Tóm tắt
深夜の通話アプリ、いつも通りのゲーム談義。はずみで開いた怪しいスプレッドシートが、4人のオタク女子を『愛の迷宮でつかまえて』のセカイへ誘い込んだ!
目の前に現れたのは、推しキャラの姿をした――昨夜まで一緒に通話していた友人たち!?
「誰か一人を選ぶなんてケチなこと言わないで、全員同時に攻略しちゃえばいいんじゃない?」
アクション、資金洗浄、シベリアの永久凍土級の詩的テロ。ジャンルの壁を軽々とブチ破る、前代未聞の「同担攻略大作戦」が今、幕を開ける!
Chương1
『愛の迷宮をハックせよ ——同担攻略大作戦——』
プロローグ:降臨前夜
深夜零時過ぎ。 スマホの画面越しに、私たちはいつも通りのバカ話を繰り広げていた。
「ねえ、聞いてよ。『愛の迷宮でつかまえて』の新イベントさ、また主人公が全財産をスロットに突っ込むギャンブルエンドが用意されてるんだけど」
通話アプリの向こう側、いつもの仲間たちがそれぞれ絶妙な間と呼吸で相槌を打つ。
「正気かよ。そこは一文無しからの這い上がりを描くべきだろ。アタシがシナリオ書くなら、オープニングでいきなり推しをバク転で避けさせるわ」
ルカのハスキーでボーイッシュな声が弾む。彼女が繰り出すアクションのスピード感とノリの良さは、いつも私たちの会話の起爆剤だ。
「お待ちになって、ルカ。そんな粗野な展開では美学がありませんわ。資金洗浄ならわたくしにお任せを。スイス銀行の口座を今すぐ三つほど用意して、推しに札束のプールをプレゼントいたしましょう」
チヒロの優雅で落ち着いた声に続き、ふわりと軽やかなライミングが重なる。
『回すぜマネー、掴むぜハネムーン/推しのハートを撃ち抜く弾丸はブーン!』
「……二人とも、少しペースを落としなさい。今のくだりは会話の『間』が全く無視されています」
最後に、真面目すぎるツッコミ担当のコトネが、低く論理的な声で全体の構成を締める。彼女の冷静な分析力がなければ、このカオスな四人の会話が一瞬で収拾不能になるのは目に見えていた。
お笑い的な掛け合いのテンポ、アクションの疾走感、そして無駄にセレブな美学。ジャンルを軽々と飛び越えて意気投合した私たちは、界隈でも知られた「最高のオタク仲間」だった。
「——ねえ、みんな」
ふと、コトネの声のトーンが変わった。
「『全国版攻略情報スレ』に、見慣れないスプレッドシートが貼られてるんだけど……これ、『乙女ゲーの攻略対象に、自分たちのネタを無理やり仕込む』ってタイトルなんだけどさ」
そのリンクを開いた瞬間、視界の端が虹色に爆ぜた。 機械油の匂い、冷たい夜風、そして真っ白い薔薇の香りが一気に混ざり合う。
「は?」
声に出したのも束の間、私たちの背中は重力を失い、めくるめく異世界のステージへと吸い込まれていった——。
Scene 01:深夜の通話と白い薔薇
深夜零時。
枕元のスマートフォンがじわりと熱を持つ。布団を頭まで被ったまま、莉緒は画面の向こう側に向かって小さく呟いた。
「ねえ、聞いてよ。『愛の迷宮でつかまえて』の新シナリオ、また死亡フラグ立ててるんだけど」
通話アプリの向こうから、無造作に頷く息遣いが聞こえる。画面上の赤色ランプが等間隔に明滅していた。三人分の呼吸が、藁にもすがるような共感を寄せて返ってくる。
「ヒロイン、宮廷舞踏会で一人だけスリッパ片方失くすんだよね。あれ、訳わかんない」
「で、翌朝騎士団長が届けてくれるの。『ガラスの靴、落とされましたよ』って。はあ?」
