개요
魔王が滅び、屍が溶け落ちた島──インガリス。 その大地は「渇気(かわき)」に満ち、人の欲を暴走させる禁忌の島となった。
隣国ヴァルケインの研究者、隊長のセドリックと調査官のカトリナ。彼らは国命に従い、インガリス島の遺跡に乗り込む。目的は「島、遺跡とその近くに湧く〝癒しの泉〟の調査とその価値」、「島の領有国エルダリオンやガイドのダークエルフ一行が資源を独占していないか」──すべてを記録し、持ち帰ること。 だが渇気は知識の探究すら歪め、研究の視線を「欲望」へと変えていく。 魔王が遺した「欲望の残り香」が、理知的な探求者の魂を蝕んでいく 「知を求めたはずの眼差しは、やがて欲に曇る。──渇気は理すらも呑み込む。」
장1
ヴァルケイン王国王都にそびえる、知の聖域。
王立図書館の奥深く、一般の立ち入りを禁じられた書庫は、古びた羊皮紙と乾いたインクの匂いで満たされていた。
降り注ぐ陽光が埃をきらきらと舞い上がらせる中、一人の女性が分厚い書物を広げている。
彼女の名前はカトリナ。王立考古調査官という、ちょっと固い肩書を持つ、知的好奇心の塊みたいな女性だ。
艶やかな栗色の髪を無造作に束ね、レンズの大きな眼鏡の奥で輝くのは、翡翠色の瞳。
その瞳が今、国王陛下から直々に下された勅命の羊皮紙の上を、熱を帯びて滑っていた。
「……隣国エルダリオン保有、『インガリス島』の領有価値の再調査……」
インガリス島。
かつて魔王が勇者によって討たれたという、いわくつきの島。
現在はエルダリオンの領地となっているが、魔王の屍から溶け出したという瘴気──『渇気(かわき)』によって、人は住めぬ不毛の地とされている。
政治的な価値はほぼゼロ。
そんな島を、なぜ今さら?
だが、カトリナの思考はすぐに別の方向へ飛んだ。
これは、チャンスだ。
うだつの上がらない先輩たちを尻目に、若干二十五歳で王立調査官の地位を得た自分への、大きな試練であり、飛躍の機会。
「ふふっ……」
思わず、知的な笑みがこぼれる。
未知の土地、忘れられた歴史、解明されていない謎。
それらはすべて、彼女にとって極上のご馳走だった。
キャリアにおける一大好機。
この調査を成功させれば、自分の名は歴史に刻まれるかもしれない。
カトリナの胸は、学究的な興奮で高鳴っていた。
◇
出航を明日に控えた夜。
カトリナが自室で最後の資料確認に追われていると、控えめなノックの音が響いた。
「どうぞ」
入ってきたのは、今回の調査隊の隊長を務めるセドリックだった。
均整の取れた長身に、王立騎士団の制服を見事に着こなしている。短く刈り揃えられた金髪と、誠実そうな青い瞳が印象的な、絵に描いたような好青年だ。
「カトリナ調査官、夜分にすまない」
「セドリック隊長。どうかなさいましたか?」
眼鏡を押し上げ、カトリナが問いかける。
部屋中に散らかった古文書や地図を見て、セドリックは苦笑した。
「相変わらず熱心だな。だが、少し気になることがあって来た」
彼は一歩近づき、真剣な眼差しでカトリナを見つめる。
「インガリス島の『渇気』についてだ。港で妙な噂を耳にした。ただの瘴気ではない、人の心を狂わせる不吉な気配だと」
「ああ、それですか」
カトリナはまるで気にしていない様子で、ひらひらと手を振った。
「非科学的な迷信ですよ、隊長。瘴気とは、地質や植生から発生する有毒なガスのこと。きちんと装備を整えれば何も問題ありません。人の心を狂わせるなんて、物語の読みすぎです」
そのあまりにもあっけらかんとした態度に、セドリックは眉をひそめる。
彼の目には、目の前の聡明な女性が、あまりにも無防備に見えた。
「しかし……」
「大丈夫。私の知識と理性が、どんな迷信にも勝ちますから」
悪戯っぽく微笑むカトリナ。
その自信に満ちた愛らしい笑顔に、セドリックはそれ以上何も言えなくなってしまった。
「……わかった。だが、決して無理はしないでくれ。君に何かあれば、俺は……」
そこまで言って、セドリックは口ごもる。
「隊長として困る」とでも言いたかったのだろう。
だが、その青い瞳の奥に揺れる光は、単なる職務上の心配だけではないように見えた。
「ご心配、感謝します。隊長」
