堀越優奈のOne-Flight-Love
Synopsis
堀越優奈。23歳。客室乗務員。航空会社の研修を無事終えての初の実践フライトを迎えた。ただ、彼女が就職先の航空会社には他にはない変わったサービスがあり、彼女はちゃんとお客様に満足できてもらえるのか不安がっていた。しかし、その後さまざまな経験を経て、彼女はとんでもない力を覚醒させてゆくことを彼女はまだ知るよしもない。
Chapter1
――第一話 スローな子、空へ急がされる
堀越優奈は、新品の制服バッグをゆっくり開いた。
黒い艶が、薄暗い更衣室の灯りを鏡のように跳ね返す。
「……あ、ビニールまだ残ってる」
彼女は指先で、スカートの裏地に貼った保護シールをそーっと剥がす。
シュッ、という小さな音。
同時に、甘いバラの香りが立ち上った。
ユイヴェルジュ航空の制服は、オレンジを基調に、胸元とスリットにグレーの曲線が入る。
生地は厚めのストレッチツイル。
光を含んで重い
――まるで濡れた羽根。
優奈はブラウスを肩にかけた。
襟ぐりが大きく開き、鎖骨の下まで覗く。
「……前って、こんなに空いてたっけ」
首の後ろで結ぶリボンは、サテンの赤。
蝶結びにすると、胸の谷間がぴたりと寄せられる。
――でも、寄せた分、上に押し上がる。
ブラジャーなしのふくらみが、布の内側でこねまわる。
「Jカップ……いや、重さだけじゃなくて、ぷよって厚み……」
彼女は両手で持ち上げ、布地に収めた。
指が離れると、
ぷるん、と音がしそうな勢いで、ブラウスが波打つ。
第三ボタンが、ちりちりと軋んだ。
スカートを履く。
ウエストは細め。
ヒップを通すたびに、黒い生地が「きゅっ」と張る。
スリットが左の太ももまで入っている。
歩けば、赤い裏地がチラリと覗く。
「……足さばき、こわいな」
彼女は小刻みに歩いてみる。
カーテンのレールが、レザーのベルトのように鳴る。
鏡を見る。
グレーとオレンジに包まれた体は、まるで大人のおもちゃ。
――飛行機、揺れるより私の方が揺れそう……。
自分の呟きに、また頬が火照る。
時計を見る。
朝6時5分。
ブリーフィングまで、あと4分。
「……あわわ」
優奈はハンガーを倒して、ケージュアルシューズを脱ぐ。
ヒールは8 cm。
黒いレザーに、オレンジのアンダーライン。
足を入れると、ふくらはぎがきゅっと引き締まる。
立ち上がる。
――重心、後ろに逃げてる……。
胸の重みが、背中へ流れようとする。
彼女は両手で受け止め、ドアを押した。
廊下は、まだ薄暗い。
カツ、カツ、カツ――先輩クルーの踵が遠ざかる。
「……ま、待ってください……!」
優奈は焦る。
焦りながら、足がもたつく。
スカートのスリットが、歩くたびに太ももを撫でる。
たぷん、たぷん、たぷん――。
ブラウスが波打ち、赤いリボンが跳ねる。
先輩が振り返る。
「堀越ちゃん、早く!三分切ってるよ」
「は、はいっ……!」
優奈は小走りに。
――でも、走れば走るほど、胸が遅れて追いかけてくる。
ボタンが悲鳴を上げ、スカートの裾がヒールに絡まる。
「……あ、あ、あ」
両手で胸を抑えながら、常人の歩く速度。
背後で別の先輩が、くすりと笑う。
「ビジネスクラスの‘天空の癒し’、30分コースだよね?
