เรื่องย่อ
小夜
女性、20代
派遣社員。唯一の正気でツッコミ役。翔太を「借金作って拉致された哀れな青年」と勘違いして同情する。
一応4人の中では唯一のマトモな思考の人間だがよく酒に酔ってそこら中で寝てしまう
今回もその悪癖のせいで連れてこられてしまった
かなりのダメ男好きで、好きになると甘やかしまくり
その結果男性が甘えれば堕落し、反発すればダメ男が無謀なチャレンジに走り自滅するという
その上飽きっぽく、堕落や失敗してもしばらくは変わらないが次のダメ男を見つけるとあっさり興味をなくしてしまう
無自覚ということもあり危険さで言えば4人の中では一番上ともいえる
บท1
痛覚よりも先に、冷たさが意識の底を叩いた。
頬に吸い付くコンクリートの感触。湿り気を帯びた埃の匂い。暗がりのなか、重く濁った空気が肺の奥に沈殿していく。派遣社員、二十五歳。昨夜は確か、駅前の居酒屋で安いハイボールを煽っていたはずだ。三杯目か、あるいは四杯目。記憶の糸はそこでぷっつりと断ち切られ、代わりに今、手首に食い込む金属の冷徹な重みが現実を突きつけている。
「う、あ……」
喉が張り付いている。
身をよじると、ジャラリと硬質な音が狭い空間に反響した。手枷。映画のなかでしか見たことのない、無骨な鉄の輪が両手首を繋いでいる。
「な、なに……これ……」
震える指先で、自分の腕をなぞる。夢ではない。皮膚を擦る感触は生々しく、鎖が床を這う音は鼓膜を容赦なく震わせる。
薄暗い部屋の隅。鉄格子が鈍い光を反射し、壁面には何台かのモニターと、意味の分からない機械類が設置されている。ここはどこだ。なぜ、こんな場所に。
「嫌……助けて……誰か!」
悲鳴が、湿ったコンクリートの壁に跳ね返る。パニックが心臓を掴み、呼吸が浅くなる。視界が激しく揺れた。そのとき、暗がりのあちこちから、自分以外の「音」が聞こえてきた。
「……やかましいわぁ、もう。誰や、朝から騒いどんのは」
野太く、それでいてどこか生活感の滲む声。
すぐ横で、何かがもぞもぞと動いた。目を凝らすと、そこには派手な、あまりにもド派手な豹柄の布塊が転がっている。布塊はのろのろと起き上がり、頭を掻きむしった。大阪のおばちゃん、恵美子だ。その横には、さらに別の影。
「おだまりなさい。耳元で叫ばれては、こちらの神経が逆立ちますわ」
凛とした、しかし冷ややかな声。
仕立ての良いブラウスに身を包んだ婦人が、床に座り込みながらも優雅に日傘を握りしめている。東京のおばちゃん、雅代。彼女たちの手首にも、同様の鉄枷が嵌められていた。
そしてもう一人。部屋の対角線上の隅で、膝を抱えてガタガタと震えている青年がいた。前髪で顔を隠し、怯えた小動物のように縮こまっている。翔太。彼はこの絶望的な状況に、誰よりも打ちのめされているように見えた。
「な、何ですかここ!? 私たち、拉致されたんじゃ……っ、殺されるんだわ、きっと!」
小夜の声が裏返る。恐怖で涙が溢れ、視界が滲む。
その瞬間。
ガリガリとノイズを立てて、正面のモニターが起動した。
青白い光が部屋を照らし出す。画面に映し出されたのは、不気味な白い仮面を被った男の姿だった。背景は真っ暗で、男の輪郭だけが不自然に強調されている。
『……愚かな人間たちよ』