カトリナはにっこりと微笑んで、彼の言葉を遮った。
その壁のように完璧な笑顔が、セドリックの胸をちくりと刺した。
◇
ヴァルケインの港を離れた船は、穏やかな海をインガリス島へと進んでいく。
潮風が心地よく頬を撫でる船上で、カトリナは甲板に陣取り、再び書物の海に身を投じていた。
風で飛ばされないよう重石を置いた古地図。
解読困難な古代文字で書かれた文献。
それらを一つ一つ、真剣な眼差しで読み解いていく。
時折、潮風に栗色の髪がさらわれ、眼鏡の奥の真摯な横顔が露わになる。
その知的な姿を、セドリックは少し離れた場所から、知らず知らずのうちに見つめていた。
(本当に、本の虫だな)
その探求心と知性には、純粋な信頼と尊敬を覚える。
彼女がいれば、どんな難調査も成功するだろう。
そんな確信があった。
だが、同時に。
(……危うい)
ひとつのことに没頭するあまり、周りが見えなくなる。
その純粋すぎる好奇心が、いつか彼女自身を危険に晒すのではないか。
昨夜の会話が、セドリックの胸に蘇る。
非科学的な迷信だと、彼女は笑った。
だが、世界には理屈では説明できないこともある。
それを隊長として、一人の男として、彼は知っていた。
彼女を守らなければ。
その思いが、任務への責任感とは少し違う、熱を帯びた感情から生まれていることに、セドリックは気づき始めていた。
この聡明で、少し頑固で、そしてたまらなく魅力的な調査官に、惹かれている自分を。
船が大きく揺れ、カトリナが「きゃっ」と小さな悲鳴を上げた。
崩れそうになる資料を、セドリックが素早く駆け寄って支える。
「大丈夫か?」
「あ……ありがとうございます、隊長」
顔を上げたカトリナの頬が、ほんのり赤く染まっている。
その少女のような表情に、セドリックの心臓が不意に大きく跳ねた。
◇
ついに目的の島が姿を現した。
インガリス島。
遠目に見るそれは、ただ緑豊かなだけの、何の変哲もない島に見える。
だが、船が島の船着き場に近づくにつれて、空気が奇妙に重くなっていくのを感じた。
風が止み、鳥の声も聞こえない。
まるで世界から音が消えてしまったかのような、不気味な静寂。
船が桟橋に着けられ、タラップが下ろされる。
セドリックを先頭に、調査隊が島へと足を踏み入れた。
彼らを待っていたのは、数人の人影だった。
島の案内人を務めるという、ダークエルフの一行だった。
その中心に立つ人物が進み出る。
褐色の肌に、銀色の髪。そして、長く尖った耳。
しなやかな黒衣を纏い、背には美しい装飾の施された長弓。
長い睫毛が魅力的な、凛と美しい女性だ。
「お待ちしておりました、ヴァルケインの調査隊の皆様。私がこの島の案内人、リシェルと申します」
静かで、どこか物憂げな声。
その赤い瞳が、真っ直ぐにカトリナを捉えた。
カトリナは臆することなく、その視線を受け止める。
自己紹介をし、今回の調査の目的を簡潔に説明した。
好奇心と自信に満ちた、理路整然とした口調で。
リシェルは黙って聞いていたが、やがてふっと息を漏らした。
その瞳は、カトリナの翡翠色の瞳の、さらに奥深くを見透かしているようだった。
「……あなたの瞳の奥に、強すぎる好奇心が見える」
リシェルの静かな声が、不気味なほど澄み切った空気に響く。
「この島は、知を求める者を喰らう」
それは、紛れもない警告だった。
「戻るなら、今だよ?」
최신 회
翌朝、夜明けの光が木々の隙間から差し込む頃、カトリナとセドリックは解放された。
とはいえ、それは牢から出されたというような、物々しいものではない。
ラザルは、泉に近づいたカトリナに困ったように眉を寄せた。
鋼色の瞳が、カトリナの熱っぽい顔と、泉に佇む妹の間を揺れ動く。
この女性を、どうするべき
ラザルに腕を引かれ、たどり着いた場所。
そこは、夜の闇の中にぽっかりと浮かび上がる、神秘的な空間だった。
遺跡のすぐそばに、こんな場所があったなん
「誰にも、渡さない」
耳元で響く、獣の唸り声のような囁き。
カトリナは息を詰めた。
「た、隊長?!」
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