百世飛昇 〜子孫に転生し続けて不老不死を目指す〜
Synopsis
一族の血脈が続く限り、私は何度でも蘇る。至宝『百世書』を手に、悠久の時を渡る転生者・趙昇(八木沢)。かつて武門の名家だった一族を、彼は世代を超えた策略と修仙の力で、天を突く巨大な門閥へと育て上げていく。
星々の煌めく砕星海から、冥府の如き幽神界まで、全宇宙を揺るがす戦乱の影。その背後で糸を引く『血神』を討ち、彼はただ一人、雲の上の高み――青冥への飛昇を目指す。百世にわたる宿命を越え、究極の長生を掴み取るための壮大な旅が今、始まる。
Chapter1
梁国、甘州。
正月が明けて間もない頃、甘州の江湖を揺るがす大きな事件が起きた。
南陽城に拠を構える八木沢家の当主――八木沢家の「老太爺」が突如として引退を宣言し、家督を長孫である八木沢明誠に譲ると発表したのだ。
この報せが轟然と広まると同時に、裏ではある噂がまことしやかに囁かれ始めた。大旦那は先天宗師の域に達した武人ではあるが、その出自は小作農に過ぎない。若き日に強さを求めるあまり功を焦り、根基を損なったため、その天寿は八十を超えられず、今まさに死の淵にあるのだという。
今回の引退劇は、実のところ、既に事切れた事実を隠蔽するための芝居ではないか。
八木沢家側は当然ながらこれらの噂を断固として否定し、火消しに走った。だが、外部の喧騒を余所に、引退したはずの大旦那が公の場に姿を見せることは一度もなかった。
それゆえに、流言はあながち偽りとも言い切れず、八木沢家の必死の否定も、端から見れば滑稽な虚勢にしか映らなかったのである。
氏名:八木沢 昇
寿元:79 / 79
体質:筋骨強健(不入流)
天賦:動体視力(凡級)
技能:浮光剣法(炉火純青)、追風箭法(出神入化)、碧海潮生功(大成)、雲龍三変(炉火純青)
「第二の人生終了。清算を開始します……」
「清算完了。最終評価:丙の上」
「評価報酬:体質、技能、天賦の中から一つを選択して継承可能です。選択してください」
(……よし、天賦『動体視力』の継承を選択する)
天賦が継承されました。
「おめでとうございます。二つの人生実績を達成しました。一、先天宗師。二、多子多福(10 / 10)」
「実績報酬:ランダム報酬を二回獲得。体質、技能、天賦の中から抽選されます。または天賦レベルの昇格に振り替えることも可能です。選択してください」
(体質を選択、二回連続で抽選だ)
「抽選中……おめでとうございます。凡級体質『百寿体』を獲得しました。おめでとうございます。凡級体質『燕のごとき身のこなし』を獲得しました」
八木沢家の内宅。
一間の寝室で、八木沢昇はがばりと身を起こした。意識に流れ込む情報の奔流に、彼は失意の色を浮かべ、細く長い溜息を吐き出した。
第一世と比べれば、第二世の最終評価は向上した。第一世の「丙の下」より二段階高く、二つの人生実績も達成した。
だが惜しむらくは、今回も「霊根」を備えた体質を引き当てることはできなかった。
「数えてみれば、この世界に来てからこれで三度目か……」
昇は感慨に耽りながら、周囲を見渡した。部屋の装飾は雅やかで、設えられた家具も精巧なものばかりだ。
どうやら家境は悪くないらしい。第二世のように家道が没落した状態からのスタートではないことに、まずは安堵した。
二百年余り前、昇が初めてこの世界に降り立った時、彼は平凡な家庭に転生した。成人後、前世の知識と見聞を駆使して瞬く間に財を成し、わずか十数年で一城を代表する富豪へと上り詰めた。
後半生は栄華を極め、妻妾に囲まれ、多くの子孫にも恵まれた。まさに人間界の幸福を享受し尽くした一生だった。
だが、八十歳で不治の病に倒れた時、今際の際に出会った神医の口から「修仙者」の存在を知らされ、彼は猛烈な後悔に襲われた。
しかし、時既に遅し。あと一日だけ命を繋ぎ止めるのが精一杯で、昇はそのまま息を引き取った。
ところが死の直後、彼は自らの内に至宝「百世書」が宿っていることに気づいた。自らの血脈を引く後代の身に、何度でも転生できるという奇跡の書だ。血脈が絶えない限り、魂は不滅。その真実を知り、昇は狂喜した。
「動体視力」の天賦を携え、彼は急ぎ第二世へと足を踏み入れた。
第二世で目を覚ました時、彼は小作農の息子になっていた。詳しく探ってみれば、第一世の死から既に百年近い歳月が流れていた。
かつての八木沢家は、彼の死後わずか五年で盗賊団に襲われ、一族郎党皆殺しの憂き目に遭っていたのだ。幸いにも、当時は一人の息子が遊学に出ていたため、かろうじて血脈だけは保たれていた。
だが家道は凋落の一途を辿り、代を重ねるごとに零落し、父の代には小作農にまで身を落としていた。