ボイスチェンジャーを通したような、地を這う重厚な声がスピーカーから漏れ出す。
『目を覚ましたようだな。お前たちは選ばれた。この閉鎖空間において、お前たちの浅ましい自我は崩壊し、真の絆が試されることになる。これから始まるのは、命を賭した死のゲームだ……。逃げ出すことは叶わない。生き残る道はただ一つ、私の提示する試練を……』
「キャーーーーーーー!!」
小夜は頭を抱えて絶叫した。
死。ゲーム。仮面の男。
物語のなかの惨劇が、今まさに自分の身に降りかかろうとしている。死にたくない。まだ、何もしていないのに。
しかし。
その絶望の悲鳴を切り裂くように、鋭い舌打ちが響いた。
「ちょっと、あんた! 聞こえてるんか!」
声の主は恵美子だ。彼女は立ち上がり、手枷の鎖をジャラジャラと言わせながら、モニターに向かって指を突き出した。
「誰が愚かな人間やねん! それよりあんた、ここの管理責任者か? 見てみぃな、この部屋。暗うて足元も見えへんわ! 電気代ケチっとるんか知らんけど、早う蛍光灯交換してぇな。防犯カメラも埃かぶっとるし、掃除が行き届いてへんのとちゃう?」
モニターの中の仮面が、一瞬、固まったように見えた。
『貴様らの命運は我が手に……』
「あんたも言うてやり。こんな不潔なとこ、人権問題やで」
振られた雅代は、日傘を杖のように突き、眉間に深い皺を刻んだ。
「……そうですわね。先ほどから気になっていましたけれど、この壁、建材は何を使っているのかしら? 嫌だわ、これ……アスベストの対策はしっかりされているの? もし吸い込んで健康被害が出たら、あなた、賠償責任をどう取るおつもり? 空気清浄機の一台もないなんて、正気の沙汰とは思えませんわ」
『これは死の……』
「死ぬとか生きるとか、そんな話は後や! まずは労働環境の改善やろ! 飴ちゃん食べるか? イチゴ味や。あんたも画面越しに口開けなはれ」
恵美子はポケットからシワシワのイチゴ飴を取り出し、モニターに押し付けようとしている。
(……ふっ。愚民どもめ。恐怖のあまり精神に異常をきたしたか)
震えていたはずの青年――翔太の脳内では、全く別の言葉が渦巻いていた。
モニターの向こうで威厳たっぷりに喋っている仮面。あれは一週間前、内職と夜勤の合間に、血眼になって録画した自分自身の姿だ。
本来なら、ここにいるはずなのは世間を騒がせる傲慢な政治家や、鼻持ちならないIT長者たちだった。彼らをこの「自作自演の地獄」に突き落とし、自分という「天才」の掌の上で転がされる姿を観察する。それが、翔太の描いた完璧な計画だった。
すべては、あの競馬のせいだ。
プロの拉致実行犯を雇うための資金、数百万。それを本命の馬に全賭けした結果、最後の一線で伏兵に差された。
資金は消えた。だが、実験を諦めることはできない。
仕方なく、翔太は自ら動いた。居酒屋で泥酔していた若い女。健康ランドの休憩室で爆睡していた、うるさそうな中高年の女二人。そして、自分自身。
「被害者」を装って潜入すれば、より近くで被験者の心理を分析できる。設備の脆さも、自分が一緒にいることで誤魔化せるはずだ。
(設備は頑丈に作った。この鉄格子も、中古だが本物の刑務所仕様だ。ハリボテの部分はあるが、素人には見抜けまい。さあ、絶望しろ。泣き叫べ。俺の知的好奇心を満たすための肉塊となれ……!)
