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九龍魔法魔術学校〜鉄屑の獅子〜

九龍魔法魔術学校〜鉄屑の獅子〜

更新日時: 2026-01-26 01:51:34
By: GURE5-56
連載中
言語:  日本語4+
4.5
4 評価
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エピソード数
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説明

香港上空に浮かぶ「九龍魔法魔術学校」。 魔力制御ができず「鉄屑(ジャンク)」と蔑まれる少年レオンは、実は10年前に世界を救った英雄の息子であり、邪悪な開祖「張無夜」の力を封印された器だった。


学園最強を決める「龍王戦」の決着直後、闇の結社「黒蓮会」が襲来。レオンの宿敵であり親友のアーサーが、張の完全復活のための生贄として連れ去られてしまう。 「鉄屑でも、輝けることを証明してやる」 レオンは亡き父と母が遺した封印(ペンダント)を力に変え、発明家のシルヴィア、怪力のバオ、そしてかつての英雄である教師たちと共に、学園の地下深くへ攻め込む。


覚醒した獅子の拳が友を救い、150年の因縁を断ち切る! 落ちこぼれが世界を揺るがす、熱血魔法バトルファンタジー。


エピソード1

 それは、とても古い、火傷のような記憶だ。



 世界は壊れていた。

 空はドス黒い雲に覆われ、そこから絶え間なく混沌とした瘴気が溢れ、腐敗の雨が降り注いでいた。

 視界の端で、高い建物が音もなく崩れていくのが見えた。

 遠くで、獣の咆哮のような、あるいは地鳴りのような低い音が響いている。



 瓦礫の山となった路地裏。

 鼻を突くのは、焦げた鉄の臭いと、湿った血の臭い。



「……ッ、はぁ……はぁ……」



 母さんが、僕を抱きしめていた。

 いつも石鹸のいい匂いがした母さんの服は、泥と煤(すす)で汚れ、所々が赤黒く染まっていた。

 母さんの体は、小刻みに震えていた。

 それが恐怖のせいなのか、痛みによるものなのか、幼い僕には分からなかった。



「……ごめんね」



 母さんの声が、掠れて聞こえた。

 彼女は僕の顔を、汚れた両手で包み込んだ。その瞳からは、ボロボロと大粒の涙が溢れ出し、僕の頬を濡らした。



「ごめんね、レオン……。本当に、ごめんね……」



 なぜ謝るの?

 僕は何も悪いことなんてしていないのに。

 どうして母さんは、そんなに悲しそうな顔で僕を見るの?



 母さんは、震える手で懐から何かを取り出した。

 薄暗い廃墟の中で、それだけが異質に、美しく輝いていた。

 深い緑色をした、勾玉のような形をした翡翠のペンダント。



「……これを、決して離さないで」



 母さんはそれを、僕の首にかけた。

 ひやり、とした冷たさが胸元に触れ、すぐに母さんの体温と混じり合った。

 重い。

 小さな石なのに、まるで鉛の塊を背負わされたような、ずしりとした重みがあった。



「あなたが生きるための……たった一つの守りだから」



 母さんは僕を抱きしめた。

 強く、痛いくらいに強く。

 僕の視界が母さんの胸に埋もれ、世界の崩れる音がこもって聞こえた。



 その温もりだけが、僕の世界の全てだった。

 でも、その温もりが急速に冷たくなっていくことを、僕はただ、怯えながら感じていた。



 降り止まない灰。

 遠ざかる意識。

 そして、耳に残る「ごめんね」という言葉。



 ――それが、僕の始まりの記憶。

 鉄屑の獅子が目覚める、ずっと前の、長い雨の日の夢。


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