屋根裏の謎(『幻想郷の秘宝』2)-“お題チャレンジ #11:「禁忌のミステリー」屋根裏の死体”
简介
ある冬休みの朝、異常な寒さを感じ、小清水由美は目を覚まします。不審に思った由美が屋根裏に昇ると果たしてそこには……!?
『幻想郷の秘宝幻想郷の秘宝-“ベンチマーク小説企画 #12:「万霊のバザール」”』の続編にあたります。 “お題チャレンジ #11:「禁忌のミステリー」屋根裏の死体”応募作品です。
今日のテーマ: 「禁忌のミステリー」 お題チャレンジ #11:「禁忌のミステリー」屋根裏の死体
章節1
第一章:ひときわ寒い朝
幻想郷での冒険から帰還し、小清水由美と相田里子の日常は、まるで何もなかったかのように再び回り始めていた。魔法も、妖怪も、すべては遠い夢の出来事。そう、頭では理解していたはずだった。
季節は巡り、カレンダーは最後の数枚を残すのみ。冬休みに入ってすぐの、ひときわ冷え込む朝のことだった。
「……寒い」
羽毛布団の城に立てこもっても、防ぎきれない寒気が由美の身体を苛んでいた。それは単に冬の寒さというだけではない。どこか芯を凍らせるような、質の悪い、粘着質な冷気。由美はもぞもぞと身体を動かし、その根源を探った。隙間風だろうか。いや、違う。この部屋の窓は、去年ペアガラスに替えたばかりだ。
冷気の源は、上からだった。
由美の部屋の真上は屋根裏部屋になっている。物置として使われているそこは、父親がたまに古い雑誌を探しに行くくらいで、普段は誰も立ち入らないはずの空間。そこから、まるで氷の塊でも置かれているかのように、じわりじわりと冷気が染み出してきているのだ。
「……気のせい、かな」
自分に言い聞かせる。だが、一度気になると、もう駄目だった。幻想郷での経験が、由美の感覚を以前より過敏にさせているのかもしれない。常識では片付けられない出来事への、一種のアンテナ。それが、不吉なシグナルを捉えて離さない。
胸の谷間で静かに青い光を放つラピスラズリの首飾りを握りしめ、由美は覚悟を決めてベッドから這い出た。パジャマ一枚では心許ない。カーディガンを羽織り、眼鏡をかけ直す。そして、部屋の隅に設えられた、天井へと続く折り畳み式の梯子を見上げた。
ギシ、ギシ、と気乗りのしない音を立てて梯子が伸びる。屋根裏の入り口である天板を押し上げると、澱んだ空気と共に、さらに濃密な冷気が顔に吹き付けた。埃と、そして、嗅いだことのない微かな甘い香りが混じっている。
一歩、また一歩。梯子を登り、屋根裏に頭を出す。薄暗い空間に、窓から差し込む冬の弱い光が、埃をきらきらと乱舞させていた。古い家具や段ボール箱が作る影が、まるで巨大な獣のようにうずくまっている。その、影と影の間に。
「――え?」
由美は目を疑った。
そこには、人が横たわっていた。
見覚えのない女性だった。ややふっくらとした、柔らかそうな輪郭。穏やかな寝息でも聞こえてきそうな顔つきで、目を閉じている。薄紫色の髪が、薄汚れた床に静かに広がっていた。白と青を基調とした、どこか異国の民族衣装のような服。
「……あの、大丈夫ですか?」
声が震える。返事はない。不法侵入者? それにしては、あまりに無防備すぎる。それに、この真冬に、こんな場所で眠りこけているなんて、どう考えてもおかしい。
由美は恐る恐る、埃っぽい床に膝をつき、女性に近づいた。その指先に、そっと触れてみようとした。
その瞬間。
「――っひ!」
触れる直前で、由美は悲鳴と共に手を引っ込めた。
体温がない。
いや、違う。それどころではない。まるで、上質な大理石の彫像に触れようとしたかのような、絶対的な冷たさ。命あるものの温かみが、そこには一片も存在しなかったのだ。呼吸をしている様子もない。胸はぴくりとも動かない。
血の気が、さあっと引いていく。脳が、目の前の光景を理解することを拒絶する。だが、本能が警鐘を乱打していた。
死んでる。
この人、死んでる。
「し……、死んでる!?」
思考が言葉になった瞬間、恐怖が堰を切って全身を駆け巡った。心臓が氷の爪で鷲掴みにされ、全身の筋肉が硬直する。
その、直後。
由美の太ももの付け根で、きゅっと張り詰めていた何かが、ぷつりと切れた。
