説明
エドテレビ、入社5年目の女性アナウンサー三上実花、愛称ミカミカは都内屈指のお嬢様大学を卒業後、エドテレビにアナウンサーとして採用された。入局間もない頃から美しい黒髪をなびかせ、その落ち着いた容姿とスタイル、天使の囁きのような癒し系の声で、エドテレビの人気アナウンサーとなった。報道、バラエティー、スポーツとどの分野もマルチにこなし、誰もが憧れる女性アナウンサー。しかし、その裏の顔はエドテレビ内の膿を摘み取る特命アナウンサー。今日もエドテレビの闇を暴き処理していく⋯。興奮と緊張のセクシースリリング作品!
エピソード1
「本番、5秒前。4、3、2……」
フロアディレクターの指が虚空を切り裂く。その瞬間、スタジオを支配する無機質な静寂は、カクテルのような華やかな喧騒へと一変した。
「皆さん、こんばんは。エドテレビ『ニュース・ナイト・ジャパン』、キャスターの三上実花です」
カメラのレンズ越しに、数百万の視線が突き刺さる。だが、三上実花――愛称「ミカミカ」の表情筋は、ミクロン単位の狂いもなく完璧な孤を描いていた。 艶やかな黒髪はスタジオの照明を吸い込んで濡れたように輝き、その声は、深海に沈む真珠のように滑らかで、かつ絶対的な安心感を孕んでいる。
「今日のトップニュースです……」
ニュース原稿を読み上げる彼女の姿は、まさに『エドテレビの良心』そのものだ。清楚で、知的で、決して乱れない。都内屈指のお嬢様大学卒というブランドが、その神聖さをさらに補強している。報道、バラエティー、スポーツ。どこに置いても彼女は光り輝く宝石だった。
――誰かの、指紋がつかない限りは。
三上の視界の端、モニターに映る自分の笑顔を確認しながら、彼女の脳内ではまったく別のチャンネルが放送されていた。 (Aカメの西田さん、奥さんと揉めてるわね。ワイシャツの襟のプレスが甘い。Bカメの佐藤さん、視線が私じゃなくて新人のお天気お姉さんの胸元にロックオン中。……まったく、どいつもこいつも)
完璧な原稿読みの裏側で、三上はスタジオ内の欲望と澱(おり)を冷静にスキャンしていた。彼女にとって、テレビとは美しい虚構だ。だからこそ、その裏側にへばりつく薄汚い現実は、純白のドレスに垂れたソースのシミのように許しがたい。
「……以上、ニュースをお伝えしました」
CMに入った瞬間、三上の表情から温度が消えた。 「お疲れ様でしたー!」 スタッフの声をBGMに、彼女は優雅に、しかし一切の無駄がない動作でスタジオを後にする。
エドテレビの地下通路に近い、目立たない廊下の突き当たり。そこには、デジタル化が進むこの局内で唯一、昭和の亡霊のように鎮座する「意見箱」があった。錆びついた金属の箱。表向きは「業務改善提案」のためのポストだが、局内にはある都市伝説が囁かれている。
『用紙の右隅に赤字でSOSと書けば、どんなトラブルも闇に葬られる』
カツ、カツ、カツ……。
怯えを含んだヒールの音が廊下に響く。現れたのは、入社1年目の光石ひかり――愛称「ピカピカ」だ。その名に反して、今の彼女の顔色は曇天そのものだった。震える指が、四つ折りにされた不審なメモを握りしめている。
彼女は周囲をキョロキョロと伺うと、小動物のように体を縮こまらせ、素早く用紙を広げた。震える手で赤いペンを走らせる。
『SOS』
「ピカピカちゃん! もうすぐリハーサルです。急いでください!」
ADの怒声が遠くから飛んでくる。ひかりはビクリと肩を震わせ、慌ててその紙を意見箱の投函口へ押し込んだ。鉄の蓋が、カタリと乾いた音を立てて閉じる。
「お願い……助けて……」
その瞳には、メイクでも隠しきれない涙が滲んでいた。それは、テレビ画面には決して映してはいけない、生々しい絶望の色だった。
***
「入りなさい」
重厚なドア越しに響く声は、低く、威圧的だった。 三上はノックの音すら一定のリズムに整え、ドアを開けた。そこはエドテレビのアナウンス室室長、大神かずみの城だ。
革張りの回転椅子に深々と腰掛けた大神は、伝説の女帝と呼ぶにふさわしい貫禄を漂わせていた。勤続20年。彼女の睨み一つで、若手プロデューサーなど失禁しかねないと言われている。
「大神室長……。何でしょうか」
三上は営業用のマスクを被ったまま、静かに問いかけた。大神は手に持っていた高級万年筆をデスクに置くと、くるりと椅子を回転させ、正面から三上を見据えた。
その手には、しわくちゃになった一枚の紙片があった。右隅に、鮮烈な赤で『SOS』と書かれた紙片が。
「新しい仕事よ、ミカちゃん」
大神の声は、獲物を前にした肉食獣のように楽しげだった。
「今度は報道ですか? それともドキュメンタリー? まさか、深夜の体当たりバラエティーなんてことありませんよね?」
三上は首をかしげ、あざといほど可憐な声で尋ねる。だが、大神は鼻で笑った。
「大物タレント司会者による、若手女子アナへの『個人的指導』……要は、愛人強要の調査よ」
ピクリ。三上の眉が動いた。 大神は意地悪くニヤリと笑い、その紙片をデスクの上へ滑らせた。
「相手は『お昼の顔』と呼ばれるあの大御所よ。警察沙汰になれば局の株価は大暴落。スポンサーは激怒。……だからこそ、警察より先に我々が『掃除』する必要がある。わかるわね?」
三上はその紙片を手に取った。そこには、震える筆跡で生々しいセクハラと恫喝の内容が記されていた。『ホテルの最上階に来い』『断ればお前のコーナーはなくなる』――典型的な、権力を笠に着た醜悪な文言。
一瞬にして、三上の纏(まと)っていた「癒やしのオーラ」が蒸発した。 彼女の瞳から理性が、そして慈愛が削げ落ちていく。残ったのは、獲物の急所を見定める狩人の、底冷えするような光だけだった。
「……あら」
三上の唇が、三日月のような冷酷な孤を描く。その声のトーンは、ニュースを読む時よりもさらに低く、そして艶かしかった。
「私の神聖な画面(エドテレビ)に、また汚物がこびりついているようですね」
かつて「天使」と呼ばれた女は、今や美しい悪魔の顔つきで、そのSOSの紙を丁寧に折りたたんで胸元のポケットにしまった。
「承知いたしました、室長。……徹底的に、消毒して参ります」
最新エピソード
「うっぷ……」
吐き気がした。
きらびやかなシャンデリアが下がるホールの、ムワッとするような熱気と、甘っ
「はい……、お願いします」
通話を切ると、三上実花はスマートフォンの画面が暗転するのを冷めた目で見つめた。
液晶の黒い鏡面に映るのは、先ほどまでの獣
「……んんっ……!」
甘く、濡れた嬌声が、自分のものであるとは信じたくなかった。
滝川の掌が、ビキニトップの上から容赦なく私の
「三上先輩! あの……本気ですか!?」
アナウンス室の静寂を、光石ひかりの上ずった声が切り裂いた。
彼女は手に持っていた台本を震わせていた。まるで爆







