レベルが億万を超え、全宇宙が俺に戦慄する件
ملخص
終末の怪異に追われ、地下都市へと逃げ延びた蒼藍星の人類は、強大な外星勢力「覇主盟」による過酷な搾取と差別に喘いでいた。気運が尽き果て転職の成功率が低迷する中、転生者の青年・八代黙は、前世の秘宝「幸運の金貨」で運命を覆し、底辺とされるF級の「見習い回復術士」の裏に、宇宙唯一の神級第二職業「饕餮の神」を覚醒させる。
百倍経験、無限レベルアップ、そして森羅万象を喰らって己の力とする「無尽呑噬」――圧倒的な神技を隠し持ち、八代黙は終末禁地の試練で怪異や敵対する異星強者を貪り食いながら爆速で進化を遂げていく。やがて十星級を超える宇宙の星族をも震え上がらせ、億万を超えるレベルへと到達した彼は、高維文明が仕組んだ残酷な文明選別「終末潮汐」に抗い、宇宙の全文明を新たな紀元へと導いていく。
الفصل1
「坂本裕斗、覚醒成功。F級生活職業・料理師!」
「鷹司八夜、覚醒成功。E級生活職業・マットレス職人……」
「松下傲天、おいおいマジかよ……E級特殊職業・海王!」
……
第三地下安全都市の覚醒の祭壇。壇上に上がった人間たちが次々と覚醒を終え、その結果が告げられるたび、見物客の群衆からは耳をつんざくような爆笑が巻き起こっていた。八代黙は耳を揉んだ。あまりの大音量に鼓膜がじんじんと痛む。そこまで笑い転げて、呼吸困難でくたばりでもしたらどうするつもりだ。
だが、そんなことは些細な問題だった。黙がこの世界に転生してきてから、まだ三分も経っていない。彼を何より困惑させていたのは、壇上で判定結果を読み上げている覚醒官の姿だった。身長三メートル、全身を漆黒の毛並みで覆われ、片目に眼帯をつけ、ハイテクな黒光りする甲冑を着込んだ……どう見ても黒熊だった。
観客席を埋め尽くす数万のギャラリーを見渡しても、人間は全体の四分の一程度しかいない。残りはどれもこれも奇怪極まりない連中ばかりだった。派手な衣装を着飾った熊のような怪人、全身を黒外套に包み影の中に潜む亡霊めいた存在、紫色の皮膚に六本の腕を生やし、まるで「何見てんだコラ」とでも言いたげな凶相の修羅のような異形の男……千差万別、黙が一瞥しただけでも五種類以上の特異な生命体がひしめいていた。
黙の頭の中には無数の疑問符が浮かんだ。
こいつらも覚醒儀式の観客なのか? どう見ても人間の姿形じゃないだろ……それに、壇上で転職結果を発表してるあの熊は何なんだ? 袈裟でも盗みに行くんじゃなくて、覚醒官をやってるのか? 建国の後に妖怪変化の類は禁止されたんじゃなかったのか?
「っ……急に頭が……!」
困惑する黙を、突如として激しい頭痛が襲った。膨大な記憶の奔流が脳内へと雪崩れ込んでくる。
流れ込んできた記憶を飲み込み、黙は驚きに目を見張った。
見間違いでも幻覚でもない。自分は本当に転生したのだ。それも、終末を迎えた平行世界へと。
ここは単なる高武世界ではない。転職システムが支配する世界だった。人間は十八歳を超えると公的機関に申請し、職業を覚醒させる「転職」の機会を得られる。そして今日こそが、月に一度の転職の日だったのだ。
さらに、会場にいる人間以外の者たちは怪物などではなく、異星人だった。
百年前、終末の災厄が蒼藍星を襲った。蒼藍星は元々、肉体の修練によって極限の力を引き出す高武世界だったが、終末が長引くにつれ、無尽蔵に湧き出る強大な終末の怪物が地上を蹂躙し始めた。怪物の数と強さは増す一方であり、次第に人類の勢力は圧倒され、おびただしい数の命が戦いの中で散っていった。消耗戦に耐えかねた人類は次第に優位を失い、十年前に至っては生存者が十分の一にまで激減、各地の地下安全都市に逃げ込んで細々と命を繋ぐしかなかった。
そんな時、人類の前に現れたのが「覇主盟」と名乗る異星種族の連合体だった。彼らは「敵意はない」と告げ、人類と同盟を結んで覇主盟への加入を促した。その善意の証として差し出されたのが――転職だった。
彼らが建造した覚醒の祭壇に立ち、覚醒石を手に握り、特殊な儀式を執り行うことで、十八歳以上の人間は強力な職業者へと覚醒し、さらなる強大な力を手にすることができる。
職業者の出現は、蒼藍星の人類に一筋の希望をもたらした。
そして今日行われているのは、星盟による年に一度の合同覚醒儀式だった。各星族から厳選された十八歳になったばかりの有望な覚醒候補者が一万人ずつ壇上に上がり、儀式に挑む。人類側も同様だった。
「高武世界である上に、全宇宙規模の転職システムか……」
「なかなか面白くなってきたな」
八代黙の口元がかすかに吊り上がった。得られた情報から判断するに、この世界は以前いた世界よりも遥かに刺激的だ。
