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青銅の王と石の民

青銅の王と石の民

Last Updated: 2026-10-15 06:28:53
By: レール
Completed
Language:  日本語4+
4.8
5 Rating
7
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Synopsis

追放の果てに得たものとは?


Chapter1

# 青銅の王と石の民




スコーグ王国の王城は、青銅の輝きに包まれていた。高さ三十メートルに及ぶ城壁は、磨かれた青銅板で覆われ、朝日にきらめく様は遠くからでも確認できた。城内では、鍛冶屋の槌の音が響き、兵士たちが磨いた鎧と剣を身に着けて訓練に励んでいた。この王国を統べるのは、最強の剣士として名高いスヴェルト・ルーパ王であった。かつては「辺境の狼」と恐れられ、単騎で蛮族の集落を壊滅させたこともあるその武勇は、王国の礎となっていた。


しかし、王には誰もが知る弱点があった。酒癖の悪さである。


「陛下、もうおやめくださいませ」


側近の老騎士ベルントがすすめるが、スヴェルトは手にした青銅製の盃を逆さに傾け、濃い赤ワインを一気に飲み干した。


「うるさい!余は王だ!酒を飲もうと、女を抱こうと、誰が止められよう!」


玉座の間は、今夜も宴会の真っ最中だった。豪華な毛皮の敷物の上には、食べ残りの鹿肉やパンが散らばり、楽師たちは疲れた様子で竪琴をかき鳴らしていた。家臣たちの顔には、疲労と恐怖が混ざった複雑な表情が浮かんでいる。


スヴェルトは立ち上がり、よろめきながら老騎士に近づいた。


「お前、ベルント…昔はもっと面白い男だったのにな。年を取って、小心者になったか?」


「陛下…」


「黙れ!」


スヴェルトの拳がベルントの頬を打った。鈍い音が響き、老騎士は床に倒れた。周囲の家臣たちは一歩後退するが、誰も介入しようとはしない。この三年間、同じような光景が幾度も繰り返されてきたのだ。


「余はな…この国を守ってきた!蛮族を蹴散らし、長城を築き、お前たちに平和を与えてやった!それなのに、ええい恩知らずども!」


スヴェルトはまた盃を傾けようとするが、すでに酒壺は空だった。


「酒だ!もっと酒を持ってこい!」


侍女が新たな壺を持ってくると、スヴェルトはそれを奪い取るように掴み、直接口をつけて飲み始めた。赤い液体が彼のあごを伝い、豪華な青銅の胸当てを汚していく。


「陛下、そろそろお休みになられた方が…」


若い騎士が小声で言うと、スヴェルトの目が鋭く光った。


「何だと?余に命令する気か?」


「い、いえ…」


「剣を持て!今すぐここで決闘だ!余がお前の不敬を許してやろう!」


スヴェルトは腰の青銅剣に手をかけるが、酔いが深く、うまく抜けない。もがいているうちにバランスを崩し、豪華な毛皮の上にどさりと倒れた。いびきがすぐに響き始めた。


玉座の間は沈黙に包まれた。家臣たちは互いの顔を見交わす。ベルントがゆっくりと立ち上がり、頬の腫れを押さえながら言った。


「もう…我慢の限界だ」


「ですが、陛下は我が国の最強の剣士です」若い騎士が言う。「正面から対抗できる者などいません」


「だからこそ、こうしている間にしかできない」


ベルントの目には、長年培った決意の色があった。彼は他の重臣たちに目配せすると、皆がゆっくりとうなずいた。


その夜、真夜中過ぎのことだった。


スヴェルトは深い酔いと疲労からくる昏睡状態にあった。彼を運ぶのはベルントを含む六人の騎士たちで、皆、顔を隠す仮面を着けていた。スヴェルトは寝間着一枚の姿で、普段離すことのない青銅剣一本だけが彼の傍らに置かれていた。


「急げ。明け方までに長城の外へ」


彼らは秘密の通路を通り、城内を抜けた。スコーグ王国の誇る「境の長城」は、蛮族の侵攻を防ぐために築かれた高さ十五メートルの巨大な壁だった。その外側には、未知の荒野が広がっている。


「境の長城」の門の前に到着すると、ベルントはため息をついた。


「陛下…いや、スヴェルトよ。かつてあなたは偉大な王だった。しかし、酒があなたを変えてしまった」


騎士達が、スヴェルトを門から運び出して荒野に置き去りにする。


「我々は王国を守るために、この苦渋の決断を下す。どうか、いつかこの真意を理解してくれることを願おう」


冷たい夜風がスヴェルトの寝間着を揺らした。


やがて、夜明け前の闇の中、スヴェルトは一人きりで目を覚ました。











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