Synopsis
不慮の死から目覚めると、そこは企業が全てを支配するデストピア。自分は3時間後に処刑される「悪役」に転生していた。
絶望の中、現れた悪魔と契約したあなたは、世界の定義を書き換える力【スペック・エディター】を手に入れる。
能力を使うたびに失われるのは、大切な「感情」。
果たしてあなたは人間性を失う前に、この歪んだ世界のアルゴリズムを修正(デバッグ)し、人々を救うことができるのか?
Chapitre1
第1章 処刑まで残り三時間
Scene 1:赤光の目覚め
赤い光が、世界の輪郭をゆっくりと形づくっていく。
それは警告灯というより、巨大な機械の内部で脈打つ血管のようだった。
一定の周期で明滅する赤色照明が、閉ざされた空間の闇を押し返している。
あなたは、硬い床の冷たさによって意識を取り戻した。
重い頭を持ち上げる。
首元に、鋭く冷たい感触があった。
拘束具。
呼吸のたび、金属の輪がわずかに締まる。
まるで生命活動そのものが、数値として計測されているようだった。
「起床を確認。処刑執行まで——残り三時間」
感情のない機械音声が響いた。
処刑。
その言葉の意味を理解するまで、数秒を要した。
なぜ、自分が?
あなたは周囲を見渡した。
赤い照明、錆びた鉄床、壁面を埋め尽くす監視カメラ。
そして、天井中央の巨大なモニター。
そこには、あなたを人間ではなく、処理対象として定義する文字列が表示されていた。
《処刑対象7342:匿名個体》
《階層:三下》
《評価値:0.12》
《裏切り判定:有効》
「……裏切り判定か。ずいぶんと一方的な定義だね」
その瞬間、忘れていた記憶が浮かび上がる。
企業の心臓部で発見したデータ改ざん。
内部告発の準備。
沈黙を選んだ上層部。
雨の夜、背後から近づいてきた足音。
事故に見せかけられた殺害。
自分は死んだはずだった。
それなのに、ここにいる。
しかも、正義を告発しようとした者ではなく、処刑されるべき悪役として。
怒りが胸の奥で燃えた。
しかし、その怒りを押しのけるように、別の疑問が生まれた。
——なぜ、こんな世界が許されるのか。
——なぜ、企業の都合で正義が悪へと変換されるのか。
赤い光の一部が、不自然に歪んだ。
その裂け目から、黒い影が立ち上がる。
「ようやく目覚めたか、人間」
影は、煙のように揺らめきながら輪郭を得た。
「処刑まで三時間。逃げ道はない。だが、契約という選択肢なら残っている」
あなたは影を見つめた。
「悪魔か」
「そう呼ばれている。あるいは、このシステムからこぼれ落ちた異常な機能だ」
悪魔が指を鳴らす。
空中に、黄金色の文字列が浮かび上がった。
《血の掟:裏切り者は死》
「この世界では、裏切りの定義を上位権限者が決める。
君の告発は、企業に害を与える行為として記録された。
だから、君は悪役になった」
「その定義を書き換えられるのかい?」
「契約を結べばね。ただし、条件がある」
悪魔は手を差し出した。
「書き換えられるのは“既存の定義”だけだ。
嘘の定義は変更できない。
対象の同意か告白が必要だ。
そして——代償は感情だ。
能力を使うたび、怒り、絶望、悲しみ、あるいは希望の一部が失われる」
あなたは、しばらく黙っていた。
感情を失えば、自分は自分でなくなるかもしれない。
だが、何も知らないまま消去されるよりは、問いを残したまま終わるほうが耐え難かった。
「契約する」
あなたは、悪魔の手を取った。
「その代わり、私の判断まで奪わないでくれ。この世界を変えるかどうかは、私自身が決める」
悪魔の赤い瞳が細められた。
「……なるほど。力ではなく、選択を求めるか」
空間に浮かんだ文字列が、黒い炎に包まれる。
《血の掟:裏切り者は死》
↓
《血の掟:裏切りとは、他者の生命と選択を故意に奪う行為とする》
炎が消える。
拘束具が、乾いた音を立てて外れた。
同時に、胸の奥で燃えていた怒りが、ほんの少し薄くなった。
「これが、代償か」
「そうだ。君は今、怒りの一部を失った」
あなたは首元に触れ、ゆっくりと立ち上がった。
怒りは薄れた。
しかし、疑問は残っている。
そして、その疑問から、新たな意志が生まれ始めていた。
「なぜ、こんな世界が許されるのか。まずは、その答えを探そう」
廊下の奥から、足音が近づいてきた。
監視役たちだ。
壁面のモニターに、新たな警告が表示される。
《異常値7342:処刑プロトコル再起動》
《監視役ユニット:接触まで十秒》
あなたは、拘束具の外れた首元に触れた。
そして、赤い光の向こうにある扉を見つめる。
「話をしよう」
扉が開く。
その先にいる者たちもまた、この世界のルールに縛られている。
ならば、最初に変えるべきなのは、彼らではない。
彼らを縛っている、ルールのほうだ。
Derniers chapitres
**第4章 アルゴリズムとの対峙 ― 新しい契約の胎動
**
Scene 1:最上階 ― “効率の王”の部屋
最上階の扉が開いた瞬間、
**第3章 小ボス層の告白と“圧力の構造”
**
Scene 1:沈黙の会議室 ― 圧力の中継点
中層部の会議室は、静寂そのものだった
第2章 三下の監視役
Scene 1:監視役の廊下 ― “命令”と“選択”の境界
扉が開いた瞬間、赤い光が青白い廊下へ流れ込み、
あなたの影を長く引き伸ばし
第1章 処刑まで残り三時間
Scene 1:赤光の目覚め
赤い光が、世界の輪郭をゆっくりと形づくっていく。
それは警告灯というより、巨大な機械の内部で脈打つ血







