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ギャラリー黒竜の骨董品集め

ギャラリー黒竜の骨董品集め

Última atualização: 2026-07-15 06:18:00
By: 白い月
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Idioma:  日本語12+
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Sinopse

黒竜のフィオラ=アマオカミはギャラリー黒竜に飾るものを探しに、まずはヴァーレンス国際珍しいもの取引場に足を運ぶ。そして遺跡の街の塔にもいったりしてドタバタする物語。


骨董品はいくつも出てくるが、物語の鍵となる道具はどれだ!?


Capítulo1

 午後の光が、ギャラリー黒竜の床に長い影を落としていた。フィオラ=アマオカミは、入り口近くの古い木の椅子に腰を下ろし、腕を組んでいた。脚を組んだまま、時計を見るでもなく、ただぼんやりと空間を見つめている。窓から差す陽射しは柔らかく、空気には古いキャンバスと木のフレームの匂いが混じっていた。誰も来ない。

 今日は三時間目の来客だったが、あのデブのあぽぽーは静かに帰って行っただけだ。

「暇ね」

 彼女は小さく呟いた。赤い瞳が、部屋の隅にある一幅の風景画をなぞる。

 描かれているのは、彼女が前に買ったヴァーレンスの古い港だ。当時はまだ街も小さかった。今ではこの国も大きくなり、彼女の画廊も少しずつ有名になった。でも、客が増えたわけではない。魂を支払う価値があると思う人は、まだ少ない。

 カーラの姿が目に入った。黒い鎧に包まれた体を壁際の絵の前に据え、金色の瞳を細めている。彼女が見ているのは、先月フィオラが手に入れた小品だった。

 色使いが荒く、筆致も乱暴だが、なぜか目を離せない力がある。カーラはじっとそれを見つめ、時折首を傾げる。羽根が微かに震え、鎧の金具が小さな音を立てた。

「あの絵、気に入った?」

 フィオラは声をかけた。カーラは振り向き、苦笑いを浮かべる。

「わたしには、まだ何を描いているのかわからない。でも、見ていると胸の奥がざわつく」

「それが答えよ。絵は、頭で理解するものじゃない」

 フィオラは立ち上がり、カーラの隣まで歩いた。床が古いため、一歩ごとにきしむ音がする。「この絵はね、ある男の夢なの。彼は毎晩、同じ場所を見る。暗い海と、光る島。でも、島に近づこうとすると必ず目が覚める。だから、島の上に何があるのか、誰も知らない」

 カーラは再び絵を見た。今度は、瞳に興味の色が浮かんでいた。

「夢を描いた、か。なるほど、だから筆致が宙に浮いているような不安定さがあるのだな」

 二人の背後で、小さな音がした。振り返ると、月日リアナが雑巾を握り、床を這うように拭いていた。黒い髪が揺れ、赤い目がちらりと上がる。彼女は黙々と作業を続け、隅の埃まで逃さない。フィオラは微笑んだ。

「リアナ、休憩してもいいのよ。今日は客も少ないし」

「いつも少ないけどな」

 ブラックヴァルキリー・カーラがそう付け加える。

「いいのよ。たくさん来られてもめんどうね~~」

 とフィオラが反論する。

「だ、大丈夫です。あと少しで終わりますから」

 リアナは顔を上げ、慌てて返事をした。声は小さく、手は休まない。フィオラはため息をついた。こういう子だから面倒を見がいがある、と思う反面、時にはもう少し楽をしてもいいのに、とも思う。

 カーラがくすりと笑った。

「彼女、まるで働きアリだな。休むことを知らない」

「元の世界では、教育実習生だったそうよ。子供相手に忙しくしてたせいか、体が動かないと落ち着かないのかも」

 フィオラは肩をすくめた。

「ま、画廊が綺麗で助かってるけどね」

 その時、入り口のチャイムが鳴った。重い足音がして、伊藤あぽぽーが現れた。彼は体の半分以上を占めるような腹を抱え、額に汗を浮かべながら店内を見回す。眼鏡のレンズが光って、目の位置がわからなくなった。

