เรื่องย่อ
高峰綾香襲来&妖怪編
บท1
木造校舎の放課後は、どこか粉っぽい匂いがする。
チョークの灰と、西日に温められたリノリウムの床板。最後の学級活動が終わると同時に、生徒たちの足音が階段を駆け下りていく。
ラルス=ローゼンベルグは、机の中に残った筆箱を鞄へ滑り込ませた。
革鞄の金具がカチリと音を立てる。
帰り支度を終え、立ち上がろうとしたその瞬間、影がひとつ、手元を遮った。

「ラルスくんて、女慣れしてるよね?」
黒髪を几帳面に切り揃えた少女が、腕を組んで見下ろしていた。
高嶺綾香。
成績は常に学年首位、姿姿端麗で、教員に対しても容赦なく規律を求める優等生だ。数日前に校内で起きた陰湿ないじめ騒動の折も、その生真面目さゆえに孤立しかけていたところを、ラルスの父や叔母たちの介入によって解決を見たばかりだった。
綾香の瞳が、射るような光を宿してラルスを見つめている。
「放課後、付き合ってよ」
唐突な要求だった。
ラルスは鞄の持ち手を握り直したまま、ごく自然に半歩ほど身を引いた。
「いやです~なんか言いがかりの雰囲気がします~~」
語尾を少し伸ばした力のない返答。
嘘偽りのない本心だった。この手の整った顔立ちをした同級生が、わざわざ放課後に男子を引き留める時、ろくな件であった試しがない。
「言いがかりじゃないわよ。考察よ、考察」
「そういうのを世間では言いがかりって言うんですよ、高嶺さん」
綾香の眉間にしわが寄る。
彼女からすれば、この至近距離で鋭く睨みつければ、大抵の同級生男子は挙動不審になるか、鼻の下を伸ばすはずだった。しかし、ラルスの青い瞳には動揺の欠片もない。
「……そういうところよ」
綾香が低い声で呟く。
「あなた、わたしがこうして近くに立っていても、眉一つ動かさないでしょう。同年代の女子に対する緊張感が決定的に欠落しているわ」
「それは……」
ラルスは視線を斜め上に向け、数日前、放課後の誰もいない教室の光景を思い出していた。
夕日に染まる教卓の横で、両腕を体に密着させ、上半身を奇妙に反らせながら
「パウッ、パウッ」
と鼻を鳴らしてオットセイの真似をしていた高嶺綾香の姿を。
(まあ、ストレスたまってるんでしょ。彼女も)
「オットセイさん、力の抜き方から学んでくれればいいんですけど……」
「忘れなさい!!!!」
廊下に響き渡るような一声だった。
綾香の顔が瞬時に真っ赤に染まり、手にしていた出席簿の角がラルスの目と鼻の先でピタリと止まる。
「あれは……あれは、体幹の訓練よ! 呼吸法の一種なの!」
「そうなんですか。結構うまかったですよ、パウッていうの」
「蒸しかえすなと言っているの!」
綾香は肩を激しく上下させ、息を整えようと試みた。
高嶺の花と恐れられる優等生の面影は、どこにもない。
ラルスはため息をひとつ吐くと、鞄を肩に掛け直した。
彼女がどれほど美少女であろうと、どれほど威圧感を放とうと、ラルスの心が揺らぐことはなかった。
家へ帰れば、さらに理不尽で、さらに常識から逸脱した女性たちが大勢蠢いているからだ。
家賃を一度も払ったことがないくせに、居間で堂々と肉を要求してくる黒翼の戦乙女。
その部屋に勝手に住み着き、風に乗って菓子をくすねていく精霊。
セーラー服を着てゲームの画面に向かいながら、イカサマの真似事を愚痴る半分竜神の叔母。
おっとりとした笑顔で和菓子を差し出しつつ、刀の柄に手をかけて笑顔で脅してくる霊波剣士。
そして、それら全てを軽々と従え、嫁を十人も囲んでいる父、ミハエル。
そんな環境で育ったラルスにとって、高嶺綾香がどれほど背伸びをして挑発してこようと、「少し賑やかなクラスメイト」の域を出ないのだった。
「とにかく、わたしは納得がいかないの」
綾香は胸の前で再び腕を組み、突き放すように言った。
「うちの父親も、街の男たちも、女子が少し愛嬌を振りまけばすぐに鼻の下を伸ばすわ。男なんて、胸のや顔立ちひとつで簡単に骨抜きになる浅はかな生き物のはずでしょう? なのに、なぜあなたはそうならないの?」
