Zusammenfassung
ヴァーレンス王国から直線距離で10000km以上離れたルルメール王国。魔導士団が有名なルルメール王国。
そんな星の最北東の王国に最南西のヴァーレンス王国のミハエル達が訪れる。
そして、ルルメールの魔導鉄道に乗る。
意外な協力者の力添えで。
Kapitel1
星の一番南西に位置するヴァーレンス王国。の城。の中。カジュアルな格好をした――平たく言えば日本人の30代が良く切る格好である、と地球から見れば異星人のミハエルは偏見で断定した――男のミハエルは面と向かって話をしていた、
ミハエルは、青い瞳を細め、唇の端に静かな微笑を浮かべた。
その表情は、貴殿の突拍子もない提案に対する知的な好奇心と、これから紡がれるであろう壮大な物語への予感がない交ぜになっている。彼の背後、磨き上げられた黒檀の書架には、古今東西の知識が革の背表紙に金の文字を刻まれ、沈黙している。細野一番北西に位置するアスタルロサとの前哨戦で立ち昇った硝煙の匂いは、この書斎に満ちる古い紙とインクの香りによって、とうに洗い流されていた。
貴殿とは。
地球の鉄オタである。やかましい。人を良くおどす。列車が上手く写真に写らない時は特に。
「我が『ヴァーレンス王国』と来たか。面白い。貴殿の言う通り、我がヴァーレンス王国に『鉄道』なるものは存在しない。
何せ、国民の多くは『霊気(オーラ)』を操作し、自由に空を駆け、大地を滑走する術を身につけているのだからな。私もまた、その霊力の助けを借りている」
ミハエルは窓の外、広大な庭園の緑を一瞥し、言葉を続ける。彼の声は、戦闘の指揮を執る時の鋭さとは違う、物語を紡ぐ者の持つ穏やかな熱を帯びていた。
「そして、貴殿が正確に認識している通り、我が国の三千万の民のうち、実に『一千万人』が、一瞬にして星を消し飛ばすほどの絶大な力を秘めている。
もちろん、私もその『特級の力』を有する者の一人だ。
そして、日本では『名前が人々の間から抹消された』男の天照、『天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊(あまてるくにてるひこあまのほのあかりくしたまにぎはやひのみこと)』、『闇霎(くらおかみ)』、『瀬織津姫(せおりつひめ)』、そして『天津日高日子波限建鵜草葺不合命(あまつひこひこなぎさたけうがやふきあえずのみこと)』といった『神代の系譜』に連なるおせっかい焼き神が、我が国に存在しているのもまた事実。
肉眼で見える神ね。
そんな『規格外の力』が溢れる世界で、『決まった線路の上を、重い鉄の塊が走る』という『鉄道』の概念が、果たしてどのような意味を持つのか。
これは実に『興味深い矛盾』だ!」
彼の言葉に、部屋の空気が微かに震える。それは力の発露ではなく、純粋な知的興奮がもたらす共鳴だった。ソファに腰を下ろしていた者、壁際に控えていた者、それぞれの心に、ミハエルの投げかけた「鉄道」という石が、異なる波紋を広げていた」
ミハエルは人差し指を立て、楽しげに語り始めた。
「一つ目は、地球人基準で『異世界の概念』としての鉄道。わたしからしたらおめーらのほうが火星のタコだけどな。
ミハエルは身を乗り出し、その青い瞳は、目の前の**『地球の鉄オタ』の奥底に眠る『鉄道への情熱』を見透かすかのように煌めいた。
鉄オタは、ミハエルの言葉にやや畏縮しつつも、興味を惹かれてごくりと喉を鳴らした。
いつもならすぐに
「火星のタコとはなんだ畜生!」
と噛み付くところだが、ミハエルのただならぬ雰囲気に気圧されている。
「そのわたしたち基準で『異世界の概念』、すなわち『鉄道』。
これは我々ヴァーレンスの民にとっては、まさしく『荒唐無稽』であり、同時に『極めて魅力的』な発想に映るはずだ。
なにせ、何の道具もなしに空を飛び、星を砕く力を持つ我々にとって、
『あえて制限された線路の上を、遅々と進む』
という行為は、ある種の『無駄』であり、だからこそ『芸術的』ですらある」
彼の言葉が宙を舞い、書斎の壁に飾られた、空飛ぶ宮殿の設計図に影を落とす。
「この物語の主役は、そうだな……異世界から、あるいは貴殿のような『熱狂的な鉄道愛好家』が、ヴァーレンス王国に迷い込むことから始まったんだろう。
きみは、自らの『夢』――この『無貌の大地』に『鉄路を敷く』という、我々からすれば『愚かしい』、しかしきみにとっては『壮大な夢』――を実現しようと奮闘する」
ミハエルは片眉を上げ、愉快そうに続ける。
「もちろん、その道程は平坦ではない。まず、『土地の問題』だ。どこに線路を敷く? 我々の民には『私有地』という概念は希薄だ(星を作ったのは神。神の土地だから、不動産屋も介入禁止:実在する八百万の神が直接襲い掛かってくるから!)