あの子、30秒で延長料金発生しそう」
「‘眺めだけ’で満足しちゃう客、出そうだな」
ブリーフィングルームの自動ドア。
優奈は「えいっ」と体重を乗せる。
――実は触れるだけで開くのに。
中で待つ副操縦士が、吹き出しそうになるのを堪える。
「……おはよう、堀越さん。奥の席、空いてます」
「あ、ありがとう……ございます」
お辞儀しようとして、額を枠にぶつけそうになる。
かぶせていた手が離れた瞬間、
ばよん、と胸が上下。
室内の男性クルー三人、同時に視線を逸らす
――逸らした先が、また優奈の胸へ戻る。
「……すみません」
彼女は椅子に腰掛けた。
座る動作もゆっくり。
スカートが這い上がり、黒いストッキングが光る。
メモ用紙を広げる。
白い紙が、胸の谷間に映る。
隣に座った宮坂先輩が、小声で囁く。
「ねえ、優奈ちゃん」
「は、はい……」
「今日、‘スペシャル’入る?」
「……え、と、30分延長、とか……」
「うん。NG項目、頭に入ってる? 暴力、暴言、撮影、外漏らし……」
「……はい。覚えて、ます……多分」
「‘多分’じゃ困るよ」
宮坂さんは苦笑いしながら、彼女の襟元を直す。
直したついでに、第三ボタンのつまみを隠すように指を滑らせる。
「あ、ん……」
小さな声が漏れる。
その声が、部屋の男たちの背筋をぴくりと動かす。
副操縦士が咳払いして、スクリーンを指した。
「……では、本日のフライトパスを」
話が進む。
優奈は必死でペンを走らせる。
でも、汗で指が湿る。
ペンが転がり、床へ――。
彼女は拾おうとして腰を浮かす。
その拍子に、胸がテーブルの端に「ぷにゅっ」と当たる。
テーブルが軋み、ペンが更に遠くへ。
「……はう」
赤くなって、拾いにいく。
しゃがむ。
スカートがたくし上がり、スリットから太ももが露になる。
立ち上がりざま、背中のチャックが「ぎいっ」と下がりかける。
「……あ、あわわ」
宮坂さんが素早く立ち上がり、背中を抑える。
「だ、大丈夫?」
「あ、ありがとう……ございます」
優奈は目を潤ませながら、再び座る。
ブリーフィングは終了だった。
廊下を進む。
優奈は胸を両手で包むように歩く。
歩幅が狭い。
だから、後ろから押される。
「おっと、堀越さん、道塞いでるよ」
「す、すみません……!」
脇に寄る。
寄った拍子、ドアの把手が胸の谷間に引っかかりかける。
「……はうっ」
小さく息を呑んで、体をひねる。
ひねった分、ヒールが「くるり」と絡まる。
「……あ、れ……?」
大の字に崩れかける。
後ろからスーツケースを押していた整備士が、あわてて支える。
「だ、大丈夫ですか!」
「あ、あの、すみません……足、絡まって……」
起き上がろうとして、スカートの裾を踏む。
スリットが開き、黒いストッキングが光る。
彼女は這い蹲り、スカートを直す。
直しながら、胸が「たぷん」と揺れる。
整備士は鼻血をこらえるように顔を上向け、
「……お気をつけて」
とだけ言って、逃げるように去っていった。
いよいよ搭乗橋。
風が吹く。
優奈は髪を押さえた。
髪を押さえた手が離れると、今度は制服のスカートが風を孕む。
「……あわわ……」
スカートがめくれかける。
彼女は両手で裾を押さえ、次に胸が「ばよん」と跳ねる。
どちらを押さえても、もう一方が暴れだす。
まるで、自分の身体が今日は機嫌が悪い。
「……お、おとなしく、してよ……」
胸に向かって小声で話しかける。
もちろん、胸は応えない。
代わりに、ブラウスの第三ボタンが「ぽきっ」と軽い音を立てて、内側へ跳ねた。
「……ん」
優奈は立ち止まる。
顔を赤くして、ボタンを探る。
ボタンは転がり、床のスリットから下へ――。
見下ろすと、スリットの下は雲海の始まりだった。
「……落ちた」
小さな音を立てて、ボタンは雲の中へ消えていった。
優奈は胸元を手で覆い、深く息を吸う。
吸って、吐く。
その間も、胸は上下にゆっくり揺れる。
宮坂さんが振り返って、にっこり笑った。
「さ、行くよ。お客様が待ってる」
「……はい」
優奈は小さく頷いた。
風が再び吹く。
制服の裾がはためき、胸のふくらみがぴったりと布地に張りつく。
彼女は一歩、踏み出す。
その一歩一歩が、まるで初めて歩く子供のように、ゆっくり、ゆっくり――。
搭乗橋の先、機内からは客のざわめきが漏れていた。
優奈は胸を押さえたまま、小さく呟く。
「……がんば、る……」
声は風に乗って、雲へ消えた。
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それは、夜の闇がもっとも深く、同時に「朝」という暴力的なまで







