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水魔法使いと風のエルフの旅立ち

水魔法使いと風のエルフの旅立ち

更新時間: 2026-01-06 01:53:19
語種:  日本語4+
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简介

「はぁ……暑い……水、もうあんまりないのに……」 不意に、背後で空気が揺れた。獣とは違う、もっと狡猾で悪意に満ちた気配。由美がはっとして振り返ると、そこには醜悪な笑みを浮かべたゴブリンの群れがいた。錆びた剣や棍棒を手に、涎を垂らしながらじりじりと距離を詰めてくる。 ―—もう、だめ。 由美が固く目を瞑った、その瞬間だった。 ヒュッ、と空気を切り裂く鋭い音が響き、棍棒を振り上げたゴブリンの喉に銀色に輝く矢が深々と突き立った。悲鳴を上げる間もなく、ゴブリンは仰向けに倒れる。間髪入れず、矢継ぎ早に放たれる矢が、次々とゴブリンたちを射抜いていく。その様は、まるで天からの裁きの光のようだった。 ――ゴブリンの群れに襲われていたうら若き乙女を救ったのはエルフの乙女。 この偶然の出会いが呼び水となり、やがて二人の乙女は大きな戦いに身を投じることとなる――


章節1

第1章:二人の乙女の出会い


陽炎が立ち昇り、地平線を歪ませる。エアリドールの陽灼け平原と呼ばれるこの土地には、生命の息吹を拒むかのような乾いた風が吹き荒れていた。その中を、一人の旅人が歩みを進めていた。“水魔法使い”の由美である。


「はぁ……暑い……水、もうあんまりないのに……」


艶のある茶色の長い髪は汗で肌に張り付き、普段は知的な印象を与える眼鏡も、己の体温でうっすらと曇りがちだった。彼女が身に纏っているのは、魔法が付与された涼感素材のシルクの衣装だが、その大胆なデザイン――豊満な胸元を惜しげもなく晒し、しなやかな腰のラインを強調する――も、この酷暑の前では気休めにしかならない。B100、H105と、神が意匠を凝らしたとしか思えぬ肉体は、今はただ熱を蓄えるばかりだった。


「街に着いたら、絶対……絶対、キンキンに冷えたアイスコーヒーと、肉汁たっぷりの串焼きを食べるんだから……」


誰に聞かせるともなく呟き、由美はぺろりと乾いた唇を舐めた。師匠に頼まれた珍しい薬草を求め、囁きの森を目指しているが、少しばかり自分の持久力と、この平原の過酷さを見誤ったらしい。お人好しで、少し世間知らずな彼女の性格が、こんな状況を招いていた。


不意に、背後で空気が揺れた。獣とは違う、もっと狡猾で悪意に満ちた気配。由美がはっとして振り返ると、そこには醜悪な笑みを浮かべたゴブリンの群れがいた。錆びた剣や棍棒を手に、涎を垂らしながらじりじりと距離を詰めてくる。


「ヒヒッ、上玉だぜ」

「うまそうだなぁ、柔らかそうだ」


下品な言葉が、熱風に乗って耳に届く。由美の顔から血の気が引いた。恐怖に足が竦むが、ここでやられるわけにはいかない。彼女は震える手で腰に下げた杖を握りしめ、もう片方の手の指輪に意識を集中させた。


「来ないで!…《ウォーター・バレット》!」


指輪の青い宝石が輝き、杖の先から水の塊が弾丸のように射出される。先頭にいたゴブリンの一体に直撃し、鈍い音を立てて吹き飛ばした。しかし、怯んだのは一瞬だけ。残りのゴブリンたちは、さらに目を血走らせて襲い掛かってきた。


「きゃっ!《ウォーター・シールド》!」


咄嗟に水の障壁を展開するが、ゴブリンたちの猛攻に障壁は激しく震え、表面に次々と亀裂が走る。多勢に無勢。魔力の消耗も激しい。じりじりと後退る由美の背に、乾いた岩がごつりと当たった。退路はない。ゴブリンの一匹が、下卑た笑い声をあげると、由美の服を乱暴に引っ張り、布が引き裂かれる音がいやに大きく由美の耳に響いた。


―—もう、だめ。


由美が固く目を瞑った、その瞬間だった。


ヒュッ、と空気を切り裂く鋭い音が響き、棍棒を振り上げたゴブリンの喉に銀色に輝く矢が深々と突き立った。悲鳴を上げる間もなく、ゴブリンは仰向けに倒れる。間髪入れず、矢継ぎ早に放たれる矢が、次々とゴブリンたちを射抜いていく。その様は、まるで天からの裁きの光のようだった。


