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優柔不断だとアホの介入を許してしまう

優柔不断だとアホの介入を許してしまう

Terakhir Diperbarui: 2026-04-14 03:29:38
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デートで話がまとまらないサミュエル。同僚のイケメン騎士クロードは逃げる! ミハエルはよってくる! よってきていらんことしいになる!


Bab1

 ヴァーレンス王国の公爵邸、その一角にある騎士団の談話室は、午後の穏やかな光に満たされていた。磨き上げられた床に陽光が幾何学模様を描き、空気中を舞う微細な塵がきらきらと輝いている。その静寂を破るのは、革張りのソファに深く身を沈めた一人の青年の、落ち着かない指の動きだけだった。

 サミュエル=ローズは、手にした携帯魔導端末の冷たい感触を確かめるように、何度も握り直していた。画面には、恋人であるガートルード=キャボットとのメッセージのやり取りが表示されている。銀白色の髪とマゼンタ色の瞳を持つ、あの不思議なオーラをまとった少女との、初めての本格的なデート。その計画が、遅々として進んでいなかった。

『次の休日、どこかに行きませんか?』

 サミュエルが勇気を振り絞って送ったその一文から、すべては始まった。数秒と経たずに返ってきた彼女からのメッセージは、喜びを隠さない、絵文字付きのものだった。

『はい! ぜひ! どこか行きたいところ、ありますか?』

 そこからだ。無限とも思えるループが始まったのは。

『ガートルードさんの行きたいところがいいです。僕はどこでも』
『えっと、わたしもサミュエルさんの行きたいところがいいです。わたしは浮かんでいられれば大体どこでも楽しいので!』
『それじゃあ決まらないですよ。何か、こう、興味があることとか…』
『そうですね…キラキラしたクリスタルが見られる洞窟とか? うーん、でも、歩くのが多いとサミュエルさんが大変でしょうか?』
『僕は大丈夫です! でも、ガートルードさんが疲れてしまったら申し訳ないですし…』
『わたしは大丈夫ですよ! でも、サミュエルさんが気にしてしまうなら、別の場所がいいかもしれませんね。例えば、星空が綺麗な丘とか…』
『いいですね! でも、夜まで待つのは長すぎませんか?』
『確かに…。じゃあ、やっぱり…サミュエルさんが決めませんか?』

 サミュエルは端末を握りしめ、呻き声にも似た息を漏らした。画面の光が、彼の悩める金髪を青白く照らす。お互いを気遣うあまり、一歩も前に進めない。この初々しい膠着状態は、甘美であると同時に、もどかしくてたまらなかった。僕だって、彼女に楽しんでほしい。失敗したくない。その思いが空回りして、ただ時間だけが過ぎていく。

 その様子を、部屋の隅のテーブルで黙々と書類を整理していたクロード=ガンヴァレンは、視界の端で捉えていた。長身の彼は、サミュエルのそわそわとした挙動に気づかないふりをしながら、内心で小さくため息をつく。
(また始まったか…)
 恋というものにまつわる面倒ごとを、クロードは身をもって知っている。

 かつてその端正な容姿ゆえに経験した苦い出来事が、彼を恋愛から遠ざけていた。親しい同僚であるサミュエルが幸せになるのは喜ばしいことだ。

 だが、その過程で生まれるこの種の甘ったるくも厄介な問題に、積極的に関わる気は毛頭なかった。

 触らぬ神に祟りなし。彼はただ、己の仕事に集中しようと努め、意識的にサミュエルから目を逸らした。

 指先でこめかみを軽く揉むサミュエルの背後から、ぬっと影が差した。予期せぬ気配にサミュエルがびくりと肩を揺らすより早く、その影の主は彼の耳元で芝居がかった声を響かせた。

「何か悩み事かな、我が忠勇なる騎士サミュエル君?」

「うわっ!?」
 サミュエルは心臓が跳ね上がるのを感じ、勢いよく振り返った。そこに立っていたのは、黒い上着に金の唐草模様が映える、この国の公爵にして黒騎士団の長、ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒその人だった。金色の短髪からのぞく青い瞳が、面白くてたまらないといった風に細められている。
「だ、団長…! いつの間に…」
「わたしは最初からここにいたよ。君があまりにも熱心に小さな光る板と睨めっこをしているものだからね。まるで解読不能な古代碑文でも読んでいるかのような真剣さだった」
 ミハエルはくつくつと喉を鳴らしながら、サミュエルの隣に腰を下ろした。その動きには貴族らしい優雅さと、同時に獲物を見つけた肉食獣のような油断のならなさがあった。
「して、その碑文には何と? 未来の吉凶か、それとも失われた財宝の在処でも?」
「ち、違います! これは、その…個人的な…」
 サミュエルは慌てて端末の画面を伏せた。顔にじわりと熱が広がるのを感じる。この主にだけは、知られたくなかった。面白がって、とんでもないことになるのが目に見えている。

