お互いの良いところを10個言わないと出られない部屋
ملخص
気づくと見知らぬ部屋に居た男女。
入口のドアは鍵がかかっている。不安がこみ上げる二人。
部屋のテレビには「〇〇〇しないと出られない部屋」という文字
これはまさかあの有名な部屋では…期待する男、困る女
الفصل1
目が覚めると、男は見知らぬベッドの上に横たわっていた。柔らかいマットレスの感触と、どこかしら消毒液のような匂いがする清潔なシーツ。これは明らかに自宅の布団ではない。
「えっと…ここは?」
男が起き上がり、周囲を見回す。部屋は高級ホテルの一室のようだ。ベッドサイドテーブルにはミネラルウォーターが置かれている。しかし、なぜ自分がここにいるのか全く思い出せない。
「女さん?」
部屋の反対側のベッドにもう一人人物がいることに気づいた。会社の同僚、女が同じく困惑した表情で座り上がっている。
「男くん?ここはどこ?どうして私たちが…」
女は長い黒髪を整えながら、警戒して周囲を見渡す。彼女はいつも通りスーツ姿だが、ジャケットは脱いでベッドの上に置いてある。
男はドアの方へ歩み寄る。金色のドアノブを回してみるが、全く動かない。しっかりと鍵がかかっているようだ。
「鍵がかかってるみたいです。開きません」
女もベッドから降り、再度部屋を見回す。窓がなく、外部への脱出は不可能だ。
「これはいったい…誘拐?でもなぜ私たちが?」
二人の不安は募るばかりだった。突然、部屋の壁に埋め込まれた大型テレビがパッと点灯する。
画面には「〇〇〇しないと出れない部屋」という文字が表示されている。
男は一瞬、目を疑った。「まさか…あの噂の?」
女は眉をひそめる。「あの噂って?男くん、何か知っているの?」
「いや、つまり…ネットで時々見かける都市伝説のようなものですが…男女が閉じ込められて、あることをしないと出られないという…」
女の表情が硬くなる。「あることって、まさかそれ?」
男は思わず唾を飲み込んだ。確かに女は社内でも評判の美人で、高身長でスタイルも良く、誰もが一目置く存在だ。そんな状況を少しばかり期待してしまう自分がいたことも否めない。
テレビの画面が突然切り替わり、不気味な仮面をつけた人物が映し出された。
「ようこそ、『お互いの良いところを10個言わないと出られない部屋』へ」
ボイスチェンジャーを通した機械的な声が部屋に響き渡る。
女は安堵の息をついた。
一方、男は少しどころか、かなりがっかりしていた。
「ただし」仮面の男が続ける。「制限時間内に達成できない場合、この部屋はみなさんご存知の『あの部屋』に変わります。ゲーム開始!」
テレビが真っ暗になる。部屋には再び静寂が訪れた。
男は女の不安そうな表情を見て、さっきの期待した気持ちに強く罪悪感を覚えた。早くこの状況を終わらせて、彼女を開放してあげなければ。
「えっと…まずは私から始めますね」男は咳払いをして、緊張しながらも話し始めた。
「一つ目は…女さんの立ち居振る舞いの美しさです」
男は真剣な表情で女を見つめながら言った。
「ただそこに座っているだけで、周囲の空気が清らかに整うような、凛とした佇まいにいつも見惚れてしまいます」
女は少し驚いたように目を大きく見開いたが、すぐに俯いてしまった。
「二つ目は、慈愛に満ちた料理の味」
男は続ける。
「以前お花見に持ってきてくれた料理には、食べる人を想う優しさが溢れていました。ひと口ごとに心が解けていくような、あたたかな魔法のようです」
「三つ目は、知性と仕事への誇り」
男の声に熱が込もってきた。
「困難な状況でも冷静さを失わず、誠実に仕事を成し遂げるその知性と強さを、心から尊敬しています」
女はだんだんと耳の先が赤くなっていくのを感じていた。
「四つ目は、瞳に宿る輝き」
男は少し照れくさそうに笑いながら、
「何かに熱中している時の、宝石のように澄んだ瞳。その輝きを見るたび、僕の心も明るく照らされます」
「五つ目は、細やかな気配り」
男は真剣に数え続ける。
「誰に対しても分け隔てなく、言葉にせずとも相手の望むことを察して手を差し伸べる、その深い慈悲の心」
「六つ目は、たおやかな声の響き」
男は目を閉じて、彼女の声を思い浮かべるようにして言った。
「あなたの声は、疲れた心を癒やす音楽のようです。落ち着いた話し方の中に、知性と温もりを感じます」
