简介
また才能ないと騒ぐラルス。だが、フィオラの妹175cmの背が高い女ユエリシア=アマオカミにより才能が花開く! そして料理の競技に出る!
章節1
公爵邸の書斎は、静かな午後の光に包まれていた。重厚なマホガニーの机や、天井まで届く書架、窓から差し込む柔らかな光線——すべてが知的で裕福な空間を醸し出している。そんな中、黒いコートを着た少年、ラルス=ローゼンベルグが深いため息をついた。
「才能……才能ないなあ」
彼の青い瞳は虚ろで、机の上に広げた魔導理論書をぼんやりと見つめていた。短く整えられた黒髪が左目の上にかかり、若干の憂いを帯びた表情が、彼の年齢よりも大人びて見えた。
ちょうどその時、ドアが軽く開いた。
「あれ? その流れ前もあったよね?」
ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒが、金色のアラベスク模様が施された黒いコートを翻しながら入ってきた。少し筋肉質な体躯がコートの下からも伺え、きりっとした顔立ちにふわりと漂う貴族らしい風格。それでいて、口元にはからかいのような笑みが浮かんでいる。
ラルスは顔を上げたが、すぐに俯いた。
「バカにしてるの?僕、真剣に悩んでるんだよ」
ミハエルは軽やかに歩み寄ると、息子の隣に腰を下ろした。
「真剣だからこそ、同じ過ちを繰り返す必要はないだろう? 前にだって、『才能がない』って泣き言言ってたじゃないか」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「嘘だ!」
「嘘じゃないプー」
ミハエルは息子の叫びをこともなげに受け流す。
「事実だ。一つを極めるという才能なら、私の上はいくらでもいる」
彼は指を折りながら、まるで買い物リストを読み上げるように名を連ねていく。
「呪禁道で行けば、そこにいる水鏡冬華。妖力で行けば、桜雪さゆ。剣技であれば現剣魔のアルヴェロ=カルティエ。純粋な力で言うならヘスラー=ヴァイツゼッカー。人心掌握や社交性ならフレデリック=ローレンス。そして、魔法の探求ならアリウス=シュレーゲルが上だ」
一つ、また一つと名前が挙げられるたびに、ラルスの心臓を冷たい手が掴むような感覚がした。それは世界に名だたる怪物たちの名だ。父が、その誰もに劣ると言うのか。
「さあ」
ミハエルは指を折り終え、空になったその手をラルスに向けた。
「これで、私に何がある? 何もないけど?」
そういうミハエルの顔は、明るい。
その問いは、刃となってラルスの胸に突き刺さった。侮辱だ。これほどの男が、自分を「無才」だと言い放つ。それは、その足元にも及ばない息子に対する、残酷な当てつけにしか聞こえなかった。
「嘘だ! 父さんは何でもできるじゃないか! 僕を馬鹿にしてるんだ!」
感情が堰を切って溢れ出す。ラルスの瞳に涙が滲んだ。尊敬する父に、自分の悩みを矮小なものだと笑われているような気がした。必死の訴えが、ただの子供の癇癪として扱われた屈辱に、全身が震えた。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「この時も全く同じこと言ってたよな? パストレコードの魔法貴重だけど使ったけど。で、結局どうした? わたしが
『お前は道探せ、わたしが母の万能さに目がくらんで苦しんだからな』
って言ったら、翌日にはケロッと忘れて魔導剣術の練習してたじゃないか」
ラルスは顔を赤らめた。
「そ、それは——」
「『才能がない』って言い訳は、努力しないための免罪符にすぎない。本気でなりたいものがあるなら、泣き言なんて言ってないで動きなって。AI技術あるんだしティルナノグ後なんだから。絵の実力もパンパン鍛えろ!」
ミハエルの言葉は鋭く、しかしどこか温かさを帯びていた。彼は本当に息子のことを考えている——だからこそ、甘い言葉は選ばない。