「父さんを見て育ったからです」
「……え?」
「あれは反面教師として、極めて優秀ですので」
ラルスは淡々と答えた。
父・ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒ。
ヴァーレンス王国の公爵にして、幾つもの死線を越えてきた規格外の男。しかし、女性関係における節操のなさだけは、息子として絶対に真似をしてはならない第一の教訓だった。
綾香は毒気を抜かれたように口を半開かせにした。
「……そこだけは、否定しづらいわね」
「でしょう。だから、僕はこれで失礼します」
「待ちなさい、話はまだ終わって――」
引き留めようとする綾香の声を背に受けながら、ラルスは軽やかな足取りで教室の扉を開けた。これ以上付き合うと、夕飯の準備に遅れて母やおばさんたちに心配をかける。
ヴァーレンス王国の王都を染める夕暮れは、どこか悠久の匂いがした。
大気中を流れる微小な霊気の粒子が、街灯の灯りと混ざり合って淡い橙色の光を放っている。
この国では、金銭という概念が半分形骸化している。
市場で買い物をするときも、人々は自らの魂の欠片をわずかに切り切り取って支払いに当てる。心の美しい者ほど、その魂は高い価値を持ち、誰もが飢えることなく暮らせる楽園。
だからこそ、屋台の甘味も、服飾店の仕立て服も、住処さえも、心の持ちようひとつで手に入る。
ラルスが公爵家の屋敷の重厚な門を潜ると、玄関の扉が開くより先に、上空からけたたましい羽音が降り注いだ。
「ミハエルー! 今日の夕食は肉か!? 甘いタレで炒めたあの肉なのか!?」
黒い翼を豪快に羽ばたかせ、着地と同時に石畳を靴底で鳴らしたのは、ブラックヴァルキリー・カーラだった。
黄金の瞳を輝かせ、漆黒の装甲を部分的に纏った姿は、神話の戦士そのものだ。しかし、手には近所の商店街で買ってきたらしき安売りの団子の串が握られている。
「ただいま帰りました、カーラさん」
「む、ラルスか。戻ったか。ミハエルはどこだ? わたしは腹が減っているのだぞ。魂の導き手たるわたしを餓死させる気か!」
「父さんはまだ執務室だと思いますけど……あと、カーラさんは魂を導く仕事をもう辞めたんですよね?」
「細かいことはよいのだ!」
カーラが鼻を鳴らすと、その背後の空間がぐにゃりと歪み、黄緑色の髪をした少女が空中から飛び出してきた。
古代風の白い衣装をなびかせた精霊、シルフィードだ。
「ちょっとカーラ、一人で勝手に降りないでよー。ミハエルさんの家の冷蔵庫、まだアイス残ってるかな?」
「シル、お前は甘いものばかり食べるから風船のように膨らむのだぞ」
「ふくらまないもん! 精霊だもん!」
二人は玄関のドアを勝手に押し開け、ドカドカと土足に近い勢いで上がっていく。
家賃を払う気配は微塵もない。
ラルスは深くため息をつき、自らの靴を揃えて玄関に上がった。学校での高嶺綾香の威圧感など、この二人のかまびすしさに比べれば、春風のようなものだ。
廊下を進み、広い居間へ顔を出すと、既に先客がいた。
บทล่าสุด
彼の瞳には、まだ消えやらぬ火車の余熱が、奇妙なほど冷徹に映し出されている。周囲では、消防員や騎士団の隊員たちが慌ただしく動き回っているが、ラルスだけは、まるでスローモーションの映画を見ている
夜と朝の境界線は、いつだって曖昧で、どこか残酷なほどに静かだ。
焼き焦げた古い商店街。数時間前まで理不尽な炎が踊っていた場所には、いま、細く白い煙が亡霊の吐息のように立ち昇ってい
夜の商店街は、理を欠いた炎に焼かれていた。
瓦礫を噛み砕くような轟音が響くたび、かつて立ち並んでいた店舗の残骸から黒煙が立ち昇り、漆黒の空を厚く覆う。人々の叫び声は遠ざかり、代
学園の喧騒を背後に、放課後の黄昏がヴァーレンスの街並みを長く引き延ばしていた。ラルス=ローゼンベルグは、慣れ親しんだ公爵邸の重厚な石造りの門をくぐる。日課となっている帰宅の徒路だが、今日は少