「やあ、フィオラさん。今日もいい品々が並んでいますね」

伊藤あぽぽーは、以前なら

「この色使いは低俗だ」

「筆致が甘い」

 などと毒づいていた。でも、今日は珍しく穏やかだった。彼は一番大きな風景画の前に立ち、しばらく黙って見上げている。額の汗をハンカチで拭い、小さく息を吐いた。

「……これは、ヴァーレンスの旧市街だな。懐かしい」

「気に入った?」

 フィオラは訊ねた。

「まあな」

 伊藤あぽぽーは短く答え、くるりと背を向けた。

「また来るよ」

 それだけ言って、彼は重い足取りで出て行った。扉が閉まる音がして、再び静けさが戻った。フィオラは首を傾げた。

「……変わったわね」

「人も、絵も、変わるものだ」

 カーラが呟いた。

「時間というやつは、埃を落としてくれることもある」

 フィオラは、カーラの言葉を噛みしめるように頷いた。そして、ふと思い出したように奥の部屋へ向かった。数分後、彼女は大きなキャンバスを抱えて戻って来た。新しい絵だ。まだフレームに入っていない。

「これを、あの壁に掛けたいの。手伝ってくれる?」

 カーラは頷き、リアナも立ち上がった。二人が絵を持ち、フィオラが指示する。三人は壁の中央に立ち、高さを調整しながら、一番良い位置を探した。

「ん……もうちょっと丁寧に」

 フィオラは眉を寄せた。

「カーラ、端を持ちすぎ。絵が曲がってる」

「ご、ごめんなさい」

 月日リアナが慌てて謝る。

「あなたじゃないの。むしろカーラに言ってるんだけどね」

 フィオラは苦笑いし、首を振った。

「この人、力が強すぎて、絵が悲鳴を上げてるわ」

 カーラは照れくさそうに羽根を小さく動かした。

「すまん。戦場の癖が出てしまった」

「画廊は戦場じゃないのよ」

 フィオラは笑いながら、絵の位置を直した。

「ここでは、力よりも呼吸が大事。絵と絵の間に、ちゃんと余白を作ってあげないと、見る人が息苦しくなる」

 リアナが小さく頷いた。彼女はフィオラ的の言葉を真剣に受け止め、もう一度絵の端に手を添う。今度はゆっくりと、まるで生き物を扱うように、そっと動かした。

「……そう、それでいい」

 フィオラは満足そうに頷いた。

「配置のバランスが悪い。もうちょっと隣の絵と離して」

 三人は息を合わせて、絵を少し右にずらした。隣の風景画との距離が開き、空間にゆとりが生まれた。フィオラは腕を組み、しばらく眺めてから、再び口を開いた。

「魔導ライトの光量、落ちてるわね。変えておくか」

 彼女は背中の白い翼を広げた。羽根が風を切り、部屋中に小さな旋風が起こる。フィオラは軽く地面を蹴ると、ゆっくりと宙に浮いた。天井近くのライトに手を伸ばし、古い球を外して、新しいものに交換する。カチリ、という小さな音がして、明かりが明るくなった。

床に降り立つとき、彼女の黒いしっぽがぴんと立ち、バランスを取った。羽根を収めると、再び画廊は静けさを取り戻した。

「……やれやれ」

 フィオラは息を吐き、髪を手で整えた。

「面倒くさがりのくせに、こういうことだけは手を抜かないな」

 カーラが笑った。

「それが、お前の美学ってやつか」

「かもね」

 フィオラは赤い瞳を細め、新しく掛かった絵を見つめた。

「絵は、見る人の心を映す鏡。だから、飾る場所も、光も、全部大切。少しでも粗雑にすると、絵が泣く」

 リアナが黙って頷いた。彼女の目に、新しい絵が輝いて見える。光と影のバランスが整い、部屋の空気までが柔らかくなった気がした。

 フィオラは再び椅子に座り、脚を組んだ。今度は、少しだけ表情が柔らかい。

「……ま、今日はこれでいいか」

 カーラは絵に向き直り、腕を組んだ。リアナは雑巾を握り、また隅の方へ歩いて行く。外では、風が木々を揺らし、遠くで鐘の音がした。

 画廊は、再び日常の時間を取り戻した。誰も語らないが、三人の間に流れる空気は、穏やかで、温かかった。絵は黙って吊るされ、光は静かに注がれ、埃はまた少しずつ溜まって行く。でも、それでいい。ここは、時間がゆっくり流れる場所なのだから。

Últimos capítulos

第25章 さようならスレイプニル、こんにちはクロノス

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Última atualização: 2026-02-24
第24章 クロノスフェザー

雨が窓を打つ音が、まるで小石をばら撒くように続いていた。古いギャラリーの奥室、フィオラは重い椅子に腰を沈め、膝の上に置いたパソコンの画面を見つめている。部屋の明かりは一つだけで、明かりが足りな

Última atualização: 2026-02-24
第23章 そこら辺を調べるのが、君の管轄だろ? 竜の骨董品屋さん?

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