「七つ目は、絶え間ない向上心」
男の賞賛は止まらない。
「すでに十分すぎるほど素晴らしいのに、決して驕らず、常に自分を磨き続けようとする謙虚な姿勢」
「八つ目は、花が綻ぶような笑顔」
男は思わず微笑んだ。
「あなたが笑うと、その場にパッと光が差したようになります。その微笑みは、僕にとって何よりの救いです」
「九つ目は、指先の優雅さ」
男は最後の二つに差し掛かった。
「ペンを持つ手、グラスに触れる指先……そのひとつひとつの所作に、あなたの育んできた品性が宿っています」
そして最後に、男は深く息を吸い込んだ。
「十個目は、存在そのものへの感謝です」
男の声は震えていた。
「これほど多くの魅力がありながら、いま僕のそばにいてくれる。あなたの存在そのものが、僕の誇りです」
男が言い終わると、部屋はしばしの沈黙に包まれた。女の顔は完全に真っ赤になっていた。彼女はこれほどまでに自分を見てくれている同僚がいることを知らなかった。しかもこんなに情熱的に語ってくれるとは。
胸の中に温かい気持ちが広がり、それはやがて全身に広がっていった。
「私…私も言わないと」女は勇気を振り絞って立ち上がった。
「一つ目」女は無表情で言い始めた。「生物学的分類。戸籍、および外見上の分類において、男性であるというところ」
男は一瞬、理解できずに首を傾げた。
「二つ目、就労の継続。平日の指定された時間に出勤し、規定の業務を遂行しているところ」
「三つ目、言語運用能力。こちらの問いかけに対し、意味の通じる単語を選別し、発声することができるところ」
男の表情は次第に困惑したものに変わっていった。これは果たして褒め言葉なのだろうか?
「四つ目、経済的還流。労働の対価として、月に一度、あらかじめ決められた額の通貨が口座に振り込まれているところ」
「五つ目、生命維持活動。提供された食事を咀嚼し、嚥下し、一日に必要なカロリーを摂取できているところ」
女の「褒め言葉」は淡々と続く。まるで早口で取扱説明書を読んでいるかのようだ。
「六つ目、二足歩行の成立。補助器具を使用することなく、自身の脚のみで直立し、目的地まで移動が可能であるところ」
「七つ目、視覚情報の受容。眼球が機能しており、前方の物体や信号の色を正しく識別できているところ」
男は完全に理解不能な表情を浮かべていた。これが女なりの照れ隠しなのか、それとも本気でこれが褒め言葉だと思っているのか。
「八つ目、排泄および衛生管理。自身の意思で浴室へ向かい、体表の汚れを洗浄する習慣があるところ」
「九つ目、炭酸ガスの排出。休むことなく酸素を吸い込み、二酸化炭素を吐き出し、呼吸を継続しているところ」
そして最後に、女は少し間を置いて言った。
「十個目、空間への充填。今、この瞬間に、私の視界を遮る物理的な質量としてそこに存在しているというところ」
女が言い終わると、男はただ茫然と彼女を見つめるしかなかった。
「それって…良いところ?」男は思わず聞いてしまった。
女はすぐに目をそらし、壁と天井の境目を見つめた。彼女の耳の先だけが微かに赤くなっているように見えた。
その瞬間、「ガチャン」という音がして、ドアの鍵が開いた。
「あ、開いた!」女は飛び起きてドアの方へ走り寄った。
ドアを開けると、外は眩しいほどの良い天気だった。彼らが閉じ込められていたのは、会社近くの高級ビジネスホテルの一室だった。
「よかった…これで会社に間に合うね」女は安堵の息をついた。
男もゆっくりとドアの方へ歩いていった。外の新鮮な空気が気持ちいい。
「男くん」女が振り返り、少し照れくさそうに笑った。「これからも宜しくね」
そう言うと、女は軽やかに歩き出した。いつも通りの通勤路を会社へ向かっていく。
男はただ立ち尽くし、うつむきながら呟いた。
「ハイ、ソウデスネ…」
彼の頭の中は、女のあの「褒め言葉」の数々で一杯だった。これが彼女なりの愛情表現なのか、それとも単に彼女の変なユーモアのセンスなのか。はたまた、彼女が本当に自分をそんな風にしか見ていないのか。
男は深くため息をつき、ゆっくりと女の後を追いかけた。今日も一日、普通の会社員としての日々が続くのであった。
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