ゴムゴムの世界を覗いてみた金髪貴族
説明
聖地に迷い込んだミハエル。そこでは4年に1回の大きな会議が開かれていた! けど呑気にバナナ食べる。
エピソード1
聖地マリージョアは、まばゆいばかりの白亜の建造物が連なり、空へと伸びる巨大な階梯が雲を貫くかのような威容を誇っていた。世界の頂点に立つ者たちが集うこの地では、今まさに世界会議――レヴェリーの開催が目前に迫っている。各国の王族や使者たちが続々と到着し、街は異国情緒あふれる衣装に身を包んだ人々で賑わっていた。
その豪華絢爛な光景の真ん中で、ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒはげんなりとしたため息をついた。
「さてと、ここはどこかな……」
金色のアラベスク模様が施された黒いコートをひるがえし、彼は周囲をキョロキョロと見回す。184cmの長身は群衆の中でもひときわ目立ち、短く整えられたブロンドの髪が左目の上で軽やかに揺れる。
まったくもって理解不能な状況だ。ついさっきまでヴァーレンス王国の自室で、嫁のひとりであるフィオラとのんびりと過ごしていたはずなのに、気がつけば見知らぬ土地に放り出されている。
「まあ、いいや。まずは栄養補給だ」
そう言ってミハエルはコートの内ポケットからバナナを取り出す。ヴァーレンス王国なら魂の欠片で支払うところだが、こういう時は持参した食料が役に立つ。皮をむき、ほおばる。甘い香りが口中に広がる。
近くを通りかかった衛兵らしき男を見て、ミハエルは軽く手を振った。

「ねえ、君。ちょっと聞きたいんだけど」
衛兵は警戒した表情で近づいてくる。
「何でしょうか? おや、お顔に見覚えがありませんが……どちらの国の方ですか?」
「ああ、それはね……とりあえずそこの詳細は置いといて」
ミハエルはバナナの皮を優雅に捨てながら言った。
「このマリージョアってとこで、今何か大きなイベントでもやってるの? すごく賑やかだね。サーカス団でも来たの?」
衛兵は怪訝そうな顔をした。
「世界会議の開催ですよ。ご存じないのですか? 各国の王族が集まって世界の重要事項を話し合う……」
「ほう、世界会議」
ミハエルは顎に手を当て、興味深そうにうなずく。
「で、その世界会議ってやつには、どんな連中が来てるんだい? 例えば……天竜人とかいうのも来るのかね?」
衛兵の顔色が一瞬で曇った。
「天竜人様のお話は……控えさせていただきます」
「おやおや、随分と畏まった反応だね」
ミハエルはいたずらっぽく笑った。
「で、天竜人てなに? さっき人の話し声から聞こえてきたんだが。ドラゴン? 人間変身してるの? フィオラみたいに?」
「フィオラ?」
今度は衛兵が怪訝な顔をする。
「ごめんこっちの話」
ミハエルは軽く手を振ると、もう一口バナナをかじった。
「とにかく世界情勢知りたいんだよねーわたし。と言うか、どうやらかなりヤバい世界に来ちまったみたいだし」
衛兵は完全に困惑した表情でミハエルを見つめている。どうやらこの男、かなり変わり者のようだ。しかしその服装や物腰からして、どこかの貴族であることは間違いない。
「ええと……もしよろしければ、公式の観覧エリアからなら世界会議の様子を……」
「あ、いやいや、そんな堅苦しいところじゃなくて。こんな貴族服は着てはいるけどさ」
ミハエルはにっこり笑った。
「もっとカジュアルなんでいいよ、庶民的な感じでね。例えばこの世界の通貨制度とか、軍事バランスとか、主要な勢力図とか……そういうのをサラッと教えてくれない?」
ミハエルのヴァーレンス王国とはだいぶ違う世界観のようだ。ここではどうやら、魂の欠片ではなく普通のお金が流通しているらしい。ミハエルとしては、その経済システムにまず興味が湧いた。
衛兵はため息をついた。
「そのような情報は、各々の国が公開している公式文書で……」
「あー、めんどくさいのはいいよ」
ミハエルは手のひらを掲げて遮った。
「じゃあもっと簡単に聞くよ。この世界で一番えらい連中はどこだい? それと、海賊とかいうのもいるらしいじゃないか。あと革命軍ってのも聞いたことがあるぞ」
衛兵は周囲をキョロキョロと見回し、声を潜めて言った。
「お願いですから、そのような話題は公の場で……」
ちょうどその時、遠くから威圧的な音楽が聞こえてきた。道行く人々が一斉に道端に跪き、地面に額をつけ始める。
「おお、これはまた大げさな歓迎だな」
ミハエルは感心したように言いながら、じっと前方を見つめる。
衛兵は慌ててミハエルの袖を引っ張った。
