雷属性の異能者、またまた強くなる
説明
貧しい部屋で一人暮らしをする大学生、神谷透は、ある朝突然、雷を操る異能に目覚めた。触れた家電は次々と壊れ、夢には自分と同じ顔をした、神のような雷を放つ存在が現れる。異能の原因を探る透は、病院の幽霊、怪異事件、そして自分を狙う異能者たちに巻き込まれていく。
やがて彼の通う大学が政府公認の異能学院であり、学生会が異能犯罪や妖異を監視していることが明らかになる。恋人となった瞬間移動能力者の桜井紗雪、仲間たち、そして謎の人造人〈神使〉とともに戦う中で、透は雷電だけでなく玄冥拳法と魂の力をも手に入れる。自分と同じ顔をした無数の複製体の向こうに待つ、夢の中のもう一人の自分の正体とは。
エピソード1
「俺……雷電を操れるのか……!?」
神谷透が両手で触れていた場所に、かすかな電流が走っていた。手を前へわずかに動かすと、目にも捉えにくいその電流が、テレビのほうへ伸びていく。
次の瞬間、「ゴロゴロッ」という轟音が部屋に響いた。テレビは壊れたように沈黙し、それきり何の音も出さなくなった。
どういうことだ……!?
なぜ俺が雷電を操れる?
神谷透は洗面所へ駆け込み、鏡に映った自分の姿を見つめた。少し乱れた髪が顔にかかり、目元にはまだ眠気が残っている。唇は乾いてひび割れ、しばらく水分を取っていなかったことがうかがえた。すっと通った鼻筋と端正な顔立ちは、彼をいっそう精悍に見せている。ただ、顔に残る一本の傷跡だけが惜しかった。
「俺は……」
鏡の中の自分を見たまま、透は呆然とつぶやいた。
唇の乾きに気づくと、透は慌てて洗面所を出た。大きなコップに水を注ぎ、喉を鳴らして一気に飲む。だが、そのときだった。手のひらにびりっとした痺れが走り、握っていたコップが床へ落ちた。
コップは砕け、床一面に細かな破片が散らばる。飲み残しの水もあたりへ飛び散り、その一部は透の服まで濡らした。
床に広がった水たまりの中で、細い電流がちらちらと明滅している。コップを握っていた透の手にも、かすかな電気が走っていた。
まずい。まさか……!?
透は急いで周囲を見回した。いつもなら動いているはずの電化製品が、すべて止まっている。
透が暮らしているのは、古びた賃貸住宅だった。広すぎず、狭すぎもしない部屋だが、備えつけの設備はどれも年季が入っている。透はすぐに照明のスイッチへ駆け寄り、二度押した。
リビングの中央に吊られた照明が一瞬ちらつく。だが、いつものように明かりが灯ることはなかった。
「マジかよ……!」
透は思わず、ひとりごちた。
最初は停電だと思った。だが、どうやら違う。自分が突然、雷電を操れるようになったせいで、部屋中の電気が止まっているらしい。
透は、昨夜見た奇妙な夢をぼんやりと思い出した。見たこともない世界に立っていて、周囲には何人かの友人がいた。そして向かい側にいる人物が、なぜか自分と同じ顔をしていたのだ。
間違いない。昨夜の夢は、まさにそういうものだった。
向かいに立つ「透」が片手を掲げると、雷電が隣にいた友人のひとりを直撃した。友人はその場に崩れ落ちる。透は叫ぼうとしたが、声が出ない。
「透」はさらに手を、透のそばにいた別の友人へ向けた。二度目の雷電が走り、またひとりが倒れる。
「お前……」
透の瞳孔がわずかに縮んだ。目の前で雷電を放つ「透」が、ひどく憎らしく思えた。けれど身体は動かず、声も出せない。ただその場に立ち尽くし、起きていることを見ているしかなかった。
向かいの「透」は、まるで神そのものだった。背後から強烈な金色の光が放たれ、その眩しさに透は目を開けていられない。透は慌てて手で顔を覆った。
やがて「透」はゆっくりと地面を離れ、宙へ浮かび上がった。両手を掲げると、無数の銀白色の雷電が幾条もの龍のように、空一面をうねりながら駆け巡った。
「これは……神様なのか!?」
透は向かいの「透」を見つめ、驚きに目を見開いたまま声を漏らした。
「お前は誰だ?」
そのときになって、透はようやく声が出せることに気づいた。周囲にいた仲間たちは、「透」の雷電によって全員倒れている。
しばらく待っても「透」は答えなかった。透はもう一度問いかける。
「お前は誰だ?」
「俺が誰か?」
「透」の瞳には、わずかながら空虚な色があった。返ってきた声は、機械のように冷たい。
「俺はお前だ」
なに……!?