「あー、もう! 鼻につくわぁ、このニオイ!」
唐突に、恵美子が鼻を摘んで叫んだ。
「あんたの香水やろ! さっきから狭い部屋でムンムンしよって! 加齢臭隠そう思て、やりすぎやねん。こっちはイチゴ飴のええ匂い楽しみたいのに!」
雅代が柳眉を逆立て、日傘を激しく床に突いた。
「まあ、失礼な。これは由緒あるメゾンの香水ですわよ。あなたの、その……安物の柔軟剤と湿布が混ざったような生活臭と一緒にしないでくださる? 頭が痛くなりますわ。ここから出してくださらないなら、せめて換気扇を強になさい!」
「なんやて! うちの柔軟剤は特売で三割引きやった高級品やぞ! あんたの鼻がバカになっとるんや!」
「お黙りなさい! この……豹柄の猛獣!」
「誰が猛獣や! この温室育ちのモヤシおばさん!」
二人の罵声が、狭いコンクリートの部屋に木霊する。
モニターの中の仮面男(録画)は、依然として『……絆を、試すのだ……』と虚しく繰り返しているが、もはや誰も見ていない。
「あ、あの……お二人とも、落ち着いて……」
小夜が涙目で割って入ろうとするが、おばちゃん二人の迫力に圧され、言葉が続かない。
「…………」
翔太は、隅っこで呆然と立ち尽くしていた。
想定外だ。
恐怖。絶望。あるいは、極限状態での連帯。
自分が期待していた「高尚な人間ドラマ」は、開始五分で霧散した。
目の前で繰り広げられているのは、近所のスーパーのレジ待ちで発生するような、低次元で不毛な口論である。
「ねえ、そこのお兄さん」
雅代が、鋭い視線を翔太に向けた。
「あなた、さっきから黙って見ていないで、何とかおっしゃいな。男性でしょう? この……品の欠片もない大阪の方を、どうにか黙らせてくださらない?」
「え、あ、いや……僕……」
「なんや、あんたあの香水おばはんの味方するんか? ええんやで、正直に言い。どっちのニオイが公害レベルか。はっきりさせようやないの」
恵美子が、翔太の胸ぐらを掴まんばかりの勢いで詰め寄ってくる。
(……え、俺? 俺がジャッジするの?)
天才犯罪者。
冷酷な観察者。
そんな自己像が、おばちゃんたちの吐息と、混ざり合う香水の粒子にかき消されていく。
鉄格子の鍵は、翔太の靴の中に隠してある。モニターを操作するリモコンも、ポケットの裏地に仕込んである。
しかし、それらを出すタイミングなど、今のこの空間には存在しなかった。
「……う、ううっ」
小夜が再び泣き出した。
「殺されるのも怖いけど、このまま二人が喧嘩し続けて、一晩中ここに閉じ込められるのも怖い……!」
翔太は震える膝を押さえながら、モニターの中の自分――仮面を被って格好つけている自分――を見上げた。
一抹の不安。
いや、それはもっと巨大で、泥沼のような予感だった。
競馬でスったあの日。あの時感じた「終わった」という感覚が、再び胃の奥をじりじりと焼き始めている。
実験は、まだ始まったばかりだ。
しかし、翔太の心は、すでに粉々に砕け散りそうな音を立てていた。
「もうええわ! あんた今、うちのこと『猛獣』言うたな? 取り消しなはれ!」
「事実を申し上げて何が悪いのかしら。その服、目がチカチカしますのよ!」
「よっしゃ、決闘や! あ、でも手枷があるから殴り合いはできひんな。……なあ、仮面の兄ちゃん! ちょっとここ開けてぇな! 一発どついたらすぐ戻るさかい!」
モニターの中の仮面は、ただ無言で(録画なので当然だが)、不気味な威圧感を放ち続けている。
その沈黙すらも、今の翔太には、自分への嘲笑にしか聞こえなかった。
暗いコンクリートの密室。
鳴り止まない罵声。
漂う香水とイチゴ飴の混ざった悪臭。
小夜のすすり泣き。
そして、自分が仕掛けたはずの「死のゲーム」が、ただの「地獄のような介護」に変貌していく現実。
翔太は、そっと目を閉じた。
……帰りたい。
明日も、夜勤があるのだ。
บทล่าสุด
地下室の出口を塞いでいた重厚な鉄格子は、もはや「試練」としての威厳を失っていた。
恵美子がどこからか調達してきた(おそらく翔太が備品室に隠していた)巨大なボルトクリッ
鉄扉の向こう側に広がっていたのは、不気味なほど鮮烈な、真紅の幾何学模様だった。
細い、糸のような赤い光が、壁から壁へ、床から天井へと複雑に交差している。その
部屋を支配しているのは、鼻をつく酢飯の匂いと、プラスチックの桶に残された醤油の跡だ。特上寿司という、翔太の血税――もとい、血の滲むような労働の結晶は、嵐が過ぎ去った後のよ
「……まずは、お互いのことを知るべきではないかしら」
雅代が、埃の舞う空気の中で不自然なほど背筋を伸ばして言った。手枷の鎖が、彼女の動きに合わせて微かな金属音を立てる







