説明
山奥で見たそれは!
エピソード1
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その男が最後に聞いたのは、自分の名前を呼ぶ声だった。
「……佐伯さん」
振り返った。
誰もいなかった。
霧が出ていた。
十メートル先の木々さえ輪郭を失い、白い空間の中に黒い幹だけが浮かんでいる。
男は立ち止まった。
「誰だ?」
返事はない。
ただ、森の奥で枝が折れた。
――パキッ。
男は懐中電灯を向けた。
何もない。
それでも、誰かがいる。
そう思った。
いや。
「誰か」ではない。
何かが、自分を見ている。
男は無意識に後ずさった。
その時、背後から声がした。
「……おいで」
男は振り返った。
そこには、誰もいなかった。
ただ、濃い霧の向こうに、二つの小さな光が浮かんでいた。
男は逃げようとした。
しかし、足が動かなかった。
光が一つ、また一つと増えていく。
そして、森の奥から、いくつもの声が重なって聞こえた。
「……おいで……」
「……こっち……」
「……もう……帰れない……」
男が最後に見たのは、霧の向こうで揺れる巨大な影だった。
それから三十七年。
男の遺体は発見されていない。
残されたのは、錆びた懐中電灯だけだった。
その懐中電灯が、広島県北東部の山中にある洞窟から発見されたのは、さらに十年後のことだった。
そして現在。
四人の人間が、その洞窟へ向かっていた。
彼らはまだ知らなかった。
そこには、彼らよりずっと前から「待っているもの」があることを。
最新エピソード
その後、四人の消息は途絶えた。
捜索隊が派遣された。
しかし、四人が向かった鳴神の谷へ入ることはできなかった。
場所を把握できなかったので
森脇は洞窟の入口に立った。
背後では、耳を塞いで美咲が泣いている。
黒沢が頭を抱えて、何かを叫んでいる。
古田が狂ったように祝詞を唱えて
六日目。
霧が出た。
濃い霧。
視界は数メートル。
その中に、人影が現れた。
十人ほど。
古い服。<







