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幻想郷の秘宝-“ベンチマーク小説企画 #12:「万霊のバザール」”応募作品

幻想郷の秘宝-“ベンチマーク小説企画 #12:「万霊のバザール」”応募作品

Cập nhật lần cuối: 2026-05-01 04:06:00
By: 小清水由美
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Ngôn ngữ:  日本語12+
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Tóm tắt

小清水由美と相田里子は、ひょんなことから異世界に飛ばされてしまい、「万霊のバザール」には、東方の人間や妖怪や妖精たち、またアヴァロンの騎士やウェールズの魔法使いなども訪れていて……?


“ベンチマーク小説企画 #12:「万霊のバザール」”応募作品です。


「ベンチマーク」万霊のバザール ベンチマーク小説企画 #12:「万霊のバザール」で巻き起こるファンタジーを紡ぐ


Chương1

第1章 千年の日食と不思議な市場


静寂を纏う生徒たちがまばらに校門を抜けていく。コンクリートを焼いていた午後の熱気は和らぎ、空は茜色と深い藍色が溶け合うグラデーションを描き始めていた。小清水由美は、一歩隣を歩く親友、相田里子の横顔に柔らかな西日があたるのを見つめていた。


「今日の夕焼け、なんだか特別だね」

里子がふわりと微笑む。彼女の柔らかな髪が、穏やかな風にそよいでいた。その言葉に、由美はこくりと頷く。いつもと同じ帰り道、いつもと同じ会話。けれど、確かに今日の空はどこか違って見えた。まるで古い絵画のように、非現実的なほどに鮮烈な色彩だった。


【プロット1】

「……うん。燃えてるみたい」

由美は小さな声で応じた。眼鏡の奥の瞳が、燃え盛るような夕焼け空を映している。普段は人と視線を合わせるのが苦手で、伏せ目がちになりやすい彼女も、この壮大な空の劇場からは目が離せなかった。二人は言葉を交わすことも忘れ、住宅街を抜ける坂道をゆっくりと歩き続ける。公園の脇を通り過ぎようとした、その時だった。

空の燃えるような赤が、不意にインクを垂らしたように黒く翳っていく。世界の彩度が急速に失われ、真昼のような明るさが嘘のように夜の帳が下りていく。


「え……?」

里子が驚きの声を上げる。由美も見上げた空の中心で、太陽が黒い円盤に侵食されていく光景に息を呑んだ。金色の光が黒い縁から細く漏れ、ダイヤモンドリングのように輝いている。

千年に一度の日食。ニュースで耳にした言葉が、脳裏に蘇る。それが今日だったとは。現実感が希薄になるほどの神秘的な光景に、二人は足を止め、ただただ見とれていた。周囲の音が、まるで分厚い壁の向こう側のように遠ざかっていく。世界の全てが、この天体ショーのために静まり返ったかのようだった。由美の胸を締め付けていた日々の些細な不安や緊張が、この巨大な宇宙の営みの前ではちっぽけに思えた。


【プロット2】

日食がピークに達し、空が完全な夜の闇に支配された瞬間。

公園の中心、何もないはずの空間の空気が陽炎のように揺らぎ始めた。刹那、眩い光が迸り、渦を巻く。それはまるで、天と地を繋ぐ光の竜巻だった。轟音と共に、凄まじい引力が渦の中心から放たれる。


「きゃっ!」

里子の短い悲鳴。立っていることすらままならず、その体は無慈悲な力に引き寄せられていく。


「里子っ!」

恐怖が全身を貫いた。由美は考えるより先に、すぐそばにあった里子の手に自分の手を絡ませ、強く、強く握りしめた。爪が食い込むほどの力だった。彼女の華奢な体が、自分より先に光の中へ吸い込まれてしまうことへの本能的な拒絶だった。


「由美、しっかり捕まってて!」

里子もまた、恐怖に顔を歪ませながら叫んだ。彼女は由美の手を握り返し、もう片方の手で近くの街灯の柱にしがみつこうと必死に腕を伸ばす。しかし、その指先は虚しく空を切るだけだった。引力はさらに増し、二人の体は宙に浮き上がる。スニーカーの裏が地面から離れる絶望的な浮遊感。


「いやっ!」

由美の悲鳴は、渦の轟音にかき消された。視界が真っ白な光で塗りつぶされる。里子の手の温もりだけが、自分がまだ存在していることの唯一の証明だった。守らなければ。里子を守らなければ。その思いだけが、意識が遠のいていく中で、最後の楔のように心に突き刺さっていた。

そして、全てが途絶えた。


【プロット3】

次に目を開けた時、由美の鼻腔を突いたのは、嗅いだことのない甘ったるい香辛料と、獣の体臭、そして湿った土が混じり合った異様な匂いだった。


「……ここ、どこ?」

か細い声は、自分のものでありながら、どこか遠くで響いているように聞こえた。由美はまだ里子の手を固く握りしめたまま、呆然と周囲を見回した。


そこは、市場だった。しかし、彼女が知っているどんな市場とも似ていなかった。石畳の道には、見たこともない意匠の露店がひしめき合い、売り物の多くは薄暗い光の中で不気味に蠢いたり、明滅したりしている。そして何より異様なのは、行き交う人々、いや、人ならざる者たちの姿だった。硬質な鱗に覆われた蜥蜴のような男、背中に羽虫の翅を生やした少女、複数の腕を持つ商人。人間の姿をした者もいるが、その誰もが奇妙な衣服を纏い、由美と里子とは明らかに異質な空気を放っている。


