説明
長屋の八五郎のところに大家さんが縁談を持ち込みます。相手にはちょっと難があって・・・
エピソード1
(出囃子)
今日もいっぱいのお運びでありがとうございます。
われわれ言葉を商売にしておりますが、言葉も時代や世代によって変わってきますな。どうもわれわれのような世代の者には、若い女の子の言葉もよくわからないってことがあります。そんなお噺でございます。
ーー
神田あたりの裏長屋、棟割りで六軒が軒を連ねるその一軒に、八五郎という男が住んでおりました。腕のいい大工なんですが、女性に縁がなく独り者でございます。
大家「やあ、八五郎! いるかい!」
八「おや、大家さん。朝っぱらからどうしたんです、そんなに血相変えて」」
八「へいへい。で、何の用ですかい。また家賃の催促なら、もうちいと待ってくだせえ」
大家「馬鹿野郎! 今日はそんな野暮な話をしに来たんじゃねえよ。八よ、おめえももう二十八だろう。いつまでもそうやって一人でごろごろしてるわけにもいくめえ」
八「はあ……まあ、そうですけどね」
大家「どうだ、そろそろ身を固めちゃ。。実はな、八。おめえにうってつけの縁談があるんだ。相手はな、京都生まれで、年は二十五。小柄だが、絵に描いたようなべっぴんさんでな。両親は亡くなっているんだが、奉公にでていて、家事一切はとても上手。とても尽くすタイプだ。舅や小姑がいる家はうるさくていいやだ、旦那と二人で暮らせるところに嫁に行きたい、て言うんだが、どうだ?」
八「そりゃあ、あっしにはもったいないくらいの話で。でも、そんなお嬢さんが、何でまた俺みたいなもんに」
大家「そこだよ。まあ、聞け。ちょっとした傷がある」
八「顔のことは触れちゃダメだよ、大家さん。最近はルッキズムがうるさいし」
大家「それはべっぴんさんだよ、それこそAKBとか乃木坂のセンターをとれるくらいで」
八「なんか、ますます怪しいね。。。たとえば夜中に首が延びるとか。猫の目になるとか」
大家「水木しげる先生の猫娘だって、最近は超かわいいんだ・・そんなこと言うもんじゃない」
八「じゃあなんですか、外国人で言葉が通じないとか。あっしは英会話は苦手で。。。」
大家「いや、日本人だよ。日本語を話すし・・・ただその言葉遣いが・・・」
八「え?え?落語だと難しい昔の言葉しか話さないというのがありますけど、そんなんじゃ・・」
大家「現代の日本語だよ。ただ、現代過ぎる。。。まあ、こればっかりは話てみないとわからないだろう、いいね、話は決まった。今晩連れてくるから。。」
大家さん、八五郎の家を出て行っちゃった。
八「なんだってね、トップアイドルみたいなべっぴんさんで、言葉が現代で、家事ができて、尽くしてくれて、二人で暮らすのが希望っていうんだから、どこにも非がないじゃないか?大家さん何か隠しているのかな。。。でも、うれしいね、あっしみたいなところにお嫁さんが来てくれるだなんて。」
八五郎、期待と不安を胸に待っておりますと、大家さんがお嫁さんを連れてやってきた。
大家「おい、八、連れてきたぜ」
大家さんの後ろにいた、彼女を見て八五郎はびっくりした。確かにべっぴんさんなんだけど、なんとフレンチメイドの恰好をした女子高生くらいに見える女の子だった。
八「大家さん、その子があっしのお嫁さんなんですか!?二十五って言っていませんでした?どう見ても十五,六で。。本当に二十五歳ですよね?そうでないと、あっしは捕まっちまうよ」
大家「大丈夫だよ、正真正銘二十五歳!今日は遅いから、この娘さん置いて帰るから、ゆっくり話をしな。じゃあな」
大家さん、彼女を置いて帰っちゃった。
八「あの・・・初めまして。あっしは八五郎といいます。二十八歳で大工をしております。どうかよろしくお願いします。・・・えっと、あなたのこと教えていただけますか?」
娘「ご主人様っ!わ、わたしのこと、知りたいですか…?えへへ、じゃあ、特別に教えちゃいますねっ!
