เรื่องย่อ
山ノ上 十四郎
81歳
男性
銭が何より好きで田舎じゃ金は稼げんと断言し都会にでて紆余曲折はあったものの成功を収めた
人生に満足して隠居しつつ新たな金儲けを考えていた所で
酒に酔ったタカシの「俺はネットと通販だけあればどこでも生きていける」という発言を聞き
故郷の集落のスマート農園化をする決意を固める
บท1
冬眠に入り損ねた熊でも出たのか。
あるいは、山の神が五十年の沈黙を破って、ついにお怒りになられたのか。
宮ノ原集落。かつて数十軒の家々が石垣にしがみつくように並んでいたその場所は、今や限界どころか「絶滅」の二文字が指先をかけている、骨董品のような村だ。そこに、地鳴りのような重低音が響き渡った。
「どけ、どけぇ! 道を開けんかい、この老いぼれどもが!」
八十一歳の権蔵が、耳を劈くその騒音に、持っていた鍬を放り出して飛び出した。
村に残ったのは、自分と、足腰の立たなくなった数名の年寄りのみ。それなのに、だ。集落へと続く細い林道を、見たこともないような最新鋭の大型トラックと、けばけばしいショベルカーが、土煙を上げて這い上がってくるではないか。
トラックの助手席から降りてきたのは、妙にツヤのいい、仕立ての良すぎるスーツに身を包んだ老人だった。
その顔を見た瞬間、権蔵の血管が、かつての激流を取り戻す。
「……十四郎、貴様ぁッ!」
「よう、権蔵。五十年前と変わらん汚いツラしとるな。安心したわ」
十四郎。半世紀前、この寒村に「銭が稼げん場所には一秒も居れん」とタンカを切り、着の身着のままで都会に消えた、あの大馬鹿野郎だ。
奴は、自分の生家——もはや屋根が抜けて幽霊屋敷と化していたはずの屋敷の前に立つと、後ろの業者たちに傲慢に指図を出した。
「ええか、今日中に屋根を直せ。それと、庭に光回線と衛星アンテナを五本立てろ。ドローンの充電ポートも忘れんなよ」
「待てコラ! 何をしとるんじゃ!」
権蔵は、震える足を踏ん張り、鍬を槍のように構えた。
「ガラクタを持ち込むな! ワシの、ワシらが守ってきたこの山を、得体の知れん棒きれで汚す気か!」
十四郎は鼻で笑った。シワの刻まれた瞼の裏で、金色の瞳がぎらぎらと輝いている。
「守ってきたぁ? 放置して腐らせとるだけやろがい。ええか、権蔵。ワシはな、故郷に錦を飾りに来たんやない。この死にかけの山を『スマート農業』でブランド化して、ワシが最後にもう一儲けしたるんや!」
「すまーと? なんじゃ、そのスカした横文字は!」
「スマホや、AIや、ドローンや! お前みたいな固まった脳みそには理解できん、未来の金儲けよ!」
二人の間に、一人の若者がふらりと割って入った。タカシだ。十四郎の会社で便利屋のように扱われている三十三歳。彼は死んだ魚のような目で、都会から連れてこられて以来、一度も止まっていない蚊の羽音を呪っていた。
「……あの、権蔵さん。十四郎さんは本気ですよ。ネットと通販さえあれば、ここも銀座と同じだって言い張って。僕なんか、昨日から巨大なカマドウマと三回も格闘させられてるんです。もう帰りてぇ……」
「黙れ、タカシ! 貴様、ネットがあればええと豪語しとったやろ。ここには空と山とWiFiがある。最高やないか!」
十四郎は権蔵の鼻先に、指を突きつけた。
「ええか。ワシはお前のその『頑固な経験』とやらをな、全部AIに学習させたる。お前の鍬の角度、土の匂いの嗅ぎ方、肥料のタイミング、全部データ化して、お前を『管理AI・権蔵』にするんや。これでもうお前は、死んでもこの山を離れられんようになるぞ」
「……魂を抜く気か!」
権蔵の顔がみるみる赤黒くなる。
「ワシの魂を、そんなガラクタの箱に閉じ込める気か! やめろ、そんな気味の悪い真似、させるはずがないわ!」
「魂やない、データや、データ! 未来の永劫不滅や!」
「うるさい! 帰れ、今すぐ港に戻って海に飛び込め、この金の亡者め!」
八十一歳と八十一歳の取っ組み合い。といっても、実際には互いの胸ぐらを掴んだまま、膝がガクガクと笑って、そのまま二人で縁側に崩れ落ちるだけなのだが。傍目には、スローモーションのコントにしか見えない。
