月光のデュエット
Sinossi
クール&スパイシー」で有名な小学生、日奈森あむ。
憧れのアイドル・ほしな歌唄とのユニット結成は、夢のようなはずだった。
けれど、二人きりの深夜レッスンは、身も心も奪われる、甘く危険な罠の始まり。
魂ごと独占しようとする「女王」ほしな歌唄。
心を掻き乱す「野良猫」月詠イクト。
そして、光へと導く「王子様」辺里唯世。
仕掛けられた甘美なゲームの中で、彼女が選ぶのは、光か、闇か――?
Capitolo1
午後の陽光がカフェ「花道」のすべてを柔らかい金色に縁取り、空気中には挽きたてのコーヒー豆と焼きたてのワッフルの香りが漂っていた。日奈森あむは、目の前のグラスに入ったレモンスカッシュをかき混ぜる。グラスの表面にできた水滴に、どこか上の空な彼女の顔が映っていた。
「……というわけよ」
向かいに座る、ほしな歌唄のマネージャーである三条ゆかりが、有無を言わせぬビジネス口調で話を締めくくった。「唄ちゃんの次の段階のカムバックプロモーションに合わせて、会社の上層部は話題性のある『期間限定ユニット』の結成を決定しました――人気アイドルのほしな歌唄と、聖夜学園の話題の人物であり、しゅごキャラの持ち主であるあなた、日奈森あむさん、二人でね」
あむのスプーンが「カラン」と音を立ててグラスに落ちた。
「えぇっ!?あたしが、ほしなさんと?」
「だめだよ!」隣に座っていた辺里唯世が、その王子様のような眉をすぐにひそめた。澄んだ青い瞳には心配の色が浮かんでいる。「日奈森さんはただの中学生だ。そんなこと、彼女にはあまりにも……」
「弥耶は、すっごく面白いと思うな、あむちー!」結木ややは逆に手を叩いて興奮している。
あむの視線は、皆を通り越し、最初から最後まで一言も発していないほしな歌唄へと注がれた。
唄はそこに、白鳥のように優雅な姿で座っていた。誰を見るでもなく、ただ伏し目がちに、目の前にある冷めてしまった紅茶のカップを見つめている。陽光が彼女の完璧な横顔の輪郭を描き出し、長いまつ毛が小さな影を落とす。その表情は冷淡というより、全世界から孤立した、誇り高い寂寥感に満ちていた。あむは、彼女が膝の上に置いた手が、強く握りしめられ、力が入って指の関節が白くなっていることに気づいた。
その瞬間、あむの胸の一番柔らかい場所が、そっと突かれたような気がした。
ステージの上で光り輝く唄を思い出す。そして、イースター社を離れた後、一人で懸命に歩んできた姿も。この人は、いつだってそうだ。一番硬い殻で、一番脆い心を包み込んでいる。
「……わかりました」。あむは深呼吸を一つして、ゆかりの探るような視線に応え、頷いた。「あたし……やってみます」
唯世が心配そうに彼女の名前を呼んだが、あむは彼にごめんね、と笑いかけるだけだった。彼女が承諾したその瞬間、唄の握りしめられた拳が、ほんの僅かに緩んだのを、あむは見逃さなかった。
家に帰ると、あむは唄と期間限定ユニットを組むことになったニュースを、四人のしゅごキャラたちに伝えた。案の定、たまごのハウスの中はすぐに大騒ぎになった。
「わー!唄とアイドルやるの、あむちゃん?」ランは空中で興奮しながら宙返りする。「フレ!フレ!あむちゃん!」
「ふん、ちょっと面白いじゃないか」ミキはクールに腕を組む。「トップアイドルのアートスタイルを間近で観察できるしな」
「おいしい差し入れが作れるといいですぅ〜」スゥは相変わらずのほんわかムードだ。
ダイヤだけが、静かにそばを漂い、その瞳に知的な光を宿していた。
その時、あむの携帯が鳴った。画面には見慣れない番号が表示されている。彼女がためらいながら電話に出ると、受話器の向こうから、後輩にあたる下級生の女の子のおずおずとした声が聞こえてきた。
話は簡単だった。その子のしゅごたまが今朝ようやく生まれたのだが、生まれたてのしゅごキャラが極度の人見知りで、何度呼びかけても割れたたまごの殻に閉じこもって出てこないというのだ。その子はあむの噂を聞き、最大の勇気を振り絞って助けを求めてきたのだった。
電話を切り、あむが口を開く前に、ランがすでにポンポンを手に彼女の目の前に飛んできて、当然!とでも言うような顔で言った。「あむちゃん、その件はあたしたちに任せて!」
「そうだな」ミキも頷く。「生まれたてのキャラの心理誘導、クールな課題だ」
「まぁ〜、かわいそうですぅ。きっと慰めてほしいんですねぇ〜」スゥは頬に手を当て、母性あふれる眼差しだ。
四人のしゅごキャラは顔を見合わせ、瞬時に意見が一致した。彼女たちは「しゅごキャラ指導員(メンター)チーム」を結成し、一時的に後輩の家に泊まり込み、その新しい命が勇気を出して世界に顔を出すまで、二十四時間体制の「育児実習」を行うというのだ。
