青銅の王と石の民
Synopsis
追放の果てに得たものとは?
Chapter1
# 青銅の王と石の民
スコーグ王国の王城は、青銅の輝きに包まれていた。高さ三十メートルに及ぶ城壁は、磨かれた青銅板で覆われ、朝日にきらめく様は遠くからでも確認できた。城内では、鍛冶屋の槌の音が響き、兵士たちが磨いた鎧と剣を身に着けて訓練に励んでいた。この王国を統べるのは、最強の剣士として名高いスヴェルト・ルーパ王であった。かつては「辺境の狼」と恐れられ、単騎で蛮族の集落を壊滅させたこともあるその武勇は、王国の礎となっていた。
しかし、王には誰もが知る弱点があった。酒癖の悪さである。
「陛下、もうおやめくださいませ」
側近の老騎士ベルントがすすめるが、スヴェルトは手にした青銅製の盃を逆さに傾け、濃い赤ワインを一気に飲み干した。
「うるさい!余は王だ!酒を飲もうと、女を抱こうと、誰が止められよう!」
玉座の間は、今夜も宴会の真っ最中だった。豪華な毛皮の敷物の上には、食べ残りの鹿肉やパンが散らばり、楽師たちは疲れた様子で竪琴をかき鳴らしていた。家臣たちの顔には、疲労と恐怖が混ざった複雑な表情が浮かんでいる。
スヴェルトは立ち上がり、よろめきながら老騎士に近づいた。
「お前、ベルント…昔はもっと面白い男だったのにな。年を取って、小心者になったか?」
「陛下…」
「黙れ!」
スヴェルトの拳がベルントの頬を打った。鈍い音が響き、老騎士は床に倒れた。周囲の家臣たちは一歩後退するが、誰も介入しようとはしない。この三年間、同じような光景が幾度も繰り返されてきたのだ。
「余はな…この国を守ってきた!蛮族を蹴散らし、長城を築き、お前たちに平和を与えてやった!それなのに、ええい恩知らずども!」
スヴェルトはまた盃を傾けようとするが、すでに酒壺は空だった。
「酒だ!もっと酒を持ってこい!」
侍女が新たな壺を持ってくると、スヴェルトはそれを奪い取るように掴み、直接口をつけて飲み始めた。赤い液体が彼のあごを伝い、豪華な青銅の胸当てを汚していく。
「陛下、そろそろお休みになられた方が…」
若い騎士が小声で言うと、スヴェルトの目が鋭く光った。
「何だと?余に命令する気か?」
「い、いえ…」
「剣を持て!今すぐここで決闘だ!余がお前の不敬を許してやろう!」
スヴェルトは腰の青銅剣に手をかけるが、酔いが深く、うまく抜けない。もがいているうちにバランスを崩し、豪華な毛皮の上にどさりと倒れた。いびきがすぐに響き始めた。
玉座の間は沈黙に包まれた。家臣たちは互いの顔を見交わす。ベルントがゆっくりと立ち上がり、頬の腫れを押さえながら言った。
「もう…我慢の限界だ」
「ですが、陛下は我が国の最強の剣士です」若い騎士が言う。「正面から対抗できる者などいません」
「だからこそ、こうしている間にしかできない」
ベルントの目には、長年培った決意の色があった。彼は他の重臣たちに目配せすると、皆がゆっくりとうなずいた。
その夜、真夜中過ぎのことだった。
スヴェルトは深い酔いと疲労からくる昏睡状態にあった。彼を運ぶのはベルントを含む六人の騎士たちで、皆、顔を隠す仮面を着けていた。スヴェルトは寝間着一枚の姿で、普段離すことのない青銅剣一本だけが彼の傍らに置かれていた。
「急げ。明け方までに長城の外へ」
彼らは秘密の通路を通り、城内を抜けた。スコーグ王国の誇る「境の長城」は、蛮族の侵攻を防ぐために築かれた高さ十五メートルの巨大な壁だった。その外側には、未知の荒野が広がっている。
「境の長城」の門の前に到着すると、ベルントはため息をついた。
「陛下…いや、スヴェルトよ。かつてあなたは偉大な王だった。しかし、酒があなたを変えてしまった」
騎士達が、スヴェルトを門から運び出して荒野に置き去りにする。
「我々は王国を守るために、この苦渋の決断を下す。どうか、いつかこの真意を理解してくれることを願おう」
冷たい夜風がスヴェルトの寝間着を揺らした。
やがて、夜明け前の闇の中、スヴェルトは一人きりで目を覚ました。
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冬が深まるにつれ、スヴェルトはスタイノンド族の生活に完全に溶け込んでいった。彼はもはや「よそ者」ではなく、集落の長老の一人として扱われるようになった。
三ヶ月が経ち、季節は秋から初冬へと変わりつつあった。スタイノンド族は冬支度を始め、食料の保存や住居の補修に忙しかった。スヴェルトもその一員として働き、
スヴェルトがスタイノンド族と暮らし始めて二ヶ月が経った頃、ある変化が彼の中で起こっていた。酒を欲しなくなったのだ。
それから数週間、スヴェルトはスタイノンド族の一員として生活した。最初は不器用だったが、次第に彼らの仕事にも慣れていった。石器作りや狩り、皮なめし——す