その時、ドアが開き、三人の女性が現れた。
「まあまあ、またラルスくんを泣かせてるの? ミハエルさんったら、相変わらずね」
最初に声をかけたのは、東雲波澄だった。流れるような黒髪をポニーテールにまとめ、ゴシック調の白いブラウスと黒のタイトミニスカートという、一見地味ながらも妙に色気のあるコーディネート。茶色の瞳がきりっとしているが、口元には少しからかいの笑みが浮かんでいる。
「波澄さん……違うんだ、これは——」
ラルスが弁明しようとするのを、次の声が遮った。
「あら、また才能論かしら? ラルス、あなたの才能がなくたって、ミハエルの血を引いてる時点で並大抵じゃないのよ」
ゆったりと入ってきたのはフィオラ=アマオカミだった。深紅のスリットドレスが豊満な体線を強調し、竜の角と黒い尾、純白の翼を持つその姿は圧倒的な存在感を放っている。ルビー色の唇がわずかに微笑み、何千年も生きてきた者の余裕すら感じさせる。
「ねえねえ、どうしたの? ラルス、泣いてるの?」
最後に入ってきたのはユーリシア=アマオカミ——通称ユーシャだ。ダークマゼンタの長いストレートヘア、ピンクの瞳、そしてピンクの龍の尾。ミニチャイナドレスとフレアのミニスカートという独特のファッションが、彼女の快活な性格をそのまま表しているようだった。
三人の突然の登場に、ミハエルは少し呆れたようにため息をついた。
「お前ら、また盗み聞きしてたのか?」
東雲波澄がふふん、と鼻を鳴らした。
「式神をあちらこちらに侵入させて他人の様子を覗き見る事は、式神使いのたしなみですよ。それに、ラルスくんの悲鳴が聞こえたから、心配して来ただけです」
フィオラは優雅に長椅子に腰を下ろし、翼を少し広げた。
「そうね、ミハエル。あなたの教育方針はわかるけど、もう少し優しく言ってあげたらどう? ラルスだって頑張ってるんだから」
「やさしくって、別にきつい言い方してないよーわたしのクソオヤジは今のラルスみたいに悩んでるとき無意味に怒鳴って優越感に浸ってたけどなあいつめ……」
ユーシャは早足でラルスの元に駆け寄り、心配そうに彼の顔を覗き込んだ。
「大丈夫? ミハエルにいじめられてるの? 餃子作ってあげようか? 天津飯でもいいよ!」
ラルスは照れくさそうに俯いた。
「い、いじめられてないよ……ただ、ちょっと議論してただけ」
ミハエルは腕を組んで、三人を見渡した。
「君たちが来たから、せっかくの教育の邪魔だ。ラルスには、自分で考えて乗り越える力を身につけさせたいんだ」
波澄はミハエルの隣に立ち、茶色の瞳を細めた。
「でも、ミハエルさん。あなたの『教育』が、単なる意地悪にしか見えない時もあるんですよ。さっきの言い方、ちょっと酷かったんじゃないですか?」
「えー酷くないよ」
ミハエルは即答した。
「現実はもっと残酷だ。俺が優しい言葉で包み隠したところで、世界が彼に優しくなるわけじゃない」
フィオラはゆっくりと立ち上がり、黒い尾を優雅に振った。
「でも、ミハエル。あなたは忘れてない?ラルスはまだ子供よ。あなたのように、何でもできちゃう超人じゃないんだから」
その言葉に、ミハエルは少し考え込むような表情を見せた。
「……確かに、そうかもな」
ユーシャはラルスの肩をぽんぽんと叩いた。
「ねえ、ラルス。才能とかよくわかんないけど、あなたの作る魔導器、すごく精巧だよね! 前に見せてもらったあの時計、すごく不思議だった!」
ラルスは顔を上げ、少し驚いたような表情を見せた。
「ユーシャさん、覚えてたんだ……」
「もちろんよ!だってあの時計、針が逆回りしたり、時々浮いたりするんでしょ?面白いじゃない!」
フィオラも同意したように頷いた。
「そういえば、あなたが調整した霊気検知器、私の画廊で使ってるわよ。普通の検知器よりずっと反応が鋭いし、誤作動も少ないんだから」
