Synopsis
カケルはソロ撮影の旅行中、昔遊んでやったことのある遠縁の親戚の女の子、ツムギと再会する。彼はファインダーを通して少女の肉体に魅入られる。彼女の無邪気な好奇心によって理性を決壊させられ引きずり込まれる夏の一幕。
【登場人物】
宮原 カケル: 写真が趣味の学生。カメラを構えると並外れた集中力を発揮し、没入してしまう。親戚の「兄ポジション」から、ツムギの無防備な肉体と好奇心に翻弄されていく。
八木沢 ツムギ: カケルの年下の親戚。小柄で華奢だが元気いっぱい。黒髪ぱっつん。「妹ポジション」だったが、カケルの欲望に触れて、快楽に溺れていく。
Chapter1
ファインダーの向こうで、白樺の葉が揺れている。
逆光を浴びた葉脈が、透き通るような緑の輪郭を描き出していた。
宮原カケルは、絞りリングをわずかに回す。金属のカチカチという乾いた手応えが、指先を通じて脳の奥へと届く。光の粒がレンズの中で屈折し、ファインダーのガラスを青くにじませる。その美しさに、ただ指先と右目の視界だけが同期していく。
一歩、足を後ろに引いた。
ファインダーの中の白樺が、ゆっくりと左へ流れる。もう一歩、引く。構図の端に、木漏れ日の斑点を入れたかった。頭の中は対角線と光量の比率だけで満たされている。
「あぶないっ! どいて!」
鼓膜を割るような鋭い声が、背後から突き刺さった。
反射的にファインダーから目を離す。世界が急に広がり、同時に激しい色彩が目に飛び込んできた。
アスファルトの黒。その上を滑るように迫る、蛍光イエローの塊。
ロードバイクの細いタイヤが、激しい制動音を立てて路面を削っている。カケルは慌てて足を動かそうとしたが、サンダルの底がアスファルトに引っかかり、無様に腰を落とすようにして路肩の草むらへ倒れ込んだ。
数台の自転車が、風を切る音を残して目の前を通り過ぎていく。
先頭を走っていた、体格の良い男性インストラクターが自転車を止め、片足を地面についてカケルを振り返った。ヘルメットの下の顔には、険しさと安堵が混じり合っている。
「大丈夫ですか! 車道に出たら危険ですよ!」
「す、すみません! すみません……っ」
草の匂いが鼻をつく中、カケルはカメラを両手で抱え込んだまま、地面に頭を下げるようにして謝った。冷や汗が首筋を伝い、背中が嫌な熱を帯びる。完全に自分の不注意だ。撮影に没頭するあまり、自分が白線の外側へ踏み出していたことに全く気づいていなかった。
インストラクターはカケルに怪我がないことを確かめると、ふう、と深く息を吐き出した。そして、後ろに続くカラフルなジャージを着たツアー客たちに向けて、声を張り上げた。
「みなさん、今のように前方に歩行者や障害物がある場合は、すぐに声を出して後続に知らせてください。リゾート地では、景色に見とれている観光客の方も多いですから、常に予測運転を心がけましょう」
ヘルメットをかぶった参加者たちが、神妙な顔で頷いている。
カケルは縮こまったまま、泥のついた膝を手で払った。恥ずかしさで顔が熱い。早くこの場から消え去りたかった。
ツアーの集団がゆっくりとペダルを漕ぎ出し、再び走り始める。
カケルはその背中を見送るために顔を上げた。
列の真ん中あたりを走っていた、小柄な体躯の少女と目が合った。
白いヘルメットの隙間から、額に張り付いた黒髪が見える。彼女はロードバイクのハンドルを握ったまま、首だけをこちらに向けていた。
その瞳が、じっとカケルを捉えている。
不思議なものを見るような、あるいは何かを確かめるような、妙に強い視線だった。少女の小さな唇が、わずかに開いている。
カケルは思わず息を止めた。その視線の圧力に気圧され、目を逸らすこともできずに立ち尽くす。
少女の乗った自転車は、風のようにカケルの前を通り過ぎ、緩やかなカーブの先へと消えていった。
「……なんだったんだ」
胸の鼓動が、先ほどの危機一髪の瞬間とは違うリズムで早くなっている。
カケルはカメラのボディについた細かな土を息で吹き飛ばし、重い足取りで林道を歩き始めた。
別の撮影ポイントへ移動するため、木々の間を縫う小径を進む。
木漏れ日が規則的に顔を照らし、また影に入る。その明暗の繰り返しの中で、先ほどの少女の横顔が、何度も脳裏に浮かんできた。
ヘルメットの影になっていたが、あの丸みのある鼻のライン。
それに、少し吊り上がった勝ち気そうな眉。
どこかで見たことがある。いや、知っている。
(ツムギ、か……?)