「万霊のバザール」。誰が名付けたわけでもない。しかし、その言葉が由美の脳裏に浮かび上がった。あらゆる魂が集う場所。生者も死者も、人間も妖怪も、神も悪魔も、等しく取引を行う場所。


「……っ」

恐怖が遅れてやってきた。全身の血の気が引き、指先から冷たくなっていく。歯の根が合わず、カチカチと小さな音を立てた。汗で湿った制服が肌に張り付き、豊満な胸のラインや腰の曲線がくっきりと浮かび上がる。それは無防備さの証左であり、周囲の異様な視線がそこに突き刺さるようで、由美はたまらず身を縮こませた。


「大丈夫、由美。私がいるから」

隣で里子が震える声で言った。彼女もまた、恐怖で顔を青ざめさせている。いつも浮かべている穏やかな笑顔は消え、必死に平静を装っているのが痛いほど伝わってきた。里子の小柄で華奢な体も、恐怖にこわばっている。パステルカラーのカーディガンが、この混沌とした色彩の中ではあまりにも場違いに見えた。


だが、二人が怯え、立ち尽くしていること自体が、この場所では危険な行為だった。好奇の視線、あるいはもっと質の悪い、獲物を見定めるような視線がいくつも突き刺さるのを感じる。ある者は由美の豊かな肉体を舐め回すように見つめ、ある者は里子の純粋そうな雰囲気に目を輝かせている。二人の少女が纏う「異邦人」という匂いは、この混沌の市場では最高の蜜だったのだ。


【プロット4】

その粘つくような視線の一つが、行動に移ろうとした瞬間だった。


「――ったく、見慣れねぇ顔だと思ったら、外の人間か。こんな場所で突っ立ってたら、カモにしてくれって言ってるようなもんだぜ?」

凛とした、それでいてどこか少年のような響きを持つ声が、すぐそばから聞こえた。
はっと顔を上げると、そこに一人の少女が立っていた。

腰まで伸びる艶やかな金髪。黒い大きな三角帽子を目深にかぶり、同じく黒を基調とした、いかにも「魔法使い」といった出で立ち。そのガーリッシュな服装とは裏腹に、口調はぞんざいで、腕を組んで仁王立ちする姿は男勝りな印象を与える。しかし、彼女が一人称に選んだ言葉は、そのどちらの印象とも異なるものだった。


「私は霧雨魔理沙。まあ、ただの魔法使いだ。お前ら、見るからに迷子だな。名前は?」

魔理沙と名乗った魔法使いは、品定めするように二人を見つめる。その視線は鋭いが、先ほどまで感じていた粘つくような下卑たものとは全く違っていた。彼女の黒い服は、体のラインに沿ってしなやかな曲線を描いている。特に、ミニスカートからのぞく引き締まった脚は、長い冒険を物語るかのように健康的で、不思議な色気を放っていた。


「……こ、小清水、由美、です」
「あ、相田里子です……!」

由美はかろうじて名前を絞り出し、里子も慌ててそれに続いた。


「ユミとサトコか。変な名だな」魔理沙はこともなげに言うと、二人の周りをぐるりと歩いて観察した。「その服……なるほどな。日食にでも巻き込まれたクチか。たまにいるんだよ、お前らみたいなのが」

彼女は面倒くさそうに頭を掻きながらも、二人の前に立つと、周囲にまとわりついていた視線を追い払うように鋭い一瞥をくれた。それだけで、さっきまで二人を獲物のように見ていた者たちが、そそくさと視線を逸らして離れていく。圧倒的な格の違いが、そこにはあった。


「助けて……くださったんですか?」
里子がおずおずと尋ねる。


「助けたってほどのもんでもない。ただ、面倒なことになる前に口を挟んだだけだ」魔理沙は肩をすくめた。「いいか、よく聞け。ここは『万霊のバザール』。あらゆる世界の、あらゆる奴らが商売しに来る場所だ。人間もいれば、妖怪も、神様だって暇つぶしに顔を出す。危険な奴らもごまんといる。お前らみたいな、世間知らずのひよこがうろついていい場所じゃねぇ」

魔理沙の言葉は、二人が漠然と感じていた恐怖に、明確な輪郭を与えた。


「ルールは単純だが、絶対だ」

彼女は人差し指を一本立てる。その指先に、小さな星の光が灯っては消えた。


「このバザールには、たった一つの掟しかない。――『一度成立した取引は、決して撤回できない』」

その声はあくまでも軽く、普段着のようだった。だが、その言葉の重みは、この異様な市場の混沌全てを凝縮したかのように、由美と里子の心にずしりと沈み込んだ。


「金で買えるもんもあれば、そうじゃないもんもある。記憶、寿命、未来、幸福……ここじゃ何でも商品になる。そして、一度『取引』しちまったら、どんな代償だろうと支払わなきゃならねぇ。それが神様だろうと、悪魔だろうと、例外はねぇんだ」

魔理沙は意味ありげに口の端を吊り上げると、途方に暮れる二人を見下ろした。


「ま、とりあえず私の家に来い。そんな格好でうろつかれたら、目立ってしょうがねぇからな」

そう言って、魔理沙はくるりと背を向けた。有無を言わせぬその背中に、由美と里子は、ただ黙ってついていくしかなかった。迷宮のような市場の路地裏へ、金色の髪が吸い込まれていく。その先がどこに繋がっているのか、二人には知る由もなかった。

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