波澄は式神を一つ召喚すると、その小さな光る存在をラルスの方へ向けた。
「式神の制御システムも、ラルスくんが改良してくれたおかげで、ずっと精密に操作できるようになったわ。これって立派な才能じゃない?」
ミハエルはそんな会話を聞きながら、少し口元を緩ませた。
「……どうやら、俺の見落としてた部分があるらしいな」
ラルスは周囲を見回し、皆の温かい言葉に少し照れくさそうにしながらも、目に的光が戻り始めていた。
「僕……僕のやってること、役に立ってるんだ……」
ミハエルは息子の前にしゃがみ込み、真剣な表情で彼を見つめた。
「ラルス、謝る。確かに俺は、お前を他の者たちと比べてしまっていた。でも、よく考えたら、お前にはお前だけの特別な才能がある」
ミハエルは立ち上がり、書架から分厚い記録帳を一本取り出すと、ラルスの前に置いた。
「これを見ろ」
それは、ラルスがこれまでに手掛けた全ての魔導器や改良の記録だった。ページをめくるたびに、彼の成長の軌跡が詳細に記されていた。
「お前は細かい技術や調整に優れている。大きな力や派手な魔法には見えないかもしれないが、こうした地味で確かな技術こそが、本当に価値のある才能だ」
フィオラは満足そうに微笑んだ。
「そうよ、ラルス。美術の世界だって、派手な作品ばかりが評価されるわけじゃないの。細部へのこだわり、技術の完璧さ——それこそが真の価値を生み出すのよ」
波澄は式神を操りながら付け加えた。
「式術だって同じです。大きな式神を召喚できることより、細かい制御ができることの方がずっと重要ですから」
ユーシャはぴょんぴょん跳ねながら同意した。
「うんうん!料理だって、豪華な食材より、基本の技術が大事なんだよ!」
ラルスは記録帳をぱらぱらとめくり、自分のやってきたことの積み重ねを実感しているようだった。
「僕……ただ、好きなことをやってただけなんです……」
ミハエルは息子の頭を軽く撫でた。
「それでいいんだ。好きこそ物の上手なれ——この言葉は、単なる慰めじゃない。真実だ」
夕日が書斎に差し込み、皆の顔を柔らかいオレンジ色に染め始めていた。一日の終わりの訪れを告げる、穏やかな時間が流れる。
ミハエルは窓の外を見やり、ふと何かを思いついたように言った。
「そうだ、ラルス。お前の調整技術を活かして、新しい魔導器の開発を一緒にやってみないか?」
ラルスの目がぱっと輝いた。
「本当ですか? 父さんと一緒に?」
「ああ、わたしがコンセプトを考え、お前が技術面を担当する。 パートナーだ」
フィオラは嬉しそうに手を叩いた。
「まあ、素敵な提案じゃない! 私も何か協力できることがあれば言ってね」
波澄は少し照れくさそうに頬を掻いた。
「式神を使ったテストなら、お手伝いできますよ」
ユーシャは興奮して跳び上がった。
「わたしもわたしも!完成したら、ごちそう作って祝うよ!」
ラルスは皆の温かい眼差しに包まれ、初めて心からの笑顔を見せた。
「ありがとう……みんな。ちょっと……頑張ってみる」
ミハエルは息子の肩をポンと叩くと、ウィンクして言った。
「それでこそ、俺の息子だ」
書斎の中に、温かい笑い声が響いた。才能についての悩みは完全に消えたわけではないだろうが、少なくともこの瞬間、ラルスは自分の道を見出したようだった。
フィオラが優雅に翼をひろげ、「そろそろ夕食の時間ね」と呟き、波澄が式神を消し、ユーシャが「今日は何を作ろうかな」と考え込む中、ミハエルとラルスは新プロジェクトの話で盛り上がっていた。
そして、一番最初にラルスが呟いた「才能がない」という言葉は、すでに遠い過去のもののように思われた。
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