下腹部に意識が向いた時には、もう遅かった。じんわりと、パジャマのズボンに温かい感触が広がる。自分の意思とは無関係に、身体が恐怖に屈した証。
「あ……うそ……」
恐怖と、それを上回る羞恥で、由美の顔が真っ赤に染まる。屋根裏の冷気も、目の前の死体も、一瞬だけ意識の彼方に飛んだ。この歳になって、お漏らし。しかも、ほんの少しチョロっと出た、というレベルではない。きゅうぅっ、と下腹部に力を込めるが、恐怖で緩んでしまった膀胱括約筋は、もう一度小さく裏切りの熱を放った。
パニックに陥った頭では、もはやまともな判断などできはしない。ひとまず、この場から離れなければ。由美はもつれる足で後ずさり、梯子にへばりつくようにして屋根裏から脱出した。
自分の部屋に戻り、濡れたパジャマの感触に改めて自己嫌悪がこみ上げる。それと同時に、身体の芯が冷え切っているせいか、先ほどとは比べ物にならないほど強い尿意が下腹部を圧迫し始めていた。まずい。これは、本格的にまずい。
由美は顔面蒼白のまま、太ももを内側にきつく締め、小走りにもならない奇妙な足取りでトイレへと向かった。
鍵を閉めるのももどかしく便座に座り、恐る恐る力を抜く。
「んっ……ふぅ……っ」
途端に、安堵のため息と共に、熱い奔流がほとばしり出た。ちょろちょろ、ではない。勢いの良い水流が、シャーッという盛大な音を立てて便器を叩く。止まらない。まるで身体中の水分がすべて流れ出てしまうのではないかと思うほど、それは長く、そしてたっぷりと続いた。
「はぁ……っ、んん……」
冷え切った身体に溜め込まれていたものが、すべて排出されていく。恥ずかしさと、抗いがたい生理的な快感が入り混じった感覚に、由美は便座の上で小さく身悶えた。恐ろしいものを見てしまったショックで、身体の制御が利かなくなっているのかもしれない。ようやく勢いが弱まり、最後の数滴が雫となって落ちる頃には、由美の足はがくがくと震えていた。
「……しっかりしなきゃ」
自分に言い聞かせ、トイレットペーパーで後始末をする。そして、脱衣所へ向かい、汚れてしまったパジャマを洗濯機に放り込んだ。濡れた下着を脱ぎ捨てると、豊満な胸と大きく揺れるお尻が、冷たい空気の中に無防備に晒される。
シャワーのコックを捻り、熱い湯を頭から浴びた。ごしごしと、ボディソープを泡立てて身体を洗う。まるでお漏らしの痕跡と、恐ろしい記憶を一緒に洗い流してしまおうとするかのように。蒸気が鏡を曇らせ、浴室全体が現実から切り離された聖域のように感じられた。
だが、シャワーを止めてしまえば、現実はすぐに追いかけてくる。
屋根裏の、あの冷たい女性。
どうしよう。
普通に考えれば、警察に連絡するのが筋だ。救急車かもしれない。いや、もう手遅れなのは明らかだ。となると、やはり警察。
しかし、由美の思考はそちらへは向かわなかった。
あの冷気。あの、人間離れした絶対的な冷たさ。あれは、こちらの世界の常識で計れるものではない。幻想郷で体験した数々の異常事態が、脳裏をよぎる。
警察に、何て説明すればいい?屋根裏に見知らぬ女性の死体がありました。でも、なんだかすごく冷たいんです――なんて。きっと、頭がおかしいと思われるだけだ。
違う。こういう時、頼るべき相手は一人しかいない。
幻想郷での冒険を共に乗り越えた、唯一無二の親友。
「……里子ちゃん!」
そうだ、里子ちゃんを呼ばなきゃ。彼女なら、きっと一緒に考えてくれる。この異常事態を、ちゃんと「そういうこともあるよね」と受け止めてくれる。
由美はバスタオルで乱暴に身体を拭くと、急いでクローゼットから下着と部屋着を引っ張り出した。豊満な胸がブラジャーに収まり、柔らかなお尻がショーツに包まれる。その上にセーターとスウェットパンツを履く。髪が濡れているのも、もどかしい。
スマートフォンを掴むと、震える指で電話帳を開き、一番上にある名前をタップした。
「……お願い、出てっ!」
数回のコールの後、聞き慣れた親友の明るい声が、スピーカーから聞こえてきた。
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