呆気に取られる由美の目に、一人の女性の姿が映った。陽光を反射して輝く金色の長い髪、獲物を射抜く鷲のような鋭い青い瞳。体にぴったりとフィットした革の鎧は、その驚異的な肉体美――由美に勝るとも劣らない、B110の豊満な胸と引き締まった腰――を強調していた。風のエルフ、ベティだった。


残ったゴブリンたちが、突如現れた脅威に雄叫びを上げてベティに殺到する。ベティは背中の弓を放り投げると、腰から銀の鎖で繋がれたフレイルを抜き放った。鎖が唸りを上げ、先端の鉄球がゴブリンの頭蓋を砕く。骨の砕ける生々しい音と、肉の潰れる音が辺りに響く。それは、由美の使う魔法とは全く質の違う、純粋で圧倒的な暴力だった。舞うように敵の攻撃を躱し、的確に急所を破壊していく。その姿は、恐ろしくも、神々しいほどに美しかった。


最後のゴブリンが首の骨を折られて絶命すると、戦場に静寂が戻った。ベティは油断なく周囲に視線を巡らせ、脅威が完全に去ったことを確認すると、フレイルから血を振り払い、静かに腰に戻した。そして、岩を背に座り込んでしまった由美の方へ、ゆっくりと歩み寄る。


「大丈夫か?」


凛とした、低く落ち着いた声だった。由美は、目の前の圧倒的な存在に見惚れ、声も出せずにただこくこくと頷いた。


「は、はい!ありがとうございます!あの、あなたは…?」


ようやく絞り出した声は、自分でも情けないほど上擦っていた。ベティは由美の全身を一瞥し、大きな怪我がないことを確認すると、短く告げた。


「ベティだ」


そう名乗る彼女の視線が、足元に転がるゴブリンの死体に向いた。ゴブリンが握っていた粗末な鉄の斧を、ベティがブーツのつま先で無造作に転がす。その時、彼女の脛が、わずかに斧の刃に触れた。


瞬間、ベティの動きがぴたりと止まる。彼女の肩が微かに強張り、形の良い頬にさっと朱が走った。どこか居心地悪そうにすっと身を捩り、太腿のあたりを落ち着きなく動かしている。


「あの…どこか、お怪我を…?」


由美が心配して尋ねるが、ベティは首を横に振った。


「いや、何でもない」


ぶっきらぼうに答え、ベティは何事もなかったかのように再び由美に向き直る。「それで、お前はここで何を?こんな場所を一人で旅するとは、無謀か、よほどの自信家だな」


「あ、いえ、その……わ、私は由美と言います。師匠のお使いで、この先にある囁きの森に薬草を採りに……」


由美の言葉に、ベティの青い瞳がわずかに見開かれた。「囁きの森だと?奇遇だな。私もそこに向かっている」


「えっ、本当ですか!?」由美は思わず声を上げた。「ベティさんも、薬草を?」


「いや、私は狩りだ。珍しい獣の足跡を追ってきた。どうやら森に逃げ込んだらしい」


それを聞いた由美の心に、ぱっと光明が差した。これほど強い人が一緒なら、もうゴブリンに襲われる心配もないだろう。何より、この人をもう少し見ていたい、話してみたいという強い気持ちが湧き上がっていた。お人好しで、人を疑うことを知らない由美は、満面の笑みで提案した。


「あの!もし、よかったら……森までご一緒しませんか?一人より二人の方が、きっと安全です!」


ベティは、真っ直ぐな瞳でこちらを見る由美を、しばし黙って観察していた。その目に宿るのは、計算も下心もない、純粋な好意と懇願の色だけだ。ベティはふいと視線を逸らすと、小さく、だがはっきりと頷いた。


「……そうだな。わかった」


「本当ですか!?ありがとうございます!」


由美は心からの感謝を示すために、杖をそっと掲げた。指輪が再び輝き、彼女の掌の上に、透き通った水の球がふわりと浮かび上がる。それはただの水ではなかった。魔力によって極限まで冷却され、清められた、極上の癒やしの水だ。


「どうぞ。お礼です」


差し出された水の球を、ベティは少し驚いた顔で受け取った。掌に伝わる心地よい冷たさに、彼女の厳しい表情がほんの少しだけ和らぐ。


陽は西の空に傾き、陽灼け平原を茜色に染め始めていた。酷烈な日中の暑さが嘘のように、涼やかな風が吹き始める。


由美とベティ。出会ったばかりの二人は、どちらからともなく歩き出した。目指すは、地平線の先に黒い影として横たわる、囁きの森。


小柄で曲線的な人間の魔法使いと、長身で強靭なエルフの戦士。対照的な二つのシルエットが、長く伸びる影を引きながら、広大な大地に吸い込まれていった。

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