あのね、わたしのパパ様は、昔々きらびやかな京の都にいたんですぅ。お名前は、安藤慶三って言って、みんなからは『五光』って呼ばれるくらい、ピッカピカに輝くすっごい人だったんですよぉ☆
それから、ママ様は千代女っていう、お花みたいに可愛いお名前でしたのっ!ある素敵な夜、ふわふわ〜な丹頂さんの夢を見たら…なんと!奇跡の魔法で、お腹にわたしがぽこって宿ったんですっ!すごくないですかぁ?
だからねっ、ママからぽんって生まれてきた時は、鶴さんからの贈り物だから『鶴女』ちゃんって呼ばれてたんだにゃん♪
でもでもっ!ご主人様にお仕えする、世界一のメイドさんになるために、清女はパワーアップしました!それで、今は『清女』なんですっ!
ご主人様…どうぞ、清女のこと、お好きなようにお呼びくださいませっ!萌え萌え…きゅんっ♡」
八「え、え、え、、、、いまなんて言ったんです?もえ、もえ、きゅん。。。?」
清「うふふ、ご主人様っ!もう清女、ご主人様のラブラブパワーの虜ですわ♡清女、ご主人様についてい行きますぅ♡♡」
八「えええ、なんか♡が多すぎません。これ演者が困ってますよ。。。まぁいいや、とりあえず今日は休みましょう」
そんなこんなで朝になります。八五郎が寝ている間に、朝ごはんを作りますが、台所にあるものがわかりません。
清「ご主人様♡ ご主人様♡」
八「・・・ああ何だい。友達からは『ご主人様♡の八』って言われそうだね。。じゃぁ、『八ぴょん♡』って呼ぶって?よしてくれよ。。何?ケチャップ?この時代にそんなのあるか?」
清「うえーん、ケチャップがないと、オムレツにハートマークが描けないじゃないですかぁ。そんなの悲しいですぅ。シクシク・・」
八「わかった、わかった。泣かない、泣かない・・・泣いているところがかわいいかって?かわいいよ」
清「てへ、うれしい♡ご主人様にかわいいっていってもらっちゃった♡萌え萌えキュン♡」
そこに、八百屋の行商が通ります。
清「そこの八百屋さん!もうっ、そこにちゃんと『おすわり』してくだちゃいっ♪ 清女、見ちゃいますよ~?じーっ♡」
八百屋は困っています。
清「あ、あのですね…これ、お値段はいくらなんですか…?清女、ドキドキで知りたいですぅ…♡」
八百屋「・・・三十二文です。」
清「きゃうんっ♡ ご、ご主人様ぁ…♡♡♡。えへへっ♡ ご主人様、ご報告ですっ!このキラキラ☆かわいい子は『一文字草』ちゃんって言うんですって!お値段は、なんと三十二文なり~っ♪ なんちゃって♡ 清女、お迎えしたい気持ちでいっぱいですっ!」
朝食が出来上がり、八五郎を起こします。
清「きゃんっ♡ ご主人様ぁ!もうお日様が東の空でキラキラ✨輝いて、ご主人様に『おはようビーム!』を撃ってますよぉっ!さぁさぁ、素敵なお服に着替えて、お口をくちゅくちゅ、お手々をキュキュッてして、身も心もぴっかぴかに清めちゃいましょうねっ♪ それから神様と仏様にも、清女と一緒に『今日もご主人様が世界でいちばん素敵ですっ!』ってお祈りして、御灯をぴかーって灯しましょ☆ そのあとは…えーっと、『清ちゃんかわいい♡』って抱っこしてくれて…おっ待っちかね!清女がご主人様のために腕によりをかけて作った『愛情たっぷりあさごはん』を召し上がってくださいませっ!清女の愛、受け取ってくださいねっ♡ 萌え萌え…きゅんっ♡」
清「飯を食うのが『萌え萌え…きゅんっ♡』なら、酒を飲んだら『よってきてニャン♡』か。」







