Synopsis
高校二年の夏休み。
何となく毎日を過ごし、将来の夢も見つけられずにいた朝倉湊は、祖父母の暮らす田舎町を訪れることになる。
そこで出会ったのは、夏目透花という不思議な少女だった。
蝉時雨が響く古い神社。 ラムネを飲みながら語る夏の思い出。 川辺で交わす何気ない会話。
透花と過ごす時間は、退屈だったはずの夏を少しずつ特別なものへ変えていく。
しかし、楽しい日々の裏で、透花には誰にも言えない秘密があった。
彼女は、この夏が終わる頃には遠くへ行かなければならなかった。
そして湊は知る。
二人の出会いは偶然ではなく、十年前の夏に交わした小さな約束から始まっていたことを。
短い夏。 限られた時間。 それでも、胸に刻まれる大切なひととき。
これは、蝉時雨の中で出会った二人が、恋と別れを通して未来への一歩を選ぶ、ひと夏の青春恋愛物語。
Chapitre1
序章 蝉時雨の記憶
夏の終わりには、いつも同じ音が聞こえる。
蝉の声だ。
都会の街中では、ビルの隙間から聞こえる小さな鳴き声。
車の音や人の話し声にかき消されそうになりながら、それでも必死に存在を伝えるような声。
けれど、あの町で聞いた蝉の声は違った。
空いっぱいに響いていた。
木々の間を抜け、古い神社の石段を震わせ、まるで夏そのものが叫んでいるようだった。
僕は今でも覚えている。
あの日。
蝉時雨の中で出会った、一人の少女のことを。
小さなギャラリーの壁には、数十枚の写真が並んでいた。
風景写真。
街の写真。
人の写真。
その中でも、一番奥に飾られた一枚だけは、少し特別だった。
古い神社。
青く広がる夏空。
木漏れ日。
そして、こちらを振り返る少女の後ろ姿。
顔は写っていない。
けれど、僕には分かる。
この写真に写っている人が誰なのか。
写真のタイトルを見る。
そこには、こう書かれていた。
『蝉時雨の向こう側』
「……懐かしいな」
小さく呟く。
あれから何年経っただろう。
あの夏は、たった一ヶ月にも満たない短い時間だった。
けれど、僕の人生を変えるには十分だった。
もし、あの日あの場所へ行かなかったら。
もし、あの少女に出会わなかったら。
僕はきっと、今とは違う人生を歩んでいた。
窓の外から蝉の声が聞こえる。
僕は目を閉じる。
すると、あの夏の日差しが蘇ってくる。
「ねえ」
「蝉の声って、好き?」
あの少女は、突然そう聞いてきた。
そして僕は、そこから始まった夏を忘れることができない。
Derniers chapitres
終章
蝉が鳴き止む頃
夏が終わった。
透花がいなくなってから、町は少しだけ静かになった気がした。
第四章
最後の夏祭り
透花が引っ越す。
その事実を知ってから、僕の中で夏の景色が少し変わった。
第三章
忘れていた約束
夏祭りの翌日。
朝から雨が降っていた。
この町へ来てから、初めて見
第二章
君と過ごす夏の日々
翌朝。
目を覚ますと、聞き慣れない音が部屋の外から聞こえていた。
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