「……ゼェ、ゼェ……。お前、相変わらず……口だけは、達者やな……」
「……当たり前や。ワシが、いくら稼いだと思って、るんや……」
修復の始まった屋敷から、景気のいいカナヅチの音が響く。
タカシが溜め息をつき、段ボールから大量の消毒液と虫除けスプレーを取り出し始めた。
その夜。
かつて二人がガキの頃、芋を盗んで食ったのと同じ形の月が、山頂に掛かった。
再建中の十四郎の家。といっても、居間だけはなんとか座れる状態になった場所に、二人の老人はいた。
夕食は、タカシが村から数時間かけて麓のコンビニまで買い出しに行った、上げ底の弁当だ。
「……なんや、この飯は。味に奥行きがないわ。都会の奴らは、これを食って戦っとるんか」
権蔵が、プラスチックの容器を箸で突きながら愚痴をこぼす。
「無粋なこと言わんの。これが『効率』や。味なんぞ栄養を運ぶための梱包材にすぎん」
そう言いながら、十四郎も内心では、もっと米にツヤが欲しかったと舌を出していた。
食事の締め。権蔵が淹れたのは、地元の山で採れた茶葉の、得体の知れない茶だった。
茶碗に注がれたその液体は、もはや茶というよりは、濃い墨汁のようだった。澱が底に溜まり、湯気からは土の匂いがする。
一口啜った瞬間、十四郎の顔が、梅干しを食べた子供のように歪んだ。
「……ゲホッ! ……なんや、この茶は! 渋すぎるやろ! 鉄を煮立たせたような味がするわ!」
「ふん。軟弱な都会の舌には分からんだけよ。これが大地の味、宮ノ原の底力じゃ」
権蔵は平然と、その黒い液体を煽る。
「大地というより、ドブの底や。貴様、茶筒の中に釘でも入れたんやないか?」
「お前に飲ませる茶に、手加減など必要あるか。文句があるなら、自分のドローンにでも煎じてもらえ」
「言わせておけば……。ええか、明日からは最新鋭のティーマシンを導入する。茶葉の細胞一つ一つを、一番ええ温度で痛めつけ、最高の味を抽出する機械や。お前の淹れるみたいな無骨な茶は、歴史の遺物に追いやったるわ!」
「やってみろ。そんな魂のない水、畑に撒いてもカエルすら逃げていくわ!」
二人の罵倒は、夜が深まるにつれて勢いを増した。
かつて五十年前、村の祭りで喧嘩をして、二人で肥溜めに落ちた時の記憶が、今の叫び声と重なる。
十四郎が、ふと茶碗を見つめた。
そこには、自分と同じように年を取った、しかし妙に頑強な親友の顔が、黒い茶柱と共に映っていた。
(……相変わらず、可愛げのない茶を淹れおる)
ふと、十四郎の視線が権蔵の手に落ちた。かつて岩をも砕くと豪語したその拳は、茶碗を持つ際に、微かに、本当に微かに震えている。
「おい、権蔵」
「なんじゃ。まだ悪態をつき足りんか」
「……その茶、一口やるわ。機械では出せん、毒のような味がする。ワシのAIに学習させるには、これくらいアクの強い方がええ」
「死んでも教えるか、馬鹿野郎」
隣の部屋では、タカシが寝袋に潜り込み、耳栓を装着して「明日は絶対にムカデムエンダーを十箱買う」と自分に誓っていた。
山間に、久しくなかった笑い声と怒号が響く。
過疎の闇に飲まれかけていた集落の夜が、その灯りだけは、妙に熱を帯びて、長く、長く続いていった。
บทล่าสุด
季節が、宮ノ原の山々を塗り替えていった。
火を噴くような紅葉が谷を埋め尽くし、やがて鋭利な北風が木々の葉をむしり取ると、集落
宮ノ原集落に、半年という月日が雪崩のように押し寄せ、そして過ぎ去っていった。
かつて都会の絵の具に染まっていたタカシの肌は、今や適度な紫外線を浴びて健康的な小麦色へと
「動くなと言っとるやろが、このクソ頑固ジジイ!」
朝霧が消えきらぬ宮ノ原集落に、十四郎の怒声が響く。権蔵の全身には、今や医療用
冬眠に入り損ねた熊でも出たのか。
あるいは、山の神が五十年の沈黙を破って、ついにお怒りになられたのか。
宮ノ原集落。かつて数十軒の家々が石垣にしがみつくように並







