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ヒバゴンの気配

ヒバゴンの気配

Letzte Aktualisierung: 2026-10-21 03:12:30
By: レール
Abgeschlossen
Sprache:  日本語4+
4.8
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Kapitel
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Zusammenfassung

山奥で見たそれは!


Kapitel1



---

その男が最後に聞いたのは、自分の名前を呼ぶ声だった。

「……佐伯さん」

振り返った。

誰もいなかった。

霧が出ていた。

十メートル先の木々さえ輪郭を失い、白い空間の中に黒い幹だけが浮かんでいる。

男は立ち止まった。

「誰だ?」

返事はない。

ただ、森の奥で枝が折れた。

――パキッ。

男は懐中電灯を向けた。

何もない。

それでも、誰かがいる。

そう思った。

いや。

「誰か」ではない。

何かが、自分を見ている。

男は無意識に後ずさった。

その時、背後から声がした。

「……おいで」

男は振り返った。

そこには、誰もいなかった。

ただ、濃い霧の向こうに、二つの小さな光が浮かんでいた。

男は逃げようとした。

しかし、足が動かなかった。

光が一つ、また一つと増えていく。

そして、森の奥から、いくつもの声が重なって聞こえた。

「……おいで……」

「……こっち……」

「……もう……帰れない……」

男が最後に見たのは、霧の向こうで揺れる巨大な影だった。

それから三十七年。

男の遺体は発見されていない。

残されたのは、錆びた懐中電灯だけだった。

その懐中電灯が、広島県北東部の山中にある洞窟から発見されたのは、さらに十年後のことだった。

そして現在。

四人の人間が、その洞窟へ向かっていた。

彼らはまだ知らなかった。

そこには、彼らよりずっと前から「待っているもの」があることを。



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