質に、死刑執行人のように、再びチェーンソーを大上段へと構えた。

「あああああ……終わった……」
俺は覚悟を決め、ギュッと目を閉じた。
――ブゥォォォォォンッ!!
チェーンソーが空気を裂いて振り下ろされる音。
(お母さん、今まで育ててくれてありがとう……!)
パァンッ!! という固いものが割れるような音と共に、俺が被っていたヘルメットが真っ二つに裂ける感触があった。
続いて、ギャリリリリッ! と、木材が削られるような奇妙な音が耳元で響く。
俺は目を閉じたまま、痛みが来るのを待った。
脳天から股間まで、綺麗に両断される激痛を。
しかし――。
カラン、カラン……。
乾いた木材が、地面に転がり落ちるような音がしただけだった。
痛みはない。血が吹き出す感覚もない。
ただ、すぐ目の前で、ダダダダダダダダ……というチェーンソーのアイドル音だけが規則正しく鳴り続けている。
「……あれ? 俺、死んだ……?」
天国にしては寒すぎるし、地獄にしてはチェーンソーの音がリアルすぎる。
俺は恐る恐る、片目だけを薄く開けてみた。
そこは天国でも地獄でもなく、先程とまったく同じ、枯れ葉の散る雑木林だった。
そして目の前には、チェーンソーを振り下ろした姿勢のまま、ピタリと動きを止めているホッケーマスクの巫女が立ち尽くしている。
「……え?」
混乱する頭で周囲を見渡すと、俺の足元に、何かが見慣れないものが落ちていた。
それは、真っ二つに切断された、木彫りの『般若の面』だった。
切断面からは、黒い泥のようなものがドロドロと溶け出し、空気に触れてシュウシュウと蒸発している。
「な、なんだこれ……?」
俺が呆然としていると、不意に、凛とした女性の声が響き渡った。
『――見事な断絶ですわ。これにて、魔の祓いは完了いたしました』

「……は?」
目の前のホッケーマスク巫女の声だろうか。しかし、マスク越しの声にしては、曇りなく聞こえてくる。
「……あのお、今、何か喋りましたか?」
俺が尋ねると、再びその声は響いた。
『ええ、喋っておりますとも。わたくしは穢れを断つものにして、その理を司る者。主は寡黙ゆえ、わたくしが代わりにお話しておりますの』
「いや待って待って待って、そっち!?」
声の出所は、巫女ではない。
巫女が握りしめている、血生臭いチェーンソーのモーター部分から響いていたのだ。
「チェーンソーが喋ったあぁぁぁぁぁぁあ!?」
『失礼な。わたくしには気高き名が――』
プツン、と。
巫女がチェーンソーのスイッチを切り、駆動音を完全に止めた。
途端に、耳鳴りがするほどの完全な静寂が雑木林を包み込む。
巫女はゆっくりとチェーンソーを下ろし、へたり込んでいる俺の顔をジッと見下ろした。
ホッケーマスクの奥の瞳は相変わらず見えないが、先程までの殺気は完全に消え失せている。
そして彼女は、倒れたままの俺に向けて、ゆっくりと白い手を伸ばしてきた。
その瞬間、俺の中で張り詰めていた緊張の糸が、プツンと音を立てて千切れた。
「あ、助かったんだ……俺……」
極度の恐怖が和らぐと同時に、安堵がどっと押し寄せ、脳がシャットダウンを選択する。視界が急速に暗転していく。

意識が完全に途切れる寸前、薄れゆく視界の中で、俺は信じられないものを見た。
あんなに無慈悲でターミネーターのようだったホッケーマスクの巫女が、俺が倒れたのを見て、
「あわわわっ!?」とでも言うように、両手をバタバタと振って激しく狼狽え始めたのだ。
そして、最後にチェーンソーから響いたのは、
『あらあら。気を失ってしまわれましたわ。情けない殿方ですこと』
という、俺を小馬鹿にするような、やけに楽しげな女性の声だった。
(いや、お前らのせいだろ……)
そんな真っ当なツッコミを最後に、俺の意識は深い闇へと沈んでいった。
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「今年の三月は、二月よりも寒いんじゃないか……?」
俺、東雲陽斗(しののめ はると)は、新品の原付にまたがりながら、どんよりと曇った空を見上げて小さくため息を
『あの仏像は、恐らく昔、呪殺に使われていたものでしょうわね』
祀鋭尊尊(じえいそんのみこと)の声が、破壊された公園の静寂に響いた。
「なんで俺、晶湖にいるんだ……?」
俺は新品の原付にまたがったまま、目の前に広がる夜の湖を呆然と見つめていた。
院宗(いんそ
「さあ、陽斗(はると)。身を清める時間ですわ」
祀鋭尊尊(じえいそんのみこと)の厳格な声に促され、俺は院宗(いんそう)神社の拝殿から、境内の奥へと向かった。千







