Synopsis
王宮料理長アルベルトは、国王から「誰も食べたことのない料理を作れ」と命じられる。だが晩餐会直前、頼みの高級食材が届かなくなってしまう。それでもアルベルトは諦めず、見習いのルカと共に市場へ向かい、誰も見向きもしない「規格外の食材」に目をつける。試行錯誤の末、身近な食材だけで極上の一皿を完成させた二人は、隣国との晩餐会でそれを振る舞う。料理は隣国の王の心を動かし、「友好の皿」と名付けられ、冷え込んでいた両国の関係修復のきっかけとなる。「最高級の食材=最高の料理ではない」という信念のもと、工夫と経験で食材を活かす料理人の姿と、師弟の絆を描いた物語。
Chapitre1
第一章 王宮料理長アルベルトの日常
王宮の厨房は、朝から蒸気と香りに満ちていた。銅鍋の底で骨がことこと煮え、パンの焼ける匂いが石壁に染み込んでいる。窓から差し込む朝日の中を、白い湯気がゆっくりと立ちのぼっていく。
「アルベルト料理長、本日のスープの味見をお願いします」
若い料理人に呼ばれ、アルベルト・グランは大鍋の前に立った。銀色の匙で一口すすり、しばらく黙る。周囲の料理人たちが息を詰めて見守る。厨房というのは不思議な場所で、料理長が一言も発しない数秒間が、誰かに叱られる十分よりも長く感じられる。
「悪くない。だが塩が半歩早い」
「半歩、ですか」
「塩は最後の最後に、味の輪郭を決めるために使うものだ。今入れたら、素材の甘みが隠れてしまう。土の匂いを塩で塗りつぶすのは、料理じゃなくて誤魔化しだ」
アルベルトは三十代前半、王国一の腕を持つ料理長でありながら、偉ぶったところがない。見習いたちには、いつもこう言って聞かせている。
「包丁の持ち方より先に、食材を見る目を覚えろ。食材の声が聞こえるようになったら、包丁は自然とついてくる」
彼にとって料理とは、格式でも見栄えでもない。
「食べる人が笑顔になるなら、それが一番の料理だ」
それが口癖だった。
だが、その考えは宮廷では少数派だった。王宮の料理とは、高級な食材、複雑な調理法、貴族らしい盛り付け、古くから伝わる作法――そういうもので評価されるのが常だった。銀の食器に金箔をあしらい、珍しい香辛料をこれ見よがしに使い、皿の上に彫刻のような盛り付けを施す。それが「格式高い料理」だとされていた。
美味しさよりも、格式。それが宮廷料理の掟だった。
アルベルトはその掟に静かに反発しながら、それでも毎日、厨房に立ち続けていた。反発するだけでは何も変わらない。だから彼は、腕で示すしかないと思っていた。
厨房の古参料理人であるマルコなどは、時折アルベルトにこう言うことがあった。
「料理長、宮廷の重鎮たちは、味よりも見栄えで判断しますぞ。もう少し、彼らの好むやり方に合わせては」
「マルコ、俺たちが作っているのは絵画じゃない。食べ物だ。見た目だけの料理は、いつか誰にも食べられなくなる」
そのたびにマルコは肩をすくめ、それでもどこかで料理長のやり方を面白がっているようだった。
Derniers chapitres
第八章 「友好の皿」と新しい料理人
実は、両国の関係は長らく冷え込んでいた。国境の問題、食料の問題、貿易の問題。互いに相手を警戒し合っていた。
しかし
第七章 王国最大の晩餐会
晩餐会当日。大広間には、隣国の王族、国内の貴族、商人、騎士、魔法使いなど、王国中の要人が集まっていた。シャンデリアの灯りが銀食器に反射し
第六章 ルカとともに料理を完成させる
晩餐会前日の夜、ついに一皿が完成した。
香草で焼いた鶏肉に、根菜のピューレを添え、小魚から取った濃縮ソース
第五章 試作と失敗
厨房に戻り、料理開発が始まった。
まずは小魚。そのままでは臭みが強すぎる。塩漬けにし、焼き、骨ごと煮込み、香