「なんでそこ王宮の警備が機能してないの。シューズロストどころかセキュリティロストじゃん」
四人の笑い声が、夜の静寂を引き裂く。アイマスクも無意味なほどの眩しさだ。莉緒がごろりと寝返りを打つと、夏用の掛け布団が足先からずり落ちた。
「でもさ、俺たちの推し、騎士団長シルヴェスター様が今回もガチでキレッキレじゃね?」
ルカの声だ。明るい。昼間はスーパーでバイトをしている。
「推しが毎回ヒロインに優しすぎるんだよ。話かけられただけで心拍数やばいわ。バカじゃねえの?」
チヒロの声。低めで、妙に落ち着いている。経済学部らしい冷静さだ。
「……ところで、コトネ、黙ってない?」
「うん。聞いてる。二次創作のネタをひねってる」
コトネの静かな応答で、全員の生息が確認できた。深夜の集合。ゲームの愚痴を肴に、彼女たちは各々の指をスマホ画面に滑らせる。莉緒がリビングのソファから伸びをすると、けだるい眠気の欠片が、ふと首筋を流れた。
「——ちょっと待って」
コトネの声が突然、真剣味を帯びた。ごくりと唾を飲む音も聞こえた気がする。
「『全国版攻略情報スレ』に新スレ立ってるんだけど……これさ。『元同担全員、乙女ゲーに集合』。……同担、って」
検索画面を開くまでもない。ゲーム内の大型アップデートか。システムの案内もなく、急に画像だけが浮かぶ。虹色の光。
その時だった。
莉緒の視界の端が、ぶわりと滲む。スマホの画面が白く爆ぜた。部屋の蛍光灯が輪郭を失う。色が反転し——浮き上がる。薔薇の香り。
現実の臭いはしない。機械油と猫の毛と、夜の湿度。それがすべて、真っ白い薔薇の花びらの匂いに置き換わる。
「は?」
声に出したのは莉緒。しかし確かめる間もなく、彼女の背中は重力のない空間へ溶け込んでいた。意識が遠くて——ああ、これは夢だ。スマホを握ったまま、眠ってしまったんだ。
それにしては、風が冷たすぎる。
目を開ける。
そこは薔薇園だった。
視界いっぱいに、白い薔薇。白石のアーチに白い花房が垂れ、その向こう、深緑の芝生がどこまでも続いている。出会ったことはない、ひんやりとした月光のような空気が混じっている。遠くに、噴水が高く水を上げていた。
膝から崩れそうになる。いや、実際崩れた。パジャマだったはずの脚には、薄緑のワンピースとヒール。スマホを死ぬほど握りしめていたはずの手に残るのは、草木の匂いだけ。
「えっ……何。嘘。……地図、出せよ。ナビ起動」
見たこともない世界に、かける言葉なんてそれくらいしかなかった。
Scene 02:陽気な刺客、フィリップ
「ヘイ! ハロー! レディ!」
現れるなり、フィリップは指をパチンと鳴らした。その笑顔は太陽のように眩しい。けれど、そのテンションは明らかに場違いなものだった。
莉緒が言葉を発するより早く、フィリップは軽快なステップを踏みながら、あっという間に距離を詰めてくる。靴底が芝生を叩くたびに、薔薇の花びらが嵐のように舞い上がった。
「待たせたな、俺のジュリエット! しかし残念! ここは王道の壁ドンでスチルを回収するシーンじゃあない!」
壁ドン? スチル? ゲーム用語が本人の口から飛び出す。
フィリップは莉緒の目の前でピタリと止まると、ウインクを一つ。
「そう! 今はアドリブでデュエットダンスを踊り、互いの魂のヴァイブスを高め合うターンだぜ、ヒャッハー!」
なんだこのアメリカンなノリは。莉緒は完全に思考停止していた。ゲームのフィリップは、もっとクールでどこか影のある公爵令息だったはずだ。目の前の男は、まるでブロードウェイの舞台から飛び出してきたような、陽気すぎる別人だった。