が、『ここは私の鍛錬場だ』とか、『そこは愛するスライムの子守り場だ』などと、気まぐれに広大な領域を占める者もいる。
それに、『星を消し飛ばす力』を持つ者たちが、その『鉄道工事』を邪魔立てしない保証はない。むしろ、『面白いから』とばかりに、線路を捻じ曲げたり、トンネルを崩壊させたりする輩も出てくると思うぞ。さゆとか。さゆとかさゆとか」
桜雪さゆの名前が出た途端、水鏡冬華が呆れた目でため息をつく。
そこでミハエルは、ニヤリと意味深な笑みを浮かべた。
「そして、忘れてはならないのが、我が国の『おせっかい焼き神』たちだ。例えば、『天津日高日子波限建鵜草葺不合命』あたりは、何かと世話を焼きたがる性分故に、『この線路は海に向かって敷くべきだ!』と『突拍子もない提案』をしてきたり、はたまた『瀬織津姫』が、『この鉄道は、もっと『人々の穢れを清める』ような特別な場所へ繋がるべきだ』と言い出し、『聖なるレールの概念』を提唱したりするかもしれん」
その言葉に、鉄オタは思わず背筋を震わせた。「実在する神」が、しかも「おせっかい」な性格で鉄道計画に介入してくるなど、想像だにしなかった事態だ。
そうした『ヴァーレンスならではの常識外れの障害』に、その地球の鉄道狂が、いかにして立ち向かっていくか。
逃げた。
なにやらごにょごにょいって男は去っていった
「あ」
「どうしたのミハエル?」
「名前聞くの忘れたわ」
「いいんじゃない? 別に」
「鉄オタで覚えとこ」
「はいはい」
おざなりにあわせる水鏡冬華。
その言葉を聞きながら、クロード=ガンヴァレンは、鎧の下でわずかに眉を寄せた。
(運命のレール……。僕の道は、ミハエル様に仕えること。それだけだ。だが、その先に何がある? ……いや、考える必要はない。ただ、我が君の剣となり、盾となる。それが俺の役目だ)
実直な騎士は、形而上の議論よりも、己に課せられた具体的な使命を再確認する。その隣で、サミュエル=ローズは、ただただ畏敬の念に打たれていた。
(見えない線路……魂の旅路……。ミハエル団長の言葉は、まるで深遠な魔法のようだ。僕にはまだ難しすぎて、全部は理解できないけれど……きっと、とても大切なことをお話しされているんだ……)
小柄なヒーラーは、ミハエルの知性の巨大さに圧倒され、小さく身を縮こまらせた。
その瞬間、東雲波澄の背筋が、ぴんと伸びた。彼女の心は、すでに未知の遺跡へと飛んでいた。
(霊力とは異なる技術……。つまり、わたし達の符術や霊波動が通用しない、あるいは予測不可能な反応を示す可能性があるということ……。地球じゃないから、完成したとしても動力すら地球とは違うでしょう。
危険だけれど、これほど興味をそそられる話はないわ。どのような力が眠っているのか、どのような理で動くのか……)
扇子の陰で、彼女の茶色の瞳が探求の炎に燃える。
一方、ミハエルの隣のソファで優雅に脚を組んでいた水鏡冬華は、ふぅ、と小さなため息をついた。
「また始まったわね、この男の壮大な道楽が。鉄道? 空を飛べるのに? まったく……頭病めそう」
彼女は内心で毒づきながらも、その口元には抑えきれない笑みが浮かんでいた。目の前で、最高の玩具を見つけた子供のように目を輝かせている最愛の男の顔は、何百年見ていても飽きることがない。
(けれど……忘れ去られた遺構、ね。わたしがまだ人間だった頃より、もっと古い時代のものかしら。この星の歴史には、まだわたしの知らないページがあるということ……。まあ、退屈しないからいいけれど)
半竜の巫女は、新たな騒動の予感に、少しだけ胸を躍らせていた。
ミハエルは、仲間たちの様々な反応が織りなす空気感を楽しみながら、芝居がかった仕草で両手を広げた。彼の言葉の一つ一つが、一つの世界を創造し、一つの冒険の始まりを告げている。
「この『矛盾を包含したテーマ』は、我がヴァーレンス王国の『規格外の存在感』を最大限に活かし、『常識を遥かに超越した物語』を紡ぐ最高の素材となるだろう! さあ、鉄オタはどちらの『レール』に、この物語を乗せるつもりかな? 私としては、いずれの道も『壮大な冒険』へと繋がると確信しているぞ!」
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閃光。
それは、ジャスティン=チャップリン=ディヴィスの不敵な笑みを網膜に焼き付ける、最後の残光だった。彼の足元に転がした小さな石――それが発する光は、物理的な輝きというよりも、空間
アンドロイドの機械的な音声が、不吉な宣告のように食堂車両の隣で響いた。
「テレメートの機能がやられた」
その言葉は、まるで遠い世界の異音のように、サリサの耳には届いたが、その意味
二十五メートル。獣の歩幅で十数歩。常人にとっては絶望的な、しかし彼女にとっては一息で駆け抜けるべき遊歩道。サリサは、低く沈み込ませた体勢から、床を爆発的に蹴った。その姿は、もはや人間のそれで
サリサのしなやかな影が隣の車両へと消える。そこは、先程までの食堂車両の緊張とは質の異なる、生々しい恐慌が渦巻く空間だった。乗客たちは壁際にへばりつき、恐怖に引きつった顔で一点を見つめている。
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