八木沢ツムギ。
母方の通い親戚の、年の離れた女の子だ。
まだ小学生にも満たない頃、田舎の祖父母の家で、カケルの後ろを金魚の糞のようについて回っていた。泥だらけの手でカケルのシャツを引っ張り、「カケルくん、カケルくん」と壊れたおもちゃのように名前を呼んでいた、あのうるさい子供。
最後に会ったのはいつだっただろうか。もう五年以上は前のはずだ。親戚の集まりもめっきり減り、家どうしの年賀状のやり取りくらいしか記憶にない。
(いや、そんなわけがない)
カケルは小さく首を振った。
こんな高原の、見知らぬツアーの中に、都合よく身内がいるはずがない。そもそも、最後に見たツムギはもっとずんぐりとした幼児体型で、髪も短く、お世辞にも「女の子」らしい雰囲気はなかった。
先ほどの少女は、細い手足がジャージから伸びていて、ヘルメットの下の顔立ちには、かすかに大人びた影があった。
(ただの他人の空似だ)
自嘲気味に息を吐き出す。
偶然の再会なんて、我ながら安直すぎる。綺麗な女の子を見かけて、それを昔馴染みの少女に当てはめて喜んでいる。
「……童貞かよ」
もちろん、童貞なのだった。
そうだ。ただの妄想だ。あんな綺麗な子が、あのツムギであるはずがない。カケルはカメラのストラップを肩にかけ直し、木立の奥へと歩みを進めた。
◇
夕刻。
リゾートホテルのラウンジには、高原特有の涼しい風が大きなガラス窓から吹き込んでいた。
夕食前の時間帯ということもあり、広いフロアにはまばらにしか人がいない。カケルは隅のローテーブルに陣取り、今日撮影したデータの確認と、機材の手入れをしていた。
シュッ、シュッと、ブロアーのゴム球を握る音が静かな空間に響く。
レンズの表面についた微細なチリを吹き飛ばし、専用のペーパーで円を描くように優しく拭う。ファインダー越しに世界を見る時間は終わり、今はただ、ガラスの透明度を取り戻すための単純作業に没頭していた。
「あの、すみません」
背後から、不意に声がかけられた。
少し高めの、鈴の転がるような声。
カケルは手を止め、ゆっくりと振り返った。
逆光の中に、人影が立っている。
昼間のピチッとしたサイクルジャージではなく、Tシャツにショートパンツというラフな私服姿。しかし、きれいな黒髪と首から肩のシルエット、そして何より、カケルをまっすぐに見つめるその瞳の強さは、昼間の道路で見かけたあの少女そのものだった。
「やっぱり……カケルくんだ」
少女の唇が、ふわりと弧を描いた。
その瞬間、記憶の奥底にあった「ツムギ」の顔が、目の前の少女の造作とぴたりと重なり合った。
「ツ、ツムギ……?」
カケルの口から、掠れた声が漏れる。
「うん! ツムギだよ! すごーい、本当にカケルくんだ!」
ツムギは嬉しそうに声を弾ませると、カケルの返事を待つこともなく、パーソナルスペースを完全に無視して隣のソファへと滑り込んできた。
狭い一人掛けに近い二人掛けのソファに、彼女の体が密着する。
「うおっ」
カケルは反射的に体を強張らせ、ソファの肘掛けの方へと身を寄せた。
しかし、ツムギはそんな彼の戸惑いなどお構いなしに、カケルの右腕に自分の両手を絡めてきた。
「昼間、道路のところでカメラ持ってたでしょ? あ、カケルくんだって思ったんだけど、ツアーの途中だったから声かけられなくて。この辺にホテルって少ないでしょ。もしかしたらって思ってロビー探してたんだ。そしたら本当にいた!」
ゼロ距離。
カケルの右腕の側面に、ツムギの控えめな胸の膨らみが、薄い生地越しにぴったりと押し当てられている。
ツムギ自身は全くそれを意識していないのか、ただ懐かしい兄に甘える子供のように、満面の笑みをカケルに向けている。
ツムギの髪から、夏の終わりの草の匂いと、微かに甘いシャンプーの香りが混ざり合って漂ってくる。
カケルの視界の端には、彼女の丸みを帯びた鎖骨や、ショートパンツから伸びる、少し日焼けした健康的な太ももが映り込んでいた。かつての、泥だらけで走り回っていた幼い「妹」の面影はそこにあるのに、体の輪郭は、ずっと成長し変貌している。
「あ、あの、ツムギ……ちょっと、近い、んだけど」
カケルの声は完全に上ずっていた。
喉が異常に渇く。心臓の鼓動が、昼間に自転車に轢かれそうになった時よりも激しく、胸の内で暴れていた。
「えー? 何言ってるの、久しぶりだからじゃん」
ツムギはカケルの腕をさらに抱え込み、上目遣いで覗き込んできた。その瞳には、子供っぽい無邪気さと、無意識にカケルを惹きつける光が混在していた。
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遮光カーテンの隙間から、容赦のない光が差し込んでいた。
カケルは眩しさに眉をひそめ、ゆっくりと瞼を開く。高原の朝の光は、都会のそれよりもはるかに透明度が高く、鋭い。網膜を刺すような白
放出の余韻が、湿った空気の中に溶けていく。
カケルはシーツに両肘をつき、荒い呼吸を整えていた。胸の下では、ツムギの薄い胸が激しく上下している。二人の皮膚の間で、汗と体液が混ざり合い、
熱い先端が、ツムギの太ももの間に挟まれた狭い隙間に触れる。
カケルはゆっくりとペニスを滑らせた。ツムギの粘膜が、ペニスの頭部を濡らしていく。ヌルヌルとした湿り気が、互いの皮膚の境界を
ベッドのマットレスが、不自然に深く沈み込んだ。
カケルの膝の上に、柔らかな重みがのしかかる。ツムギが両膝をシーツについたまま這い寄り、彼の太ももを跨ぐようにして座り込んできた。