だが結果を見る限り、人類の覚醒成績は惨憺たるものだった。すでに儀式は終盤に差しかかっているというのに、戦法系職業に覚醒できた者は二百人にも満たない。
あまりの無残さに、観客席の人類たちからは不満と怒号が噴出していた。
「ふざけんな、特殊職業だァ!? 蒼藍星に必要なのは戦える戦法系職業者だろうが!」
「他の星族は戦法系の割合が三十パーセントを超えてるってのに、なんで人類は二パーセントにも届かねえんだよ……八百長だ、絶対に仕組まれてる! 金を返せ!」
多くの人類の観客が憤りを抑えきれずに怒鳴り散らしていた。覚醒の儀式は決してタダではない。人類側は毎年、財政予算の十パーセントを星盟へ上納することで、ようやく一万人の参加枠を確保しているのだ。
それだけの血税を注ぎ込んで、結果がこれでは大赤字もいいところだった。この終末の世界において、予算の十パーセントがどれほど多くの人命を養えるか分かったものではない。
だが怒り叫ぶ群衆も、これが八百長によるものではないことくらいは理解していた。高位職業への覚醒確率は、本人の資質だけでなく、その星族が持つ「気運」に大きく左右される。
星族の気運が強ければ高位職業が出る確率は跳ね上がり、気運が衰えていれば低くなる。
終末の只中で喘ぎ、地上の生存圏すら奪われた蒼藍星の気運は風前の灯火だ。高位の職業者が出る確率など雀の涙ほどしかない。衰退した気運のせいで、人類の覚醒者は奇妙奇天烈な職業ばかりを引き当て、ついには「海王」などというふざけた特殊職業まで飛び出す始末だった。司会を務める暗熊星族の職業者はいかにも凄いことのように囃し立てていたが、一体どこが凄いというのか。
海王のスキルを使って異星人の女でも口説けとでも言うのだろうか。
人類側の祭壇とは対照的に、隣に並ぶ異星種族の祭壇からは次々と朗報が響き渡っていた。
「アドゥカ、魔影星族。B級魔法使い職業『操影師』に覚醒!」
「ジョニー、暗熊星族。C級戦士職業『狂躁戦士』に覚醒!」
「狂天、修羅星族。A級希少職業『百臂修羅』に覚醒! 見事だ!」
……
「おいおい、希少職業が出たぞ……!?」
「あの希少職業かよ! S級の隠し職業に次ぐ上級職じゃないか!」
隣の魔法陣から届く歓声に、人類の観客たちはただ指をくわえて羨望の眼差しを向けるしかなかった。生活職や特殊職ばかり引かされる人間側とは違い、異星人の祭壇では三人に一人が戦法系を引き当てている。それどころか、A級の希少職業を引き当てる猛者まで現れたのだ。
異星人側のエリアは歓喜と祝福の声で沸き返り、人類は屈辱に唇を噛む。
希少職業どころか、戦法系ですら壊滅的なのだ。人類からA級希少職が出たのなど、かれこれ十年も前の話だった。
「これにて覚醒儀式を終了し、結果を発表する!」
「今回、星盟の覚醒儀式に参加した六つの星族は、各星族一万人ずつである!」
「暗熊星族、戦法・補助系職業への覚醒者四千三百二十名、割合にして四十三パーセント!」
「修羅星族、戦法・補助系職業への覚醒者三千八百五十二名、割合にして三十八パーセント!」
「夜行星族、戦法・補助系職業への覚醒者三千二百名、割合にして三十二パーセント!」
……
「人類星族、戦法・補助系職業への覚醒者、百九十九名。割合にして一・九九パーセント!」
案の定、今回の儀式でも人類の成績は最下位だった。大惨敗である。戦法・補助系の覚醒者数は、他の星族の端数にすら及ばない。
あまりにも無残、見るも無残な結果だった。
「星盟の規約に基づき、成績最下位となった星族は、今年収穫した資源の三十パーセントを星盟へ上納し、他の星族へ分配するものとする!」
「覇主盟は互助のための利益共同体であり、貧民救済ボランティアではないからな!」
「足を引っ張る星族に対し、我々が偏見を捨てて手を差し伸べてやっているのだ。相応の対価を払ってもらわねば困る!」
覚醒官の無情な宣告が、人類の観客たちの心へ容赦なく突き刺さった。
しまった、覚醒の成績にはペナルティが課されるのだった。人類が星盟に加盟した際に結ばされた協定――最下位になった星族は、その年の獲得資源を一定割合、他星族への補填として差し出さねばならない。
問題は、蒼藍星がすでに十年連続で最下位を取り続けているという事実だった。ただでさえ資源不足に喘いでいる蒼藍星から、さらに他星族への上納金を搾り取られる……。
まさに泣きっ面に蜂だ。今にして思えば、あの協定そのものが覇主盟が蒼藍星を嵌めるために仕掛けた罠だったのだ。異星の犬どもめ、つけ上がりやがって! まるまる十年間、蒼藍星の血をすすり続けてきたのだ!
