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雲深の月、永遠の誓い

雲深の月、永遠の誓い

更新日時: 2025-12-30 17:00:13
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説明

七つで孤児となった俺を拾ったのは、氷のように冷たい瞳をした十歳の少年だった。


彼は俺の兄で、師で、そして唯一の守護者。


だが、その禁欲的な仮面の下に隠された、俺の名を呼ぶ熱い吐息を知ってしまった夜から、全てが変わる。


「お前はもう子供ではない」——そう言って突き放す彼を、俺は諦めない。


戒律も、立場も、関係ない。


この身を捧げると誓うから、あなたの全てを俺にください。


エピソード1

パラレルワールド。雨が、容赦なく窓を叩いていた。

稲妻が空を裂くたび、客殿の隅で小さく縮こまる魏無羡の影が、壁に映っては消えた。七歳の彼には、この広大な雲深不知処が、あまりにも冷たく、恐ろしかった。

昨日まで、父がいた。母がいた。温かい家があった。それが全て、戦火の中で灰になった。

姑蘇藍氏の族長・藍啓仁が、天涯孤独となった彼を引き取ってくれた。だが、優しい言葉をかけてくれた老人は、彼をこの部屋に残して去ってしまった。

魏無羡は、また一人だった。

足音が近づいてきた。扉が開く。

「魏嬰」

低く、落ち着いた声が、彼の名を呼んだ。

魏無羡は顔を上げた。月明かりの中、一人の少年が立っていた。十歳ほどだろうか。端正な顔立ち、まっすぐな姿勢、白い額帯が月光を反射している。そして何より印象的だったのは、その琥珀色の瞳だった。

「僕は藍忘機。族長に、お前の世話を任された」

声は無表情だった。けれど、その瞳には、冷たさとは違う何かが宿っていた。

魏無羡は何も言えなかった。ただ、その少年を見つめていた。

静寂が、二人の間に流れた。窓を叩く雨音だけが、部屋を支配していた。

藍忘機は、魏無羡の隣に腰を下ろした。何も言わなかった。ただ、そこにいた。

時間が、ゆっくりと過ぎていった。

「……お腹、空いてない?」

魏無羡が、小さく尋ねた。自分でも驚くほど、自然に言葉が出た。

藍忘機の目が、僅かに見開かれた。そして—ほんの少しだけ、口の端が上がった。

魏無羡は後に知ることになる。これが、感情を表に出さない藍忘機の、笑顔だったのだと。

「嗯。腹が減った」

藍忘機が頷くと、魏無羡は立ち上がった。

「じゃあ、食べ物、持ってきてもらう」

扉の外で待っていた侍女に頼むと、程なくして温かい食事が運ばれてきた。

二人は、無言で食事を分け合った。箸を動かす音、器が触れ合う音、雨音。それだけが、静寂を破っていた。

だが、魏無羡は不思議と、寂しくなかった。

食事を終えると、魏無羡は勇気を振り絞った。

「あの、ね」

藍忘機が顔を上げた。

「忘機……哥哥、って呼んでも、いい?」

藍忘機の手が、僅かに震えた。琥珀色の瞳が、月光の中で揺れた。

長い沈黙の後、彼はゆっくりと頷いた。

「……好」

その一言が、魏無羡の胸を満たした。涙が、頬を伝った。

「ありがとう、忘機哥哥」

藍忘機は魏無羡の頭に手を置いた。大きな手が、優しく髪を撫でた。

「俺が、お前を守る」

その言葉は、魏無羡の心に深く刻まれた。

翌朝、魏無羡が目を覚ますと、藍忘機が既に部屋の外で待っていた。

「おはよう、忘機哥哥」

「嗯。朝の修練に行くぞ」

藍忘機の手が、差し出された。

魏無羡は、迷わずその手を取った。

冷たいと思っていた手は、握ると温かかった。その温かさが、魏無羡の凍えた心を、少しずつ溶かしていった。

そして、その日から、魏無羡の雲深不知処での日々が始まった。

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