フィリップは莉緒の手を引くと、くるくるとターンさせる。
「さあさあ、音楽がなくたって心はビートを刻んでるだろ? ワン、ツー、スリー!」
「(乙女ゲームのヒロインが、初対面の男といきなりタップダンス踊るわけないでしょ……!)」
心の中のツッコミは、声にはならなかった。
Scene 03:金と扇子とリュシアン
莉緒がフィリップの陽気な暴走に翻弄されていた、その時。
すっ、と二人の間に滑り込むように、新たな人影が現れた。
絹のような黒髪。切れ長の涼しげな目元。非の打ち所のない立ち姿でそこにいたのは、生徒会長のリュシアンだった。ゲーム内では、厳格で知的なキャラクターとして圧倒的な人気を誇っている。
リュシアンは、フィリップによって荒らされた庭園を一瞥し、扇子を優雅に広げた。
「……ふっ。騒がしいとは思っていましたが。フィリップ、あなたでしたのね」
「よう、リュシアン。お前もこのレディに用かい? 悪いが、今は俺と彼女の情熱的なダンスタイムなんでね!」
「ダンス? この荒れ果てた場所で?」
リュシアンは扇子で口元を隠し、静かに言い放った。
「ご心配なく。そこの移動ルート、および損壊した庭園一帯の土地。たった今、丸ごと買い取りましたので」
「…………はい?」
莉緒の口から、素っ頓狂な声が漏れた。
「イベント進行のご都合? 問題ありませんわ。全て、金で解決いたしますが何か?」
スケールが、おかしい。一介の生徒会長が口にするには、あまりにも現実離れした経済ボケだった。
リュシアンが指を鳴らすと、どこからともなく黒服の男たちが現れ、札束でフィリップの顔を叩き始めた。フィリップはそれを華麗なステップで回避している。莉緒はもう、何が何だかわからなかった。
Scene 04:銀髪の憂愁、シルヴェスター
庭園がカオスと化した、その瞬間。
ふ、と周囲の空気が凍りついた。気温が数度下がったような肌寒さを感じる。
舞っていた花びらが動きを止め、全員の視線が一点に注がれた。
そこに立っていたのは、銀色の髪を風に揺らす、クールな美貌の青年。騎士団長のシルヴェスターだ。その蒼氷の瞳は、この世の全てを憂うかのように静かな光を宿していた。
「おっ、シルヴェスター! いいリアクションじゃん!」
「あなたも来ましたのね。ちょうどいいわ、ついでにこのあたりの空域も買っておきましょうか」
はしゃぐフィリップとリュシアン。しかし、シルヴェスターは一ミリも笑みを見せない。ただ静かに、朗々と響く声で言った。
「……静まりなさい」
その一言で、場の空気が支配される。シルヴェスターはゆっくりと莉緒の方へ歩み寄ると、その前に片膝をついた。完璧な騎士の礼。しかし、その表情は悲壮感に満ちている。
「彼の地平線の彼方で、私たちの愛する推しカプの未来が、寒風に凍えて泣いています」
……は? 推しカプ? 莉緒の思考回路が、完全にショートした。
Scene 05:過ぎる違和感
「な、なんなんだ、この変なイケメンたちは……!」
莉緒が頭を抱えてしゃがみこむと、三人はピタリと動きを止め、静かに莉緒を取り囲んだ。
「どうしたんだい、レディ。そんなに怯えた顔をして」
フィリップが眩しい笑みを向けてくる。そのあまりにフランクなツッコミの間合いに、莉緒は目を凝らした。
(この雑談のテンポ……さっきまで通話で『スチル回収』って叫んでたルカに似て……?)