人類の押し殺した怒りを察知したのか、覚醒の儀式を取り仕切る暗熊星族の覚醒官――ヘイムは、冷笑を浮かべて言い放った。
「最下位の分際で、不服そうな面をしておるな!」
「よかろう! 不服だと言うなら、貴様ら人間にチャンスをくれてやる!」
「観客席にいる者で十八歳以上、かつ未覚醒の者なら、誰でも壇上に上がって覚醒を試してよいぞ。もし戦法・補助系に覚醒できたなら、それも人類の成績に加算してやろう!」
「どうだ? 名乗り出る度胸のある奴はおるか?」
ヘイムの態度は傲慢そのものであり、挑発以外の何物でもなかった。だが、その露骨な煽り文句に、観客席の人間たちは一斉に竦み上がった。
タダで覚醒させてやるだと?
棚からぼた餅どころか、真っ逆さまの落とし穴だ。
覚醒の儀式には、成功率を高めるために覚醒石――あの青く透き通った丸石のような触媒――が必要不可欠なのだ。儀式のたび、人類側は星盟から一万個の覚醒石を高額で買い取っているが、それ以上の数は決して手に入らない。これこそ覇主盟が人類を抑え込むための手段であり、予備の覚醒石など一個たりとも売り渡さないのだ。毎年人類に供給されるのは厳格に一万個のみ。
覚醒石の保護なしに無謀にも覚醒の祭壇へ立てば、成功する確率は万分の一にも満たない。しかも覚醒に失敗すれば、覚醒石の加護がない者はその場で肉体を破裂させて爆死するのだ!
それは過去の無謀者たちが流した血塗られた教訓だった。終末の世界とはいえ、命は惜しい。万分の一の確率など、自殺志願者と何の違いがあるというのか。
命は拾い物ではない。誰が好き好んで無謀な死に飛び込むものか。
何より人々を憤慨させたのは、大黒熊ヘイムの横柄極まりない態度だった。人間など初めから眼中にない。勢力として衰退した人類は、異星人どもからすれば、誰もが好き放題に踏みにじれる弱小星族にすぎないのだ。
力のない者をいたぶって何が悪い? 文句があるなら力でねじ伏せてみろ――弱肉強食という宇宙の冷酷な掟が、そこには剥き出しになっていた。暗熊星族のたかが六十級の職業者ごときが、人類の頭上でふんぞり返っている。
怒り、悔しさ、無力感が人々の胸を焼き焦がす。現状を変えたいと願いながらも、なす術がない。他の星族に比べ、現在の人類はあまりにも弱すぎた。戦力と呼べる職業者すら足りず、大黒柱となって支えてくれるトップ職業者に至っては皆無だ。
人類の弱さが、反論する気概すら奪い去っていた。異星人に嘲笑されようが、どうすることもできない。それが紛れもない現実だからだ。このまま衰退の一途を辿れば、数年と経たずに人類は滅亡するだろう……。
「度胸もないくせに喚き散らすな!」
「では、これにて正式に終了を……む?」
萎縮する人類の姿を見てさらに気を良くしたヘイムが儀式の終了を宣言しようとした、その時だった。
一人の人間の少年が、まっすぐ壇上へ歩み出た。目指すのは、ヘイムの背後にある覚醒の祭壇だった。
「……あん?」
ヘイムは慌てて一歩踏み出し、八代黙の行く手を塞いだ。
「小僧、貴様、覚醒魔法陣に入って転職儀式を受けるつもりか?」
そのあまりに単純な問いに、八代黙は考える間もなく即答した。
「いや、別に覚醒の儀式を受けに来たんじゃないけど」
儀式を受けに来たんじゃない? なら何しに上がってきたんだ?
ヘイムが怒鳴りつけようとした瞬間、八代黙は悠然とした調子で言葉を続けた。
「――じゃあ、俺は何しに来たと思う?」
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半年後――。 第三地下安全都市の上空には、ようやく太陽が姿を見せていた。かつての廃墟は新たな星間港へと生まれ変わり、蒼藍星と各星族を結ぶ転送航路も開かれている。終末禁地は消えていない。しかし今や、そ
亀裂の向こうには、色彩の失われた世界が広がっていた。星もなければ、生命もない。あるのはただ一つ、脈動を続ける漆黒の心臓だけだ。それこそが終末の心臓。すべての終末禁地、怪物の潮汐、そして文明選別の源泉で
終末潮汐が完全に降臨した。空間の亀裂から数え切れないほどの怪物が雪崩を打って押し寄せてくる。惑星のごとき巨眼を持つ巨獣、黒霧を纏う神々の残影、そして終末の力に歪められた無数の異星の覚醒者たち。この戦い
八代黙が転送陣から足を踏み出した時、蒼藍星の全土はすでに大混乱に陥っていた。空が割れていた。比喩ではなく、文字通り裂けていたのだ。天穹を横断する漆黒の亀裂から、終末の気配が海水のように濁流となって降り