 しかし、ミハエルの洞察力は、サミュエルの拙い隠蔽工作など容易く見破る。
「ほう、個人的な。その赤ら顔と、必死に隠そうとするその仕草。そして先ほどから君のポケットで健気に振動を続けているその端末…なるほど、ガートルード君かね?」
「なっ…!」
 図星を指され、サミュエルは完全に言葉を失った。ミハエルは満足げに頷くと、ポン、とサミュエルの膝を叩いた。
「いやはや、結構なことだ。春だねぇ。ヴァーレンスの気候は年中穏やかだが、君たちの周りには特別な春風が吹いているようだ」
「か、からかわないでください…」
「からかう? 人聞きの悪い。わたしは純粋に応援しているのだよ。で、進捗は? 初々しい恋人たちの最初の共同作業は、どこまで進んだんだい?」
ミハエルの悪戯っぽい笑みに、サミュエルは観念して俯いた。
「…それが、どこに行くか、まったく決まらなくて…」
「決まらない?」
ミハエルは心底意外だといった顔で首を傾げた。
「なぜ? 行きたいところなど、星の数ほどあるだろうに。このヴァーレンスには面白い場所がいくらでもある。それとも、まさかとは思うが…」
ミハエルはそこで一度言葉を切り、芝居がかった間を取ってから続けた。
「互いに遠慮しあって、『君の行きたいところでいい』『いえ、あなたの行きたいところが』という、あの古典的で不毛なループに陥っている、とか?」

 サミュエルは顔を上げられなかった。沈黙が、何より雄弁な肯定だった。それを見たミハエルは、天を仰いで大げさに嘆いてみせた。
「おお、なんということだ! 愛ゆえの停滞! 慈悲深きがゆえの膠着! これは由々しき事態だ。このままでは、君たちの休日は互いの顔色を窺うだけで終わってしまうぞ!」

 クロードは書類から顔を上げずに、もう一度ため息をついた。始まった。団長の、いつものお節介が。いや、これはお節介というよりは、壮大な娯楽の発掘作業だ。巻き込まれたサミュエルには同情するが、もはや誰にも止められない。

「よろしい」
 突然、ミハエルは厳粛な声で宣言した。彼の瞳には、先ほどまでのからかいの色とは違う、真剣な(ように見える)光が宿っていた。
「困っている部下を見過ごすのは、長たるわたしの沽券に関わる。このミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒが、君たちの記念すべき初デートを、完璧にプロデュースしてしんぜよう!」
「へ!?」
 サミュエルの素っ頓狂な声が談話室に響いた。プロデュース? デートを? この、常識の枠に収まることを知らない主に? 冗談ではない。それはもはやデートではなく、ミハエルが脚本・監督・主演を務める一大スペクタクルになってしまう。
「い、いえ、そんな、お手を煩わせるわけには…! 僕たちで何とかしますから!」
「遠慮はいらない。むしろ、これは命令だ。君たちはわたしの計画に、ただ従えばいい。さすれば、歴史上最も記憶に残り、かつエキサイティングな一日が約束されるだろう」

 サミュエルが必死に断りの言葉を探している間にも、ミハエルの思考は高速で回転していた。彼の指が顎に当てられ、目がきらりと輝く。
「うむ、まずはコンセプトだな。テーマは『天と地の融合、そして魂の共鳴』あたりでどうだろうか。壮大でいいだろう?」
「そ、壮大すぎます!」
「午前中はまず、飛竜の背に乗って上空一万メートルからの世界観測。ガートルード君は浮遊が得意だったな? 飛竜と並んで大空を散歩するのも乙なものだ。昼食は、霊峰の頂を削って作ったテーブルで、わたし特製のフルコースを堪能する。もちろん、食材は道中で狩る」
「狩るんですか!?」
 サミュエルの顔が青ざめていく。彼のポケットの中で、さっきから震え続けていた端末が、ぴたりと静かになった。画面の向こうのガートルードも、このとんでもない会話の断片を聞いて固まっているに違いなかった。

 サミュエルは助けを求めるように、部屋の隅のクロードに視線を送った。しかし、クロードは静かに首を横に振り、すっと立ち上がると、無言のまま書類の束を抱えて部屋を出て行った。その背中は、

「健闘を祈る」

 と明確に語っていた。

 見捨てられた。サミュエルは絶望した。
 ミハエルはそんな彼の心境などお構いなしに、目を輝かせながら計画の続きを語る。
「そして午後は、地底湖への探検だ。無数のクリスタルが乱反射する光の洞窟を抜け、最深部にあるという『沈黙の泉』を目指す。泉の水を飲めば、相手の心の声が聞こえるという伝説があってな。君たちにぴったりだろう?」
「心の声…!」
 それはそれで少し興味を惹かれるが、それまでの過程が過酷すぎる。
 サミュエルは震える手で、ようやく携帯魔導端末を操作した。ガートルードへの返信だ。

『すみません、大変なことになりました』

 すぐに返事が来た。一言だけだった。

『見てました』

 そのシンプルな文面からは、彼女の驚愕と、ほんの少しの面白がっているような気配が伝わってくるようだった。ミハエルはサミュエルの肩を力強く叩き、自信満々に言い放った。
「安心したまえ。わたしに任せておけば間違いある」

「あるんですかっ!」
 公爵の満面の笑みを前にして、サミュエルはただ乾いた笑みを返すことしかできなかった。かくして、二人のささやかで甘いデート計画は、公爵閣下の手によって、壮大で予測不可能な冒険譚へとその姿を変えようとしていた。

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