「おや、僕の顔に何かついていますか?」
リュシアンが扇子を閉じる。その冷徹なまでの効率主義と「薔薇園を買い取る」というぶっ飛んだ発想。昨夜、チャットで「効率厨すぎて草」と笑い合っていたチヒロの顔が脳裏をよぎる。
「……静かに。彼女が混乱している」
低いトーンで言ったシルヴェスター。「シベリアの永久凍土」というワードのチョイスは、文学少女であるコトネのそれに不気味なほど一致していた。
三人のイケメンから発せられる、あまりにも見慣れた「オタク特有の空気感」。
だが、目の前にいるのは美形NPCの攻略対象だ。そんなバカなことがあっていいはずがない。莉緒は頭を振り、疑念を無理やりねじ伏せた。
「い、いや、何でもないです……! それより私、早く現実に戻らなきゃいけないんで、適当に好感度上げて終わらせてください!」
莉緒が叫ぶと、三人は「ふむ?」と意味深な笑みを浮かべた。その瞳の奥にあるのは、プログラムではない「同じ痛みを分かち合うオタクの目」だった。
Scene 06:同担たちの誓い
代表するように、フィリップがひそひそと小声で耳打ちしてきた。
「ってかさ、莉緒」
「え、なんで私の名前を……?」
「お前もしかして、夜中の通話で『あのイベントの作画は解釈違い』って叫んでた奴か?」
その言葉に、莉緒の全身を電流が貫いた。
「やっぱり! このアメリカンなノリ、アタシだって好きでやってるわけじゃないんだからね!」
「わたくしもですわ。こんな成金ムーブ、本当は解釈違いですのよ」
「私の推しカプは……シベリアの永久凍土で春を待っている……」
フィリップの中身は、ボーイッシュな友人・ルカ。
リュシアンの中身は、芯の強い友人・チヒロ。
シルヴェスターの中身は、文学少女の友人・コトネ。
攻略対象の中身は、全員昨夜まで一緒に盛り上がっていたオタク仲間だったのだ。
「……ルカ! チヒロ! コトネ!」
「「「よっ!」」」
緊張感はゼロになった。元女子四人による緊急会議が開催される。
「ていうか、早く現実(推し活現場)に帰りたいんだけど!」
「ほんとそれ。次のソシャゲイベ、走らないといけないのに」
目の前に現れたシステムウィンドウには【攻略対象の好感度をMAXにしてください】の文字。誰か一人と恋人同士にならなければならないらしい。
「えー、無理でしょ」と嫌がる面々。そこで莉緒は悪戯っぽく笑った。
「誰か一人、なんてケチなこと言わないで。全員、同時に攻略しちゃえばいいんじゃない?」
「なるほど。システムに想定外の負荷をかける、と」
「……愛の、飽和攻撃」
三人の好感度を同時に100%まで叩き上げて、システムをバグらせる。
四人の圧巻たる舞台的シンクロ率が、今、ステージを掌握し始めた。
Scene 07:胸キュン(不可避)の個別ルート
学園祭の準備期間。現実へ帰るため、莉緒はそれぞれの個別ルートへ足を踏み入れた。
まずは、フィリップのダンス練習に付き合う放課後。
旧講堂のステージで、フィリップは額に汗を浮かべながら何度もステップを踏んでいた。
「くそっ、このリズムの取り方、さっきから微妙にズレるな……」
いつもの陽気さはどこへやら、真剣な顔つきで床を見つめる横顔は、見慣れたルカでありながら、ドキッとするほど端正な青年だった。
「ほら、ワン・ツー。焦らないで、俺に身を委ねてごらん」
至近距離で見つめられ、莉緒は思わず息を呑む。(……待って、これ普通にキュンとするんだけど……!)
彼の手のひらは、ダンスの熱気でじわりと濡れていた。その温かさが、莉緒の掌から胸元へと伝わってくる。
フィリップの好感度ゲージが跳ね上がった。
次は、生徒会長リュシアンの執務室。
夜遅くまで予算書と格闘するリュシアンに、莉緒は温かいミルクティーを差し入れた。
「……ありがとう。君がこういう気遣いをしてくれるなんて、想定外だったわね」
マグカップを両手で包み込み、ふっと和らぐ無防備な横顔に、莉緒の胸がトクンと鳴る。
眼鏡の奥の瞳が、ふわりと細まる。その瞬間、莉緒は「あ、この人、本当はすごく優しいんだ」と、改めて気づかされた。
リュシアンの好感度ゲージが優雅に上昇した。
そして、夜警パトロール中のシルヴェスター。
ひんやりとした夜風に身震いする莉緒に、彼は無言で自身の重厚な白いマントを羽織らせてくれた。