「跪いてください! 天竜人様が通りがかります!」
「天竜人?」
ミハエルの目が輝いた。
「ちょうどいいな。実際に見てみたいと思ってたんだ」
ゆっくりと近づいてくるのは、巨大な奴隷の肩に担がれた豪華な輿。その中には奇妙な宇宙服のようなものを着た人物が座っており、鼻の穴をほじりながら周囲を見下すように眺めている。
「ははーん、これが天竜人か」
ミハエルは顎をさすりながら観察する。
「なかなか面白い格好してるじゃないか。あのバブルヘルメット、どういう機能があるんだろうな?」
衛兵は蒼白になった顔でミハエルを睨みつける。
「黙ってください! そんなことを大声で言うものではありません!」
しかしミハエルの好奇心は止まらない。
「ねえねえ、あの人たち本当にドラゴンなの? それともただの変わり者? フィオラなら時々鱗が出たり角が生えたりするけど、あの人たちはどうなんだい?」
輿の中の天竜人が突然、道端に跪いている老人を指差した。「あの汚らしいジジイ、私の視界に入ってきた。消し去れ」
側近の一人がすぐに銃を取り出そうとするが、ミハエルがさっさと前に歩み出た。
「おやおや、なんてご立派な方々だろう」
ミハエルは優雅にお辞儀をすると、にっこり笑いかけた。
「ヴァーレンスのミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒと申しまーす。突然の訪問で恐縮ですが、つい最近この世界にやって参りましてね」
天竜人は目を細めた。
「ヴァーレンス?聞いたことがない国だな。どこにある?」
「ああ、それはね……ちょっと説明が難しいんですが」
ミハエルはいたずらっぽくウインクした。
「とりあえず、そちらの方の服装が非常に興味深くてね。あのヘルメット、酸素供給でもしているのかい? それとも単なるファッション?」
周囲の空気が一瞬で凍りつく。衛兵はもう卒倒しそうな顔をしている。
天竜人はゆっくりとミハエルを上下に見下ろした。
「お前……跪かないのか?」
「跪く?」
ミハエルは首をかしげた。
「ヴァーレンスではね、魂の綺麗さで立場が決まるんだよ。見かけの格好や肩書きじゃない。だから君がどんなに偉そうな格好をしていても、魂が汚れてたら跪く義理はないな」
輿の周りにいた護衛たちが一斉に銃を構えるが、ミハエルは涼しい顔でバナナの最後の一口を食べ終えた。
「まあまあ、そんなに緊張しなくてもいいさ」
ミハエルはにこやかに手を広げた。
「わたしはただの好奇心旺盛な旅行者だよ。それより君たち、世界会議には出席するのかい? どんな議題が出るんだろうね」
天竜人はしばらくミハエルをじっと見つめていたが、突然鼻で笑った。
「面白い男だ。今回は見逃してやる。せいぜいこの世界のルールを早く学ぶがいい」
そう言うと、天竜人は輿を進めるよう合図した。護衛たちは銃を下ろし、行列は再び動き出した。
ミハエルは後ろから手を振った。
「また会おうね! 世界情勢についてもっと教えてくれるだろう?」
衛兵は放心状態でその場に立ち尽くしていた。
「あ、あれで……無事だったのですか? 普通なら即座に……」
「なんで怒られるんだい?」
ミハエルは首をかしげた。
「別に失礼なことなんて言ってないだろう?それともこの世界では、正直な感想を言うのもタブーなのかい?」
衛兵は深く息を吸い込んだ。
「とにかく……あなたのような方が単独で行動されるのは危険です。どこの国の方かはわかりませんが、大使館か何かに保護していただいた方が……」
その時、遠くから familiar な声が聞こえてきた。
「ビビちゃん、こっちこっち!レベッカも早く!」
ミハエルの目が輝いた。
「おや? もしかして知ってる名前が聞こえたような?」
人群の向こうには、アラバスタ王国のビビ姫と、ドレスローザ王国のレベッカ姫の姿があった。どうやら世界会議に出席するためにマリージョアに来ているようだ。
「ほうほう、これはいいチャンスだ」
ミハエルはにんまり笑った。
「あの娘たちなら、きっとこの世界のことを詳しく知ってるだろう」
衛兵はまだ止めようとしたが、ミハエルは軽く手を振ると、さっさと二人の王女のほうへ歩いていった。
「やあやあ、お二人さん!」
ミハエルは陽気に声をかける。
「ちょっとだけ時間をいただけないかな? 最近この世界に来たばかりでね、いろいろと教えてほしいことがあるんだ」
ビビとレベッカはきょとんとした表情でミハエルを見つめた。見知らぬ男性が突然話しかけてきたのだから無理もない。
「えっと……どちら様です?」