それでも昇は動じなかった。この世で再び家門を再興し、武を練り、修仙の道を得て不老長生を求める。それこそが彼の誓いだった。
十年後、彼は再び莫大な家産を築き、武功も天賦「動体視力」の恩恵で目覚ましい進歩を遂げ、難なく二流の使い手へと成長した。
しかし、その十年間、修仙者の行方については一向に手がかりが掴めなかった。
熟考の末、彼は妻子も家業も投げ打ち、一人江湖を渡り歩く旅に出た。
放浪の旅は二十年に及んだ。
五十五歳の時、昇は霊丹の力を借りて辛うじて先天境界へと突破し、甘州屈指の絶頂宗師となった。
立ち位置が変われば、見える景色も変わる。先天宗師となったことで、彼は自然と修仙者との接点を持つに至った。
それから半年後、昇はある修仙者の口から残酷な真実を聞かされた。「霊根」を持つ者でなければ、仙道を歩むことは叶わない、と。
そして昇には霊根がなく、さらに不幸なことに、凡人が霊根を持って生まれる確率は万に一つにも満たないという事実だった。
救いだったのは、もう一つの鍵となる情報を得たことだ。修仙者の後代には、霊根を持つ子が生まれる確率が格段に高いということ。
半年後、南陽城に戻った昇は、すぐさま子孫たちの縁談に奔走し始めた。狙いは当然、修仙一族の娘だ。
だが、その目的を果たすのは至難の業だった。
修仙界は閉鎖的で、極めて排他的である。霊根の誕生率を維持するため、修仙者は修仙者と結ばれるのが常であり、家門同士も互いにのみ婚姻を結ぶ。凡人の一族が修仙家の娘を娶るなど、本来は身の程知らずの妄想に過ぎない。
昇は策を弄し、家産の半分以上を献上しただけでなく、自ら二十年の奉公契約に署名するという屈辱的な条件を飲み、ようやく修仙一族である陳家を承服させた。そうして、傍系の庶子である娘を、長孫の明誠へと嫁がせる約束を取り付けたのである。
「修仙の道は険しく、青天に昇るよりも難いか……。前世では死力を尽くしてなお、その曙光をかろうじて拝むのが精一杯だった。今世こそは……悲願を成し遂げられるだろうか」
前世の辛苦を思い返し、昇は小さく溜息を吐いた。だが、彼には至宝「百世書」がある。今世が駄目なら、次へ。次が駄目なら、そのまた次へ繋げばいい。
そう思い定めると、昇は意識を識海の奥深くへと沈めた。そこには、玉色の輝きを放つ一冊の書物が浮かんでいた。
表紙には「百世」の二文字が刻まれている。書が静かに開かれる。残された九十七枚の頁は未だ空白だが、冒頭の三枚には文字が記されていた。
最初の二枚の内容は既に熟知している。昇の視線は、三枚目の記述に止まった。
姓名:八木沢 志秦(八木沢 昇)
寿元:15 / 120
体質:百歳体(凡級)、燕のごとき身のこなし(凡級)
天賦:動体視力(凡級)
技能:浮光剣法(熟練)、雲龍三変(入門)、碧海潮生功(入門)
「『志』の世代か……」
昇は独り言ち、思考を巡らせた。前の人生で、彼は八木沢家に代々の通し字を定めていた。
奉、賢、明、仁、宗、全、真、篤、太、和。至、誠、宣、玉、典、中、正、常、金、科。沖、玄、通、漢、蘊、高、宏、鼎、大、羅、道、徳、演、清、華、修、仙、貴、長、生。
「志(至)」の字は、数えれば第十一代目にあたる。
今世の記憶を紐解けば、前世の死から既に百六十年以上の時が流れていた。八木沢家は没落するどころか、人口千人を超える大一族へと成長を遂げていた。その産業は甘州全土に広がり、江湖の裏表に通じる屈指の武道名門として名を馳せている。
今世における昇の身分も、決して低くはない。両親は既に他界しているが、八木沢家三房の直系子弟として、その生を授かっていた。
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Latest Chapters
三百年後、天柱界。 八木沢一族の祖地の外では、青山はなおも連なり、果てしない雲海が広がっていた。 新たに建てられた学宮では、少年たちが石碑を囲み、熱心に議論を交わしている。石碑に刻まれているのは、
血神は狂乱した。 億万の血線が狂ったように収縮し、八木沢昇の神念を完全に抹消しようと抗う。しかし、血線が一根引き戻されるたびに、諸界には一筋の灯火がともった。記憶が一段呑み込まれるたびに、陣法の中で、
巨手が崩れ去った瞬間、血神の相貌に初めて驚愕と怒りの色が走った。 奴は退かなかった。それどころか、口を大きく開いて周囲の気を吸い込む。無辺の血雲が逆流し、天道の法則を成す弦の上に数万年かけて積み上げら
血の海が逆巻き、天地が裂ける。 激昂した血神により、蒼穹は果てなき深紅へと染まった。万里を覆う巨大な血の手が、天から圧し掛かってくる。その手が届く前から、蜈洲海は白煙を上げて蒸騰し、数十の浮空霊島が轟