「……シベリアの風に比べれば大したことないが。君が風邪をひいたら支障が出る。……ただ、それだけだ」
不器用な優しさに、莉緒は赤くなる顔をごまかすように下を向いた。
マントの重みが、肩に優しくのしかかる。彼の匂い——雪と鉄と、どこか懐かしい本の頁のような香りが、莉緒の鼓動を早らせた。
シルヴェスターの好感度ゲージも限界値へと近づいていく。
「……あれ? 私たち、ちゃんと真面目に攻略されちゃってない……?」
Scene 08:システム限界突破(オーバーフロー)
学園祭直前、システム管理AIは冷や汗をかいていた。
【警告:システム異常検知】
•フィリップ卿 好感度:98%(『一緒にタップで地球を回す』概念により限界突破の予兆)
•リュック生徒会長 好感度:99%(全財産寄付および敷地私物化によりバグ発生中)
•シルヴェスター騎士団長 好感度:97%(シベリアの幻覚を見せる詩的テロにより計測不能)
【エラーコード:OTA-0810】
【理由:想定外のテンションと、劇的すぎるシンクロ率が高すぎて干渉できません】
コンソール全体が虹色の光に包まれ、演算回路がショートを起こし始めていた。
Scene 09:レビュー風カオスショー
舞台は、学園祭のメインステージ。
三方向からスポットライトに照らされ、フィリップ、リュシアン、シルヴェスターが登場する。
「レディース&ジェントルメン! 今宵は俺たちのショーへようこそ!」
フィリップのジャズステップ。リュシアンが扇子を振ると、空から舞い散る金の紙吹雪(土地の権利書)。シルヴェスターがマイクを握り、背景の巨大モニターに映し出されるオーロラとブリザードの中で愛を歌い上げる。
圧倒的なビジュアルと、最高にバカバカしいパフォーマンス。莉緒はその中心で、フィリップと手を取りターンし、権利書を浴び、シルヴェスターの歌声に合わせて天を仰いだ。
観客席からは、悲鳴のような歓声が上がる。「なにこれ、最高にカッコいい!」「権利書が降ってきた! 俺、拾った!」「シルヴェスター様の歌声で、心が溶ける……!」ペンライトの海が、ステージを照らす。その光は、まるで星屑のようだった。
それはもはや攻略シーンではなく、最高峰のグランド・レビューであり、完全無欠のカオス空間だった。
ビキッ、と空中に亀裂が走る。
【エラー! 攻略対象の好感度計算が正常値を超過しています……!】
三つのゲージが、同時に一斉に100%を叩き割った。
「それじゃあみんな!」とルカが叫ぶ。「現実の推し活現場で、また会おうぜ!」
四人は完璧なシンクロ率で客席に向かって最高のウインクを決めた。
目の前の景色が、ガラスのようにパリンと砕け散っていく。
Scene 10:朝の光と残香
ガバッと、勢いよくベッドから起き上がる。
見慣れた自室の天井。散らかったデスク。
「……夢、だったのか?」
ふと、枕元のスマートフォンが短く震えた。グループチャットに通知が入っている。
『おはよー』
『昨日は急に回線切れてごめん寝落ちた』
ルカとチヒロからのメッセージ。莉緒が苦笑しながら返信を打とうとしたその時、指先がピタリと止まった。
デスクの隅に、ポツリと、一本の「白い薔薇の花びら」が落ちていた。
生花なんて飾っていない部屋で、その花びらは瑞々しい香りを微かに残し、朝の光を浴びてきらりと反射している。
スマホが再び光った。今度はコトネからのメッセージだ。
『ねえ、みんな。夢を見たんだけどさ。ステージの上で、みんなですごいセッション芸をキメた夢』
即座に届くチヒロからのスタンプ。そして、ルカの一言。
『……あれ、夢じゃなかったのかもね』
莉緒は思わず吹き出し、デスクの花びらをそっと指先で摘み上げた。
花びらは、信じられないほど瑞々しかった。本物の薔薇の香りが、指先からふわりと立ち上る。(……夢じゃない。絶対、夢じゃない)昨夜の四人の笑い声。ステージの上で、全員で揃えてきめたウインク。システムが悲鳴を上げた瞬間の、あの高揚感。すべてが、莉緒の胸の奥で、確かに脈打っていた。
そして、軽やかにキーボードを叩いた。
『じゃあ、今日の放課後は……次のイベントの作戦会議ね』
新しい朝の光が、部屋のカーテンを優しく揺らしていった。莉緒は、花びらをそっと教科書の間に挟んだ。しおり代わりに。——また、あのステージへ行くために。