その言葉に、透は呆気に取られた。やがて、どうにか声を絞り出す。
「どういう意味だ?」
「俺はお前だ、神谷透……」
宙に浮かぶ「透」の背後で、目を刺すような金色の光が膨れ上がった。掲げた両手の周囲には、無数の銀白色の雷電が龍の群れさながらに渦巻いている。
その言葉を最後に、「透」の姿は音もなく消えた。
そして本物の透は、夢から跳ね起きた。
「ジリリリ、ジリリリ……」
目覚まし時計の音が鳴り響いていた。
「なんだよ、この夢……」
透はまだ重い頭を手で揉みながら、ひとりごとのようにつぶやいた。
透は慌てて起き上がり、携帯電話へ手を伸ばした。眠りから叩き起こしたのは、ほかでもない携帯電話のアラーム音だった。
だが、指が携帯電話に触れた瞬間、右手に鋭い痛みが走った。透は反射的に手を引く。
携帯電話の画面は、音もなく暗くなった。
焦げたようなにおいが漂ってきた。透は鼻をひくつかせ、そっとにおいを確かめる。
この焦げ臭さは、まさか自分の手から出ているのか?
透はもう一度右手を伸ばし、携帯電話を取り上げた。電源ボタンを押してみるが、いくら待っても反応がない。さすがに透も首をひねった。
どうなってるんだ……俺の携帯が、どうしてこんなことに!?
そのとき、黒い画面の携帯電話を握る右手に、またしても痺れが走った。痺れは瞬く間に全身へ広がっていく。
嫌な予感がした。透はとっさに携帯電話を放り投げた。
手を離れた直後、携帯電話が「バンッ」と弾け飛んだ。破片が四方へ飛び散り、そのいくつかが透へ向かってくる。頬とふくらはぎをかすめ、皮膚に細い傷を残した。
「うわっ……!」
痛みに顔をしかめ、透は思わず後ずさった。
床へ投げ捨てた携帯電話に目を向ける。もはや完全に壊れており、爆発で生じた破片がそこら中に散らばっていた。透は慎重に近づいて様子を確かめ、それから右手を持ち上げる。
その目には、理解しがたいものを見た者の色が浮かんでいた。
「いったい、どうなってるんだ……」
透は唇をかみしめながら、呆然とつぶやいた。
きっと長年使い続けたせいで携帯電話が故障し、そのまま壊れてしまったのだろう。
考えてみれば、この携帯電話を中古市場で買ったのは三年前だった。安くて性能も悪くないからと選んだものだが、こうして見ると、やはり安物にはそれなりの理由があるらしい。
次からは目先の安さに飛びつくのはやめよう。多少無理をしてでも、もう少しいい携帯電話を買わなければ。そうしないと、粗悪な携帯電話に殺されかねない……。
透は爆発した携帯電話を慎重に避けて歩いた。今は片づける気になれない。あれがまた爆発するのではないかと思うと、近づくのも怖かった。
照明をつけていない部屋は薄暗い。透は電灯のスイッチを何度か押したが、やはり何の反応もなかった。
どうなってるんだ……!?
まさか、停電なのか?
透は照明のことをそれ以上気にせず、爆発した携帯電話を慎重に迂回して窓辺へ向かった。カーテンを開けると、眩しい陽光が窓から差し込んでくる。
透は慌てて手で光を遮った。次の瞬間、薄暗かった部屋が一気に明るくなった。
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最新エピソード
三日後、江城の空は相変わらず青かった。 神谷透は別荘の寝台に横たわったまま、ゆっくりと目を開けた。見慣れた天井をぼんやり眺め、しばらくしてから、ようやく自分が本当に戻ってきたのだと理解する。
透の内にある雷電が、この瞬間、完全に解き放たれた。 意識空間の空は銀白色の光に染め上げられ、ひび割れていた血月さえ雷霆に貫かれる。宙に立つ透の背後には、巨大な雷電の虚影が浮かんでいた。それは夢の
血月の裂け目から、白い長衣をまとった男がゆっくりと姿を現した。 その顔は神谷透と瓜二つだった。ただ、瞳には感情の欠片もなく、その背後には金色のエネルギーコアが九つ、静かに浮かんでいる。 「
雷霆の門をくぐった瞬間、透の目の前に広がる景色が一変した。 そこは果てのない黒い空間だった。空に太陽はなく、浮かんでいるのは血月だけ。足元にはひび割れた黒い大地が広がり、遠くには巨大な骨柱が幾本