ビビが慎重に尋ねる。
「失礼、自己紹介が遅れたな」
ミハエルは優雅にお辞儀をした。
「ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒ。ヴァーレンス王国から来た公爵だ。つい最近、どういうわけかこの世界に転がり込んじゃってね」
レベッカが怪訝そうな顔をした。
「ヴァーレンス……王国ですか? 聞いたことがありませんが……」
「聞いたことある方が怖いな。全然違う星だもん」
ミハエルは悪戯っぽくウインクした。
「で、君たちは世界会議に出席するのかい? どんな話し合いがされるんだろう?」
ビビとレベッカは顔を見合わせた。どうやらこの男性、かなり変わっているようだが、悪意はなさそうだ。
「世界会議では……世界の平和や安全に関する様々な議題が話し合われます」
ビビが丁寧に説明する。
「今回は特に、『王下七武海』制度の是非についてが大きなテーマになるようです」
ミハエルの目が輝いた。
「ほう、王下七武海? なんだそれ、すごく強そうな名前だな」
レベッカがため息をついた。
「海賊でありながら世界政府によって公認されている者たちです……ですが、その制度には様々な問題が……」
その会話の最中、ミハエルは遠くにしらほし姫の姿を見つけた。リュウグウ王国の王女も、どうやら世界会議に出席しているようだ。
「おお、あの子もいるじゃないか」
ミハエルは興味深そうに言った。
「どうやら麦わらの一味と関わりのある面々が勢ぞろいしているみたいだね」
ビビとレベッカは驚いた表情でミハエルを見つめた。
「まさか……ルフィさんのことまでご存じで?」
「ああ、んー噂程度には、耳にしたことがあるよ」
ミハエルは含みのある笑みを浮かべた。
「どうやらこの世界では、かなり有名な海賊団らしいからね」
ちょうどその時、また別の天竜人の行列が近づいてくる気配がした。ビビとレベッカは反射的に緊張した表情になる。
「まあまあ、そんなに緊張しなくてもいいさ」
ミハエルは陽気に言った。
「さっきも会ったけど、あの人たちちょっと変わってるだけで、話せばわかるよ」
ビビは呆気に取られた様子でミハエルを見つめた。
「天竜人様と……お話されたのですか?」
「ああ、ちょっとした雑談をね」
ミハエルはあっさりと言った。
「で、ねえ君たち、一つ聞いていいかい? この世界って、どうしてあんなに階級社会なんだ? ヴァーレンスでは魂の綺麗さで全てが決まるのに、ここでは生まれや肩書きで人が判断されるみたいだね」
レベッカが複雑な表情を浮かべた。
「それが……世界政府のしくみですから。天竜人様方は創造主の末裔として……」
「創造主? 八百万の神々のような霊気感じなかったぜ? 男の天照くらいに強いとは到底思えんなぁ。神の末裔なら第8番染色体に男の天照の名前が記されてる。わたしたちの場合はな。そういう証拠見つけたの? 天竜人とやら」
ミハエルは首をかしげた。
「ふーん、でもさっき会ったあの人、鼻くそほじってたよ? 創造主の末裔ならもっと品が良くてもいいと思うんだけどな」
ビビとレベッカは思わず笑いをこらえるのに必死になった。この男性、とんでもないことを平然と言う。
「とにかく」
ミハエルはコートのポケットからまた別のバナナを取り出す。
「これから世界会議が始まるみたいだし、わたしも少し見学させてもらおうかな。もしかしたら面白いことが学べるかもしれないし」
そう言うと、ミハエルはバナナの皮をむきながら、そういった。
最新エピソード
聖地マリージョアの回廊は、午後の陽光を大理石が反射して白く輝いていた。ミハエルは金色のアラベスク模様が入った黒いコートの襟を軽く立て、ビビとレベッカを左右に従えて歩いていた。三人の影が長く伸び、
聖地マリージョアの回廊で、ミハエルはビビとレベッカを挟んで歩きながら、遠くの会議場から聞こえる議論の声に耳を傾けていた。三人の影が大理石の床に長く伸び、金色の装飾が施された柱が静かな威厳を放っ
聖地マリージョアの荘厳な部屋で、五人の老紳士――世界政府の最高権力者である五老星が揃って座っていた。彼らの前に立つのは、赤い髪の海賊、シャンクスだった。
「何の用かね?」
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虚の玉座の前に広がる荘厳な空間。黄金に輝く巨大な玉座は、二十人もの人物が同時に座れるほどの規模で、世界政府の頂点たることを无声のうちに宣言していた。その前には、世界各国から集まっ







