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遺跡の謎で太古の生活を知る

遺跡の謎で太古の生活を知る

Terakhir Diperbarui: 2026-07-15 06:18:00
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ギャラリー黒竜に新たに飾るものを探すべく、遺跡に通うフィオラ達。


そこでフィオラ達は、色々なものを発見してゆく。


Bab1

 午後の日差しが石畳を白く焼く。  
 デュポン街の端、枯れた井戸と並ぶ石造りの番所で、フィオラは許可証を掲げた。

「ギャラリー黒竜所属、フィオラ=アマオカミ。同行三人」

 番兵は蝋色のロウブックに記帳し、鍵束を鳴らしてくぐり戸を開く。  
重い音を立てて鉄檻が分かれた。風が吹き抜け、埃と苔の匂いが立ち上った。

レティチュが最初に中へ飛び込み、すぐに振り返った。

「わぁ、すぐ崩れそうな階段でーす。忍者の教科書に‘危険感知’ってヤツですね」

「退け、子供」  
 ブラックヴァルキリー・カーラが羽根を広げて先に立つ。漆黒の翼が薄暗がりに浮かび、彼女自身が灯台になった。

 月日リアナは肩で息をしながら、フィオラの袖を引いた。

「……本当に入るのですか? 中で命落とすニュース、毎月二件は聞きます」

「入らなきゃ謎は解けないわよ」  
 フィオラは赤い瞳を細め、口元をゆるめる。

「それに、あなたが心配するほどわたし脆くはないわよ」

 一行が中へ踏み込むと、番兵は無言で戸を閉めた。錠前の音が遅れて追いかけてきた。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 薄闇のホールは円筒形で、天井から根のような石筍が垂れている。  
 壁面に彫られた溝に青い燐光が灯り、床の石畳は水鏡のように光っていた。

 ブラックヴァルキリー・カーラが槍を突き出し、石を軽く叩く。

「……浮いてる。重さ感覚が狂う」

 レティチュは片足で踏ん張り、思わず腕を回した。

「重力が斜めでーす。忍者としては楽しい状況、でも胃袋が引っ張られて気持ち悪い」

 リアナは額に汗をにじませ、小さく息を吐く。

「まるで船に乗ったみたい……足場がぶれてる」

 フィオラだけが足取り軽く奥へ進む。彼女の黒いしっぽが床を這い、石に微かな音を立てた。

「時間軸が混じり合ってる証拠。ここは‘並行’の巣」



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 奥へ進むほど、廊下の形が歪む。  
 壁が呼吸するように膨らみ、縮み、床が波打つ。

 一行は這うようにして石橋を渡る。橋の下は深い空洞で、底のない星の光が瞬いていた。

 レティチュが屈んで空洞を覗き込む。

「下に街並みが映ってる!  見知らぬ建物……あれ、未来?」

「見るな」  
 カーラが襟首を掴んで引き戻す。

「深く見れば記憶を削られる。自我が削げる」

リアナは唇を噛み、橋の欄干に指を這わせる。

「私……大学のキャンパスを思い出せない。教室の色が抜けてく」

フィオラが立ち止まり、掌で彼女の額を覆った。

「‘今’を数えろ。一、二、三――」

カウントが十に達する頃、リアナの瞳に焦りが戻る。

「……なんとか戻った。ありがとう」

「時間の渦に卷き込まれるな。自分の名前を忘れたら終わりだ」



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 先に広がったのは、巨大な円形の祭殿だった。  
 中央に祭壇、そして石の櫃――棺のような箱が鎮座している。

 壁面に無数の文字が浮かび、読むたびに意味がすり替わる。

 レティチュが短刀を逆手に持ち、周囲を警戒した。

「呪いの紋様でーす。触ると魂を縛られるって書いてあーりまーす」

 カーラは眉をひそめ、槍の穂先で床を滑らせる。

「……魂の欠片がこもってる。まるで貯金箱」

 リアナは胸の前で指を組み、小さく震えた。

「この箱を開けたら、本当に世界が変わる?」

 フィオラは祭壇を一周し、指で蓋の継ぎ目を撫でる。

「中身は‘時間の結晶’かもしれない。あるいは、封じられた神々」

 レティチュが忍び寄り、耳を澄ます。

「音がする……鼓動みたいな。これ、生きてる?」

 カーラが槍を構えた。

「戻ろう。情報は十分。ここは王国の管轄外になる」

 フィオラは振り向き、三人を見渡す。

「私は開ける。興味がある」

 リアナが顔を上げた。

「……私も見たい。でも、怖い」

 レティチュはにやりと笑う。

「わたしは忍者。危険と隣合わせが本懐でーす」

 カーラは息を吐き、槍を収めた。

「仕方ない。三分だけ。それで駄目なら撤退だぞ」



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 四人が祭壇に手を載せた瞬間、文字が迸った。  
 光の鎖が腕を這い、指の隙間に潜り込む。

 祭壇が回転し、床が割れた。  
 下から覗いたのは、星の海だった。

 無数の時間が波打ち、過去と未来が魚の群のように泳いでいる。

 リアナが掠れた声を上げる。

「私の足……消えかけてる!」

 レティチュの体がぼやけ、輪郭が滲む。

「わ、わたしも! 存在が薄れてくでーす!」

 カーラは羽根を広げ、二人を抱き寄せた。

「自己を語れ。名前、生まれ、今日の朝食まで!」

 フィオラだけが、星の海を見下ろし、呟く。

「これが‘変な’の正体か。時間を削ぎ、存在を削ぐアホめ」

 彼女は黒いしっぽを振り、星の海に突き立てた。

 しっぽが量子化し、光の粒を弾く。  
 海面が割れ、沈みかけた三人を戻す。

 量子化まで使えるフィオラ=アマオカミにとっては焦るべきアクシデントではなかった。まだ魔導PCがつかなくなった時の方が焦った。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 祭壇の蓋が開いた。  
 中から現れたのは、模型だった。

 街並みが縮景され、人々が歩き、雨が降り、晴れ、また雨が降る。  
 一日が一秒で巡り、一年が一分で終わる。

 レティチュが息を呑む。

「これ……世界の模型?」

 リアナは指を伸ばし、水晶に触れかけ――  
 フィオラがその手を制した。

「触れると、中に引き込まれる。外から見るだけにしろ」

 カーラが櫃の蓋を静かに閉める。

「持ち出すわけにはいかない。王国に報告し、対応を待つ」

 フィオラは頬を緩め、振り向いた。

「そうしましょ。……でも、私はあの‘一日一秒の世界’をもう一度見たい気もするけどね」



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



帰路、廊下は揺れなかった。  
時間の歪みが収まり、床は水平を取り戻していた。

一行が番所を出ると、西空が赤く染まり、街灯が灯り始めていた。

番兵は無言で鍵をかけ、フィオラに書類を手渡す。

「持出し品、なし。――報告書は明日、王城へ」

 フィオラは受け取り、微笑んだ。

「ええ、なしよ。……全部、此処に置いてきた」

 リアナは肩で息をし、夕風に髪をなびかせる。

「また来るの?」

「来るわ。あの模型――‘一日一秒の世界’を、もう一度」

 レティチュが伸びをし、くるりと回る。

「次は忍者綱渡りで奥まで行きたいでーす」

ブラックヴァルキリー・カーラだけが、背後の鉄檻を見据えたまま、呟く。

「次は、もう戻れないかもしれない」

 四人の影が長く伸び、遺跡の入り口は音もなく閉ざされた。  
 中で、小さな水晶が瞬き、また一日が一秒で巡り始めた。

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