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うらしゅま

うらしゅま

更新時間: 2026-02-27 04:23:00
By: 大根DJ
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简介

企画書を奪われた地味な社員が、仲間と“正義の技術”で先輩の不正を暴き、自分の夢を取り戻す痛快職場復讐譚。


章節1

深夜二時。KAKIテックのオフィスは、ほとんどの蛍光灯が落とされ、静寂が支配していた。その中で、新規事業開発部の島だけが、ぼんやりと青白い光を放っている。蟹江誠は、ディスプレイの光だけを頼りに、鬼気迫る表情でキーボードを叩いていた。画面には、無数のコードが滝のように流れ落ちては、彼の指先から生まれる新しい文字列に置き換わっていく。三ヶ月、彼はこの瞬間のためにすべてを捧げてきた。

彼の創造物、AIチャットボット『柿ボット』。それは単なる企画やプログラムではなかった。眠れない夜を共に過ごし、コーヒーとコンビニのおにぎりを分け合った戦友。行き詰まっては励まし合い、新しいアイデアが閃けば共に喜んだ、かけがえのない我が子。蟹江は最後の行を打ち込むと、エンターキーを静かに、しかし万感の思いを込めて押した。コンパイルが成功したことを示す緑色の通知が画面に灯る。「おやすみ」と、彼は画面の中のオレンジ色の柿のアイコンに囁いた。それは、我が子を寝かしつける父親の優しい声色そのものだった。机に散らばる資料と空のエナジードリンクの缶に囲まれ、彼は安堵のため息をつき、椅子の背にもたれかかった。ようやく、この子が世に出る準備ができたのだ。

数日後、社内コンペの最終選考会は、異様な熱気に包まれていた。各部署から選りすぐられた企画が次々と披露される中、最後に登壇したのが蟹江だった。彼は緊張で強張る手でマイクを握り、『柿ボット』のプレゼンテーションを始めた。静かで、訥々とした語り口。しかし、その内容は圧倒的だった。デモンストレーションで『柿ボット』が見せた驚異的な応答精度と、人間味あふれる対話能力に、会場はどよめいた。


「…以上です。ご清聴、ありがとうございました」

蟹江が頭を下げると、一瞬の静寂の後、割れんばかりの拍手が巻き起こった。審査員である役員たちは皆、興奮した面持ちで頷き合っている。結果は満場一致。最優秀賞は『柿ボット』の手に渡った。


「やったな、蟹江!」「すごすぎるよ、先輩!」「うちの部の誇りだ!」

席に戻った蟹江は、後輩の栗田実をはじめとする同僚たちにもみくちゃにされ、照れながらも誇らしさで胸がいっぱいだった。これで、自分のキャリアも、そして『柿ボット』の未来も、大きく開ける。そう確信した。しかし、その喧騒の中で、ただ一人、直属の上司である課長代理・猿島巧だけが、拍手もせず、祝いの言葉もかけず、蟹江を睨みつけていた。その目は、燃え盛る嫉妬の炎でどろどろに濁り、獲物を狙う爬虫類のように冷たかった。蟹江はその視線に気づいたが、祝賀ムードの中で深く考えることはしなかった。


そして、運命の全社会議の日がやってきた。月曜の朝一、全社員が詰めかけた大会議室は、期待と緊張感で満ちている。蟹江も、プロジェクトチームの一員として末席に座っていた。心臓が早鐘のように鳴っている。自分の子供が、今まさに社長の口から全社に紹介されるのだ。

やがて、社長が厳かに口を開いた。「諸君、本日は我が社の未来を担う、画期的な新規プロジェクトを発表する!」

ゴクリ、と蟹江は息を呑んだ。

「その名も…AIチャットBOT、『柿ボット』だ!」

きた!蟹江は拳を固く握った。スクリーンに、見慣れたオレンジ色の柿のロゴが大きく映し出される。同僚たちが称賛の目で蟹江を振り返る。だが、社長が続けた言葉は、彼の耳を疑わせるものだった。


「この素晴らしいプロジェクトをゼロから生み出し、見事にまとめ上げた立役者を紹介しよう。新規事業開発部、猿島巧課長代理だ!壇上へ!」

…え?

時間が止まった。脳が理解を拒む。割れるような拍手の中、猿島が満面の笑みを浮かべて立ち上がり、悠々と壇上へ向かっていく。スポットライトを浴びる彼は、まるで凱旋将軍のようだ。蟹江は、ただ口を半開きにしてその光景を見上げることしかできなかった。


「ご紹介にあずかりました、猿島です」

猿島は深く一礼すると、自信に満ちた声でプレゼンテーションを始めた。その内容は、蟹江が心血を注いで書き上げた企画書そのものだった。一字一句、寸分違わぬ言葉が、まるで自分が考え出したかのように、猿島の口から滑らかに紡ぎ出されていく。


「この『柿ボット』のコンセプトは、『寄り添う知性』。我々は三ヶ月間、寝る間も惜しんで開発に没頭し…」

嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ。お前は何もしていないじゃないか。お前はただ、俺が提出した企画書にハンコを押しただけじゃないか。蟹江の心の中で、声にならない叫びが渦巻いていた。しかし、彼の身体は椅子に縫い付けられたように動かない。周りを見渡せば、社長も役員たちも、猿島の雄弁に感心しきった様子で頷いている。その熱狂の中で、真実を知る者は誰一人としていない。


「…素晴らしい!猿島くん、君の手腕にはいつも驚かされるよ!」

プレゼンが終わると、社長は手放しで猿島を絶賛した。


「よって、本日付で猿島くんを課長代理から、正式に課長へと昇進させることを決定した!そして、『柿ボット』プロジェクトの正式なプロジェクトリーダーに任命する!」

わあああ、と再び万雷の拍手と歓声が会議室を揺るがす。猿島は勝ち誇った笑みを浮かべ、深々と頭を下げた。その時、社長がふと思い出したように付け加えた。


「ああ、そうだ。今回のプロジェクトには、サポート役として蟹江くんも尽力してくれたそうだな。ご苦労」

まるで付け足しのように、オマケのように、自分の名前が呼ばれた。向けられたのは、憐れみを含んだ数人の視線と、儀礼的な軽い拍手だけ。蟹江の功績は、その一言ですべてかき消された。


世界から、音が消えた。色が消えた。ただ、スポットライトの下で得意げに笑う猿島の顔と、スクリーンに映る自分の子供のロゴだけが、悪夢のようにくっきりと見えた。嫉妬に歪んだ猿島の目が、壇上から「見たか、これが現実だ」と嘲笑っている。身体中の力が抜け、魂がずたずたに引き裂かれていく感覚。我が子を目の前で誘拐され、その犯人が世界中から賞賛されている。そんな不条理な地獄の光景を、ただ無力に見つめることしかできない。拍手喝采の真ん中で、蟹江誠は、たった一人、自分の世界の崩壊を静かに感じていた。

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