あむは名残惜しくてたまらなかったが、それが正しいことだとわかっていた。そして、数え切れないほどの注意をした後、彼女は四つの小さな、おしゃべりな姿を窓の外へと見送った。
部屋は途端に静かになり、珍しい孤独感があむを包んだ。これからの日々、彼女たちがそばにいないで、自分は本当に大丈夫だろうか、と思わずにはいられなかった。
その夜、あむが一人で芸能事務所の最上階にあるだだっ広いレッスンスタジオに立った時、その孤独感は何倍にも増幅された。
スタジオはがらんとしていて、壁一面が天井まで届く巨大な鏡になっている。ぽつんと佇む自分の姿と、頭上のスポットライトの光が何重にもなって映り込み、かえって寂しさを際立たせていた。冷房が効きすぎていて、吹き出し口からの風にあむの剥き出しの腕は鳥肌が立った。しゅごキャラたちのおしゃべりや励ましがないこの静寂は、彼女を不安にさせた。
唄は先に来ていて、すでに黒いタイトな練習着に着替え、部屋の反対側でストレッチをしていた。
「あんたのしゅごキャラは?」唄は彼女を一瞥し、不意に尋ねた。
「あ、えっと……ちょっと用事があって、友達の家に泊まりに行ってる」あむは言葉を濁した。
「そう」唄の口調からは何の感情も読み取れない。「あたしも、イルとエルは追い出したわ。あんたのとこのチビたちのところに行かせた。耳元で騒がれると迷惑だから」
そう言うと、彼女はもうあむに関心を払わず、まるで空間に自分一人しか存在しないかのように振る舞った。その集中力とプロ意識は、強烈なオーラとなり、あむをほとんど息苦しくさせた。
一時間、二時間……。あむはまるで牢屋にいるような気分だった。頭の中の記憶を頼りに適当にステップを踏むが、視線は無意識に鏡の中の黒い影へと向かってしまう。唄の一つ一つの動きは正確で力強く、まるで闇夜に咲く黒いチューリップのようで、美しく、そして危険だった。
練習時間がようやく終わり、あむは特赦を受けたかのように、タオルで汗を拭い、そそくさと出口に向かおうとした。
「待ちなさい」
背後から氷のような声がした。あむの足が固まる。振り返ると、唄がいつの間にか彼女の背後に立っており、値踏みするような、無礼に近いほどの視線であむを上から下まで眺めていた。
「なに……」
「あんた、立ち方、なってない」唄は彼女の言葉を遮った。そして一歩前に出ると、あむが反応するより早く、背後からぴたりと体を寄せてきた。
あむの全身が硬直した。
冷たい腕が腰に回り、強制的に引き締められ、背筋を伸ばさざるを得なくなった。もう一方の手は汗ばんだ首筋に添えられる。その指先はひんやりしていたが、まるで電気が走ったかのように、あむの頭皮をぞくぞくさせた。唄の体が背中にぴったりと密着し、相手の穏やかな心臓の鼓動や温かい呼吸さえ感じられた。
「肩の力抜いて。顔を上げて、胸を張りなさい」唄の声が耳元でする。その温かい息が、あむの敏感な耳たぶにかかり、彼女の全身を熱くさせた。
あむの頭は真っ白になり、体は完全にコントロールを失い、まるで操り人形のように、唄に舞台仕様の見慣れないポーズへと直されていく。
「まともに立つこともできないで、歌うつもり?」
耳元で、軽蔑の入り混じった唄の最後の囁きが聞こえた。次の瞬間、背後の気配が離れ、先ほどの生真面目な姿に戻っていた。
唄の姿がドアの向こうに消えるまで、あむはその場に固まったままだった。心臓が「ドクンドクン」と激しく鳴り響き、頭の中では一つの思考が猛烈な勢いで駆け巡っていた。「な、な、な、この女、あたしに何したのよぉぉぉー?!」
Ultimi capitoli
第八章:未完の二重奏
特別ライブの日は、予定通りやって来た。
舞台裏の空気は張り詰めていたが、あむと唄がステージに立ち、スポットライトが灯った瞬間、
第七章:光と影の対峙 あのレコーディングスタジオの一件以来、レッスンスタジオの空気はますます奇妙なものになっていった。 唄の指導は相変わらず厳しかったが、その視線にはどこか探るような色が混じるよう
第六章:王様の覚醒 唯世は結局、安心することができなかった。 前回のデートで、あむが唄からのメールに心を奪われているのを見て以来、強烈な不安が彼の心を掴んで離さなかった。それが何なのかはっきりとは
第五章:反響室の三重奏 夜が更け、ユニットの企画は新たな段階――デモ音源のレコーディングへと移行した。 三条ゆかりの手配で、あむと唄はプロ仕様のレコーディングスタジオに来ていた。巨大なミキシングコン
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